温泉地での噺

いつぶん

第1話

なかなか架空のお話でも、思いつかないものだ。


シャンプーをしながら考えていた。


シャワーで頭を流した。


シャワーのお湯が、頭から、温かく包み込む。




顔を上げると、辺りは薄暗かった。


そうして、私は温泉に浸かっていた。


露天風呂だった。


白い湯気の向こうに、綺麗な星空が見えた。


温泉の周りはうっそうとした竹林だった。


月は、見当たらなかった。


竹林のその何処かに隠れているのだろうか。


兎に角、最高の温泉だった。


然し、ずっとこうしているわけには行かない。


服がない。


と、思ったけれど、置いてあった。


温泉の成分に白んだ岩の上に置かれていた。


二着あった。


旅館の刺しゅうのはいった浴衣と、旅館の女中が着るような女性の着物。


とりあえず、浴衣の方だと思い、そっちを着た。


そして、ここに女性が一人いるかもしれないと気づき、辺りを見渡したが見当たらなかった。


私一人だけだった。

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