第6話 恋心が消えるまで



この恋心がいっそのこと

消えてくれたのなら、

こんなに苦しくなることなんてないはずなのに。


あなたの笑顔を思い出すたび

あなたが褒めてくれたイヤリングを見るたびに

胸を締め付けるのは私の恋の残骸。


彼女ができたなんて

聞きたくもなかった言葉をリピートして

また暗い水底へと沈んでゆく。


連絡が遅くなっていたのも

あなたがその子と愛を育んでいたから。


自分がこんなにあなたを愛していたと

知ったのは涙が溢れて止まらなかったから。


覚悟していたはずなのに、

気持ちは素直ね。


あなたが好きになった人はどんな人なのかしら

と勝手に想像してまた堕ちていく。

二人が並んで歩いている姿を

遠くから見ている私がいるの。


仲睦まじい二人の様子に

私の心はズキズキと音を立てて軋む。


いっそのこと

知り合っていなかったのなら

この痛みも知らずに済んだのに。


運命というのはなんて残酷なんだろう。


あなたを忘れるために

新しい恋を探した。


でも、

あなたが私の心に棲みついているから

あなたの影がよぎるから

どの男性とも付き合えなかった。


どうして。

恋心なんてものがあるの?


この痛みはいつ消えるの?


友人と笑いあっている時でも

私の心にはあなたがいるのよ。


どうして

思わせぶりな台詞なんか言うの。

私をあなたという名の沼に引きずり込んだの。


苦しさが茨のように私の心を覆って。

あなたとの思い出が走馬灯のようによぎって。


だから最後に言わせて。

「あなたのことが好きでした。」

それを最後に想いも連絡先もすべて断ち切るから。


失恋がこんなに苦しいことだなんて

初めて知った。


あなたをブロックする指が躊躇うの。

震える指に零れる涙は恋をしていた証。


だけどちゃんとケジメをつけたいから。


さようなら、私の好きな人。


夜もまたあなたを思い出して

苦しくなることもあるけれどこの恋心が

消えるまでは失恋という痛みを大事にしたい。


この恋心が消えて初めて私は強くなれるから。


だからもう会うことは無いけれど。

あなたには幸せでいて欲しい。


どうか、幸せに。


あなたの幸せを願っています。








(終わり)

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