第23話 炎の誓い ― 第二十三話「光の限界」

漆黒の影の中、姿を現したのは金髪碧眼の長身の男だった。

 冷ややかな笑みを浮かべ、声は透き通るように響く。


 「我が名はラファエル・シュナイダー。この世のあらゆる力を掌握する者だ」


 悠真の拳が震える。

 「……お前が……姉さんを!」

 「そうだ。無力な女はただ消えただけ。お前の復讐心すら、私の糧となる」


 悠真の炎が激しく燃え上がる。だがラファエルは一歩も動かず、ただ手をかざすだけで周囲の闇が生き物のように広がり、仲間たちを飲み込もうとする。


 雷太が雄叫びを上げ、ハンマーで影を粉砕する。

 「ざけんなよッ!」

 氷河も剣を振り抜き、影を裂いた。だが次々と湧き出す影に、前進すらままならない。


 その時、天井の瓦礫が崩れ落ち、莉奈の頭上に迫った。

 氷河が振り返るよりも早く、鈍い音が響く。


 「きゃっ!」

 瓦礫が莉奈の太ももを直撃し、鮮やかな血がスカートを濡らした。


 「莉奈!」氷河が駆け寄る。

 「だ、大丈夫……でも……」

 顔を歪めながら、彼女は小さく告げた。

 「私の力……他人は癒せても……自分には使えないの」


 氷河の胸に熱いものがこみ上げる。

 「……そんな無茶をして……馬鹿か!」

 彼は迷わず莉奈をおんぶして、剣を構えた。

 「俺が……守る。絶対に」


 莉奈は氷河の背中に額を押し当て、震える声で囁いた。

 「……ありがとう、氷河くん」


 その光景を見ていたラファエルの青い瞳が、冷酷に光る。

 「光は消える。絶望と共に」


 莉奈の放つ光が揺らぎ、次第に弱まっていく。

 闇が迫り、彼女の輝きを飲み込もうとした。


 ――圧倒的、不利。


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