その向こうには
梨多
小さな茅葺きの家が集まるこの村では、昔からの言い伝えがある。絶対に高いところに登ってはいけないということ。
お母さんが言うには、昔、丘のてっぺんにある木に登って、いなくなってしまった人がいるんだって。落っこちて死んじゃったわけじゃなくて、どこを探しても見つからなかったらしい。だからその木は不吉だとか言って倒されたらしい。また、他の人が教会の屋根を修理しようとして梯子で上まで登ったら、その人もいなくなっちゃったんだって。
最初はみんなただの偶然だと思って気にしていなかった。だけど占いのおばあさんと神父さんが神隠しだって言った日から、この村はいろいろ変わってしまったらしい。高い建物はもう作っちゃいけない、もし今あるならすぐにでも取り壊さなきゃいけないっていう掟ができた。もちろん教会も展望台も大きな倉庫も全て壊されちゃった。上に登っちゃいけないから土台からどんどん壊されていった。小高い丘とかここから見える山にも、絶対に行っちゃいけないってことになった。そして生まれてきた子どもにはこのことを教えるっていうルールも作られた。
この話のどこからどこまでが本当なのかはわからない。だってこれは随分と昔のことなのだから…。
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