第13話 炎の誓い ― 第十三話「姉の記録」

戦いの翌日、悠真たちは澪の案内で彼女のアパートに集まった。

 狭い部屋だが、本棚や机の上には無数の資料やノートパソコンが散乱している。壁には地図や相関図まで貼られていた。


 「ここは……」悠真が呟く。

 澪は苦い笑みを浮かべた。

 「美咲と一緒に調べていた“現場”よ。彼女は高校生活の裏で、ずっと組織の証拠を集め続けていた」


 机の引き出しを開くと、綴じられた手帳が出てきた。

 表紙には見覚えのある字で――「美咲」と署名されている。


 悠真の胸が締め付けられる。

 「……姉さん……」


 澪がそっと手帳を開いた。

 そこには細かなメモがびっしりと書かれていた。

 ・組織の研究施設の所在地

 ・能力者の追跡ルート

 ・実験体と呼ばれる子供たちのリスト

 そして――最後のページには震える文字でこう残されていた。


 「核心に至れば、真実は暴かれる」


 その言葉を見て、隼人が低く息を吐いた。

 「やはり……昨日のリーダーの言葉と一致する」


 氷河は腕を組み、冷静に分析した。

 「核心……おそらく、組織の中枢施設の暗号名だ」


 雷太が机をドンと叩く。

 「なら話は早ぇ! そこに乗り込んで全部ぶっ壊せばいい!」


 「……簡単にはいかない」澪が首を振る。

 「“核心”は都市の地下にあると噂されてる。場所も防衛も徹底していて、正面から行けば確実に全滅する」


 沈黙が落ちる中、悠真は姉の手帳を胸に抱きしめた。

 ページに残るインクの滲みを指でなぞりながら、心の奥に火が灯る。


 ――姉さんは、ここまで辿り着いていた。命を懸けて。

 今度は俺が、その続きをやるんだ。


 「……行こう。“核心”に」悠真の声は震えていなかった。

 雷太がニッと笑い、氷河は黙って頷く。隼人は風のような静かな眼差しで彼を見守った。


 澪は机から一枚の古い地図を取り出した。

 「一つだけ、入り口の可能性がある。裏社会でもほとんど知られていない“地下輸送路”。組織が物資を運ぶのに使っている秘密の通路よ」


 赤い丸がつけられた場所は、繁華街の外れ――廃ビルの地下。


 「そこからなら、“核心”の近くに潜入できるかもしれない」


 悠真は拳を握りしめ、姉の手帳をリュックにしまった。

 「姉さん……必ず真実を暴く。今度こそ、守るから」


 こうして四人と澪は、新たな潜入調査へと動き出すのだった。

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