第74話 KIYOSUタウン:未来都市の衝撃
1553年7月上旬
翌日。朝倉宗滴と真柄直隆の一行は、織田信長に案内され、末森城から西へ10km程の清洲城へと向かった。
「宗滴様、あれがKIYOSUタウンでございます」
信長が指さした先に広がっていたのは、宗滴たちの常識を遥かに超えた光景だった。
宗滴
「これがタウンと言うものか…城下町、と言うたが城とは違う巨大な建物が溢れておる…」
真柄
「馬鹿な!!あの馬車らしき物、馬も無しに走ってるぞ!」
広大な敷地に整然と並ぶ耐火レンガ造りの建物群、規格化された道路を走る小型三輪車、そして何よりも、尾張中から集まってきた活気あふれる人々の熱気。
信長は胸を張った。
「タウン内は、農業・工業・商業の三大要素を融合させた、大規模な卸・小売市場でございます。まずは、当タウンの娯楽棟へご案内しましょう。」
一行が案内されたのは、巨大な円形の建物だった。令和の横浜スタジアムに屋根を付けた構造を持つ、ドーム状の飲食店モール、通称(ハマスタドーム)である。
ドーム内は、エアコンが効き涼しく色とりどりの幟が立ち並び、様々な匂いと活気に満ちている。
「この巨大な空間は一体……柱も梁も無いのに屋根がついておる!」
「宗滴様、ここは全国各地の美味い料理を集めたフードコートでございます。まずは腹ごしらえを」
宗滴は、信長が案内した一つの屋台に目を奪われた。屋台の看板には(横浜名物 崎○軒のシウマイ)とある。初めて見るシウマイなる食べ物に興味を抱く。
そを口に入れた瞬間
「おお!何と!」
肉の旨味と、蒸された皮の絶妙な食感、そして初めて味わう風味豊かな醤油の組み合わせが、宗滴の舌を直撃した。
「うむ!これは…絶品!肉を練り、こんな形にして蒸し上げるのか!この新しい発想は凄まじい!」
宗滴はシウマイに魅了され、次々と平らげ始めた。
付き従ってきた真柄直隆が、別の屋台の前で立ち止まる。彼の視線は立ち食いの屋台に向けられていた。
(川村屋のそば・うどん)と書かれた暖簾を潜る真柄。
「お、おい、これ!かき揚げうどんと、この稲荷(いなり)寿司というやつをくれ!」
出汁のきいた温かいうどんと、特大のかき揚げ。甘辛い油揚げで包まれたいなり寿司は、真柄の胃袋と精神を完全に虜にする。
その巨大な体躯は驚異的な速度でうどんを啜り上げ、いなり寿司を一口で頬張る。
「う、うまい!何だこの
真柄は、うどんを五杯お代わりし、一皿二個のいなり寿司を五皿ペロリと平らげた。その様子に、宗滴と信秀は呆れながらも笑みを浮かべる。
「直隆…食い過ぎじゃ(笑)」
「宗滴様!申し訳ありませぬ!しかし、この川村屋とやら、このまま清洲に残って毎日食べたくなります!」
昼食後、立ち入り禁止エリア工業棟へと案内した。
大量の最新型工作機械と、規格化された銃器・火薬・繊維製品などが並べられている。
宗滴の目が釘付けになったのは、大量生産されるマスケット散弾銃と、積み上げられた鋼鉄の延べ棒だった。
「これは織田家の新兵器、まだ実戦では未使用です。部品は規格化され、一つ一つが精密に作られて、破損しても直ぐに別の部品と交換できます。故に、兵器の量産と維持が容易でございます。」
宗滴は、その品質の均一性と生産速度に絶句する。越前の職人が魂を込めて一本ずつ作る刀や火縄銃とは、比べ物にならない速度である。
さらに信長はガラスやプラスチック製品を見せた。その透明性、軽さ、そして実用性は、宗滴の物質に対する概念を根底から揺るがす。
「信長殿…貴殿らが半刻で春日山城を瓦礫にした力の源なのか……」
最後に信長は、ある場所へ宗滴等を案内する。そこは、KIYOSUタウンの賑わいを一望できるシンボルタワー、KIYOSU未来タワーなる鉄塔だった。
地上100mの屋外スカイバルコニーに立つ御一行
「宗滴様。貴殿は越前の伝統と秩序を守ろうとされています。それは大切な事なれど織田家は既に、この様な新しい時代を創造しております」
信長は、言葉には出さなかったが、未来の物質文明を背景に持つ自身の力が、いかに絶対的であるかを宗滴に理解させた。
宗滴は、活気あふれるKIYOSUタウンの光景と、見た事もない建造物に様々な料理、そして規格化された鉄と火薬の山を思い返し、深く目を閉じた。
「……信長殿。わしの懸念は消えました。そして確信した。」
信長は宗滴の次の言葉を待つ
「織田と戦になれば、朝倉は滅亡する。武力、経済、そして何より民のあの目だ!生き生きとした活力溢れる目!
そんな国と戦になれば、彼等全員が豊かな暮らしを守るため、死に物狂いで向かってくるでしょう…」
宗滴は、静かに信長に頭を下げた。
「朝倉家は、織田殿との通商同盟を固く守る。この未来都市から多くの知恵と富を学ばせていただく所存だ。」
朝倉宗滴は、未来技術の圧倒的な力に屈服し、織田家との不戦の盟を結ぶという、朝倉家にとって最も賢明な決断を下すのであった。
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