第24話 教会からの使者
ロゼリア王国の王宮に、厳かな空気が満ちていた。謁見の間には、聖衣を着た幾人かの男達が立っている。真ん中の背の高い男は、リリを追い出した時に、立ち会っていた男です。ロゼリア王国の隣の王国の教会に属する一員であった。無能者と追い出したはずのリリの評判を聞き、取り戻しにきた教会の使者でした。
ちなみに、ロザリア王国の教会は、派閥が違うのか、隣国の教会との方針が合わず、現在、絶縁状態です。
ちなみに隣国の教会は、総本山たる、聖王国とも関係がよくありません。特に今回のように、召喚を行ったり、奴隷制度を肯定していたりと、教義に合わないことがおおいのです。
隣国の教会は
「すべて、神の意思です!」
と嘯いていますが。
ロザリア国王は、玉座に座り、静かに使者の言葉を待っていた。隣には、ユリウス王子とガブリエルが控えています。
王から見て、左側には、宰相をはじめとする、文官たちが、右側には騎士団長や軍務大臣をはじめとする、武官たちがならぶ。
たかが1教会からの使者に異様な雰囲気であった。
使者は、恭しく頭を下げると、傲慢なまでに自信に満ちた声で語り始めました。
「ロゼリア国王陛下に、聖アリアナ大聖堂より、ご挨拶申し上げます。そして、この度は、我らが聖女たる、リリ様の保護、誠に感謝申し上げます」
「聖女だと? そちらでは、彼女を『役に立たない魔法使い』として、追放したと聞いているが」
国王の問いに、使者は眉一つ動かしません。
「はて?誤解があったようでございます。でございます。我々は、彼女の持つ力の真髄を見抜いておりました。ただ、使い方が分からなかろうと、修行に出したのございます。いま、発現しtりるその力こそ、我々が探し求めていた、聖女の力に他なりません」
使者は、まるで用意された演説のように、滑らかに言葉を続けます。
「つきましては、我々の大聖堂にて、彼女を聖女として丁重にお迎えする用意がございます。彼女は、神殿がその力を最大限に引き出すべき、我々にとっての希望なのです」
ユリウスは、使者の言葉を聞き、怒りを抑えきれずに一歩前に出ました。
「ふざけるな! 君たちが、あの日、彼女をどれだけ傷つけたか、知っているのか!?」
しかし、国王が静かに手を挙げ、ユリウスを制止す。
「落ち着け、ユリウス、其方は王子であろう、」
国王は、使者に向き直ると、静かに、威厳をもって答えた。
「使者殿、感謝は受け取ろう。だが、リリ殿は、我が国で保護し、本人はしばらく、lこの国に滞在の意思を示しておられる。さらに言えば、我が娘、王女ミーナが学園に復学することになったので、病み上がりの王女のそばに居るために、共に学園に在籍をして、より多くを学んでいる所だ。そちらに移すには及ばないと思うのだが」
「それは、彼女の力が、陛下のお国の発展に役立つからでしょうか?」
使者は、挑発するように尋ねた。国王は、静かにかたった。
「はて?余がリリ殿を利用していると?勘違いされるなよ、彼女が、我々の娘であるミーナを救ってくれたからだ。彼女から、ミーナの側にいる旨、進言があったのだ。けっして、我らが無理強いをしたわけではない。そして、それは歓迎をもって迎えられている。」
王の言葉に、宰相や騎士団から同意の意思が伝えられた。
国王の言葉に、使者の顔から笑みが消えた。
「使者殿、我が国では、リリ殿は客として迎え入れた。その者を、そう簡単に引き渡すことはできない。ましてや、恩人であれば、なおさらだ」
「それは、つまり……」
「そうだ。リリ殿を、そちらに引き渡すことはできん。恩人に仇なすことはできんでな」
国王は、毅然とした態度でそう言い放った。
使者は、これ以上の交渉は無意味だと悟り、恭しく頭を下げ、謁見の間を後にしました。
「国王の決断、後悔なさいませんように」
「それは、一国の王に対する脅しかな?いや、それても、宣戦布告かな。」
使者は、ロザリア国王の威圧にたじろいだ。
ここで、対応を謝れば、戦争になったしまう。しかも、聖王国から破門もありうる。
「いえ、決してそのような意味では、いいでしょう。聖女様はしばらく貴国に預けおきます、いずれ、時を見てお迎えにあがりますゆえ」
使者の言葉にユリウス王子はホッとした。
期限付きとは言え、リリの安全が保障されたのだ。また、隣国から引き渡しの打診があった時は、その時に考えればいい。
あの、リリのことだ、その時は自分でなんとかしそうなのだが。
「父上……ありがとうございます!」
使者の戻った後、ユリウス王子は、国王に感謝の言葉を述べた。
「よいのだ。この国は、リリに救われた。リリを、二度と悲しい目には合わせん」
国王の瞳には、リリを守るという、強い決意が宿っているようだった。
「殿下、リリ様はまさに至宝でございます。リリ様の薬で多くの者が救われているのです。我ら家臣一同もリリ様をお守りしますぞ」
宰相がそう言うと、騎士団長も恭しく頭を下げた。
しばらくすると、ロザリア王国の教会が聖王国より、状況の説明を聞くために使者を送ると打診があった。
高位の司祭がくるらしいが・・・・
隣国の教会の使者は、手ぶらで帰ることになった。そして、隣国の国王に叱責を置けるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます