一寸特殊な新聞配達!

 サッサとコイツに飯を食わせて、サッサと自宅に送り届けて、今日は風呂に入ってサッサと寝る!

 是以上関わり会うと明日の仕事に差し障りが出ちまう、其れしか考えて無かった。今日で最後にしよう、これ以上関らずに済む様にと考えていた。


 背に乗せ到着したのは毎回使ってる何時ものファミレス、到着して奥の席を希望し案内される、今回は偶々なのか別の女給さんが担当、席に座り直ぐにオーダーを伝えコイツも昨夜と同じで良いだろう。

「ハンバーグセット二つとホットとカフェオレ、飲み物は先にお願いします」

「他にご注文は御座いませんか?」

「足りなきゃ追加しますんで」

「畏まりました、ではごゆっくりどうぞ」

 オーダーを取り厨房へと戻って行く女給さん、今日は此処で飯を食わせてそれで終わり、其れでサヨナラだ!。


 オーダーした珈琲とカフェオレが届き飯が運ばれて来るまでの間質問攻めに合う、もう是以上深入りしたく無い、だから余り話をしたく無いのだが…。


「今日のロードタイプもお兄さんのバイクなの?」

 そうだと頷く。

「昨日のも?」

 また頷く。

「他にもバイクが有るの?」

 頷く。

「何台持ってるの?」

 左手で4本指を立てる。

「4台もバイクが有るの?」

 (・.・;)

 頷き返す。

「お兄さん何で何も言ってくれないの?」

 さて困った如何対処するか?

 深入りせずに済ます方法は?

 両手を上に向け首を竦めた、

 良い方法だと思ったのだが?


「如何して、如何してお兄さん何も答えてくれないの?」

 目に涙を浮かべ是は最悪だった、更に最悪なタイミングで注文したハンバーグセットが運ばれて来る、然も更に最悪が上書きされる、そう運んで来たのは何時もの女給さん…。

 其の眼は俺を蔑む様な顔で見下ろしてる、敢えて例えるなら…、なるべく見たくないアイツ、居て欲しくないアイツ、攻撃するかの様に飛翔し向かって来る全身黒光し触角動かすアイツ、そうGを見付けた時の様…。

「ご注文の御品です、ではごゆっくりどうぞ!」

(#^ω^)

 例によって何時も女給さんは営業スマイルを湛えつつも頬と目尻はヒク付いてる、毎回違う女を連れ剰さえ何時も泣かしている、如何見ても俺は極悪人かG確定だよな…、もう二度とこのファミレスには来るまいと固く誓った。


「ほら、冷めない内に喰っちまおうぜ!」

 声を掛けると漸く顔を上げてくれた、ぽろぽろと目尻から零れ初めてる。


 <見ちゃ駄目だ!、まるで捨てられた子猫の様な顔、情が移るから見ちゃ駄目だ!、今日で終わりなんだから見ちゃ駄目なんだぞ!>

 何度も何度も自分に言い聞かせる。

「ほら腹減ってんだろ?、喰うんだろ?、喰ったら家迄送ってやるからな…」

「だったら、食べない!」

 激しく横に首を振り小さな声がした。


 <どう言う事だ?、少しなら、否、いかん聞いて仕舞ったらもう後戻り出来なく為るぞ!、お前其れで良いのか?、ホントに解ってるのか!>

 内に居るもう一人の俺が激しく抗議する、だが体は俺の言う事を聞いてはくれなかった。


「話しはするから、食べちまおうぜ」

「うん、じゃあ食べる」

 そう答えが返ってきた。

 <馬鹿か俺は…>

 自分自身を責めた。


 追加でオーダーしたコーヒーが運ばれて来る、視線は変わらず馬鹿にした冷たい侭だった。

「嬢ちゃん何時からこんな事してるんだ?」

 腹は決まった、乞うなりゃ帰る気に成る迄は話に付き合う迄だ!

「如何言う事?、家に帰らない事聞いてるの?」

 悪い事をしてるのが解って無いのか?

「其れも有るが、其の度に別の男と寝てんだろ?」

 ちょっと考えていた様だが…。


「友達の所に泊まれない時に部屋に泊めてくれたりホテルに連れて行ってくれる人とだよ、勿論毎日じゃないし家に帰らない時だけ!」

 呆れてしまう全く悪びれた様子が見えない。

「お前さ此の侭だと取り返しの付かない事に為るぞ?」

 そう伝えたのだが理解して無い、頭の中には先月有った事件が思い浮かぶ、今で言うデリへルか?

 派遣先の或るホテルで絞◯された娘がいた、後に捕らえられた犯人は全くの初対面だったらしい。


 事件現場には大勢の野次馬と報道各社が集まる中、泣き叫ぶ中年の女性が居た衣服は普段着の儘で慌てて飛び出した風、歳の頃なら被害者の母親と思われる、被害者は都心の専門学校に通い一人暮らし、親は真面目に学校へ通って居るものと信じて居たそうだ…。

 概略だが眼の前の娘に話して聞かせても自分とは何の関係も無さそうな顔をしてる。


「なんでそんな事を知ってるの?」

 剰えそう俺に聞く始末。

「嗚呼、知り合いに詳しい奴が居るんだ」

 マジマジとこっちを見てる。

「ねぇ!バイク4台も持っているって言ったよね?お兄さん何の仕事してるの?、事件にも詳しいし?」

 そろそろ聴いて来るとは思ったのだが・・。


「あゝ都心で新聞配達!」

 何も嘘は言ってない、昼間の官庁街と深夜の放送局だけど。

「新聞配達のバイクはカブでしょ?、なんであんなに速く走れるの?」

「勤め先が好きなバイク使って良いんだよ、日本に何社も無いけどな」

 此も嘘は付いて無いよね?

「でも新聞は何処に積むの?」

 意外としつこいなコイツ!

「多くても20件位だからタンクバッグに入るし足りなきゃシートに括り付けるのさ」

 コイツ次は何を言って来るのか?、さてどう交わすかな?


「そんな数で~?、そんなんじゃ仕事にならないよね?、お兄さんアタシに嘘付いてない?」

 意外と考えて居やがる!、なのに何で自分のやってる事を何故理解出来ないんだ?

「何も嘘は付いてないぞ、一寸特殊な新聞配達なだけだ!」

 首を捻って何か考えている。


「俺も聴いていいか?、何時からこんな事してる、知らない奴等ばかりだろ?、何か在ったら如何するんだ?、そんな奴が責任取ってくれるのか?」


 問い掛けたが俺が希望した返事は何時まで待っても返って来る事は無かった…。

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