補色

ヤマシタ アキヒロ

補色

美術に関してはシロウトだが


(美術以外にもシロウトだが)


色の対比において


「補色」という関係があることは


うっすら知っていた


補色とはすなわち


青🟦と黄色🟨や


赤🟥と緑🟩のように


互いに正反対の位置にある色が


混ぜ合わせると完全な黒(光の場合は白)


になる関係を言うらしい


くだけた言い方をすれば


互いに引き立てあう関係であり


欠点をおぎない合う


とても相性のいい存在


と言えるであろう


(まるでリンゴの赤と


 葉っぱの緑のように……)


「補色」という概念は


人間関係にも当てはめることが


出来るかもしれない


性格は反対なのに


なぜか相性のいい人


話すタイミングやペースが似ている人


腹を探りあう必要がない人


その人といるとなぜか


明るい気分になれる人


などが人間関係における


「補色」の間柄と言えるのではないか


もし自分の周りが


こういう人たちばかりであったら


どんなに気持ちが楽であろうか


しかし私がここで言いたいのは


補色の人たちのことである


むしろこちらの方が人間関係の


八割を占めると言える


それらは例えて言えば


色はてんでバラバラ


茶色とピンクであったり


紫とオレンジであったり


灰色とキミドリであったり


とても相容れないものばかり……


中には深緑と濃紺のように


なまじ系統が似ているゆえに


ハウリングを起こしそうなほど


相性の悪い組み合わせもある


「あの人とはなんだかやりづらいなぁ」


「あいつがいなきゃいいのになぁ」


などという険悪なパターンも


これに該当する


しかしまた


翻って思うに


合わない色同士を


混ぜ合わせて偶然


面白い色になったり


あるいは惑星の軌道のように


何周期かを経たあとに急接近する


まれな場合もある


そう考えると世の中に


混ざらない色はない


とも言える


ハナから


あの人とは合わない


と決めつける前に


いろんな色の配合を楽しみ


一風変わった対比を楽しみ


いつの日か驚くほど美しい


色彩が生じることを夢見ながら


気長にイメージを追ってみるのも


いいのではないか


地球上のあらゆる人と


色合いの混ざり具合を


楽しみたいものである


        (了)

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補色 ヤマシタ アキヒロ @09063499480

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