第4話 涙の国のお姫様


あるところに美しいお姫様がいました。

そのお姫様は虹姫と呼ばれ

肌は真珠のように白く、虹色の瞳を持っていました。


お姫様は涙の国のお姫様でした。

人々が毎日涙を流し、その涙が宝石になるので

涙の国と呼ばれていました。


何故、涙を流すと宝石になるのか。

その秘密を話すには昔話をしないといけません。


         ◯◯◯

むかしむかし、あるところに虹姫と

同じように虹色の瞳を持つお姫様がいました。


お姫様はワガママ放題でいつも王様に

宝石をねだっていました。


ある日、城にやってきた魔法使いに一目惚れをした

お姫様はあの魔法使いと結婚したいと王様に

言いました。


「お姫様が宝石を買うのをやめるなら

結婚を考えましょう」


魔法使いの言葉にお姫様は頷きます。


そうして2人は夫婦になりましたが

お姫様は宝石を買うのをやめてはいませんでした。


嘘をついたお姫様に深く傷ついた魔法使いは

王国中に涙が宝石へと変わる魔法をかけました。


それは魔法使いからの呪いでもありました。

一生、泣き続けて、その涙が宝石へと変わることで

己の罪を忘れないように、と。


魔法使いは去り、ひとり残されたお姫様は

嘘をつかなければ幸せになれたのかもしれないと

毎日泣きながら、積もってゆく

宝石を眺めていたのでした。


         ◯◯◯


虹姫はそのおとぎ話を

思い出しながらため息をつきました。


その美しい瞳からは

いつものように宝石となった涙の痕があります。


ご先祖様が面倒なことをしなければ

わたし達は毎日涙を流さずに済むのに。


虹姫は宝石箱を開けて中を覗き込みました。


真珠、トパーズ、水晶、翡翠。


様々な色の宝石が宝石箱の中で輝いています。


わたしは宝石より愛する人を選ぶわ。

宝石なんかより人の方が美しいもの。


「そう思いますか?」


気づくと窓際に外套を着た男性が立っていました。

フードの下の顔は分かりません。


「貴方は誰??」


その問いには答えずに男性は言います。


「美しい貴女の心を尊重し、魔法を解きましょう。

もう、間違いを犯してはいけませんよ」


その男性が言い終わった途端、

虹姫の涙は止まり、最後の宝石が床に

零れ落ちました。


男性はいつの間にか消えていました。


だけど、何故かまた悲しくなって

涙がポロポロと頬を伝います。


雫が床を濡らしました。


虹姫は何故魔法が解けても涙を流したのでしょう。

それは虹姫自身にも分かりませんでした。







(終わり)

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