第26話 ダンジョン実習だよ。


「さて、今日のダンジョン実習だが、各自の魔力と魔法をよく考えて、グループを組むように」


先生の声を聞いて、クラスの皆が一斉に動き出した。攻撃魔法が得意な子、防御魔法に長けた子、回復魔法を専門とする子……みんなが自分の役割を明確にして、テキパキとチームを組んでいくみたい。


ちょっと出遅れちゃったけど、

「リリちゃん、こっちよ」

手を振りながら、ミーナちゃんが呼んでる。ミーナちゃんの周りには、トール君とソフィアちゃん、そして金髪ドリルヘアーのマリーちゃんの五人組。これでグループができたね。みんな一緒で嬉しいね、組んでくれた、みんなにありがとうだよ。


「リリさんは『生活魔法』しか使えないんですって? わたくし、氷属性の魔法が得意ですの、ダンジョンでは頼りにしてくださいませ」

マリーちゃんが自慢げにいいます。なんかかわいいね。


「へん、その平民は生活魔法しか使えないのか?ダンジョンじゃ役にたたないじゃんか」

不意に、上級貴族の子息の一人が、私に向かって意地の悪い笑みを向けてきた。


「ふん、攻撃も防御もできない魔法使いなんて、足手まといだ。ダンジョンで何をするつもりだ?」


なんか言われてるけどお断り大丈夫気にしないよ。生活魔法はいろんな事出るんだから。人を幸せにできるんだ。


「リリの魔法は、あなたたちとは比べ物にならないほどすごいんだから! あなた達には、わからないでしょうけど!」

「ミーナ様のおっしゃる通りですわ。リリさん、気にしてはいけませんよ」


ミーナちゃんが、私のために怒って言い返してくれる。その優しさが、本当に嬉しかった。ついでにマリーちゃんもね。


「大丈夫だよ、ミーナちゃんマリーちゃん。私、みんなのお役に立てるように頑張るから!」


私は笑顔で答えた。トール君とソフィアちゃんも、私を見て頷いてくれた。


ダンジョンへ

ダンジョンに入ると、途端に道が暗闇に包まれたよ。


「うわ、真っ暗だ! これじゃ、進めないよ……」


ソフィアちゃんが困ったように声を上げる。私の出番だ。


「こんな時は、ライト!」


杖を掲げて魔法を唱えると、杖の先がまるで太陽の光を集めたみたいに明るく輝き出した。ただ明るいだけじゃない。暗い中では見過ごしてしまいそうな、地面の小さな段差や隠された罠まで、くっきりと視界に浮かび上がらせてくれる。

それに前の方まで、照れせるよ。


「すごい……! 普通の光魔法よりも、ずっと見やすい!」


トール君の感嘆の声が響く。ふふ、私の『ライト』は、日常生活で細かい作業をするために磨いた、自信作なんだ。


さらに奥へ進むと、巨大な岩が道を完全に塞いでいる。


「くそっ、これじゃ進めない! 誰か攻撃魔法で岩を壊せないか?」

「あまり、強力な魔法だと落盤しちゃうかも。」


ソフィアちゃんが言う通り、強力な魔法は使えないね。


私は、岩にそっと手を触れて、杖を構えた。


「アース・フォーム!」


私が唱えると、硬いはずの岩が、まるで柔らかい粘土のように形を変え始めた。ゴツゴツしていた岩が滑らかになり、人が通れるだけの道が、あっという間に開いた。


「なんだと……!? 岩を破壊するのではなく、形を変えただと!?」


後ろから、私たちを馬鹿にしていた上級貴族の子息たちの驚いた声が聞こえた。彼らが攻撃魔法で岩にヒビを入れている間に、私たちはもう先へ進める。

正確には、岩の質を変えただけなんだけどね。


毒の水を浄化

次に私たちを足止めしたのは、不気味な水たまりだよ。ドロドロとした水の中には、毒を持つ魔物が潜んでいるみたい。怪しい。


「どうしよう、これじゃ渡れないよ……!」


ミーナちゃんが不安そうに呟く。もし無理に渡ろうとして、毒に触れたら大変だ。


私は水たまりに手をかざした。


「ピュリファイ・ウォーター!」


魔法をかけると、水たまりの濁った水が、ピカっと光ったら、みるみるうちに透き通った清らかな水へと変わっていく。、潜んでいた魔物も弱って水面に浮かび上がってきたよ。


「リリ、君は……! 毒まで浄化できるのか!」

「え?そうだよ、料理する時に毒を抜かなきゃいけないからね」


トール君が興奮した声で言った。毎日、家で飲むお水を美味しくするために練習した魔法が、こんな場所で役に立つなんて。

雨水も浄化できるよ。


みんなのおかげで

実習を終え、地上に戻った私たちを、たくさんの生徒たちが迎えてくれた。私たちは、誰にも怪我をさせることなく、誰よりも早く課題のアイテムを持ち帰ることができたんだよ。


私の『生活魔法』は、攻撃や防御の魔法ではできない、けど。ダンジョン攻略にも役に立てる魔法だよ。


「リリ! 君は本当にすごいよ! 僕たち、君がいてくれてよかった!」


トール君が私の肩を叩いてくれた。「ね、リリ! 私たちのチーム、最高だね!」ミーナちゃんも、誇らしげな顔で私に微笑みかけてくれた。ソフィアちゃんも、私を見てニコニコしている。


「うん! みんなも、ありがとう! 私、一人じゃ何もできなかったから!」

ちなみに、魔物はマリーちゃんがほとんど氷漬けにしてたよ。すごいよね。


私の魔法は、みんながいて初めて輝けるんだ。


私を馬鹿にしていた生徒たちが、遠くで呆然と立ち尽くしているのが見えけど。

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