第6話

藍視点


僕と榎本さんは2人並んで料理部の共通の知り合いに関する話や好きな本のジャンルなどの他愛もない話をしながら、本屋への道を歩いていた。


榎本さんは校則に反しない程度の明るい色に染めた髪が特徴的な明るい性格な女の子だ。


僕はどちらかと云うと陰キャよりの性格をしているので、彼女が積極的に話しかけてくれる。


僕は、榎本さんの話を聞きながらも頭の中では


『私と藍はあなたが思うような関係でないわ。彼とは単なる昔からの付き合いってだけ、何とも思ってはいないわ。親が知り合いだから一緒にいるだけよ。』


という凛の言葉の内容と今まで聞いたことのない強い口調が頭の中を巡っている。


やはり、女性は何とも思っていない男が一緒にいると嫌なのだろう。


榎本さんはこうして僕と一緒に歩いて嫌なのではないだろうか?


僕が苦し紛れの誤魔化しに本屋に行くと言ったから、本当に本屋に行く用事があった榎本さんはこうして一緒に歩いているのかもしれないな。


僕がそんな事を考えながら榎本さんと歩いているやがて本屋に着いた。


「やぁ、着いたね。榎本さんが欲しい本のジャンルは何かな?」


僕が榎本さんにそう話しかけて店内に入ろうとすると、榎本さんが僕の袖を引っ張る。


袖を引っ張られた僕は足を止め、榎本さんの方を向く。

僕がどうしたのと聞く前に、榎本さんが口を開く。


「先輩、あたしと歩いていて楽しくないですか?」


僕は慌てて、


「そんな事はないよ。」


と答えるけど、榎本さんは、


「嘘ですね。立って、先輩はあたしが話しかけてもうわの空だし。」


どうやら、僕が凛の言葉がずっと頭に残っていて、それについてずっと考えていて、ぼんやりしていた事はお見通しだったらしい。


僕は、さっき聞かされた凛の本音とその時の口調がずっと気になっていたと榎本さんに素直に伝えた。


「それでさ。やっぱり女の子は好きでもない男と一緒にいると嫌だろうなと思っていて成り行きで僕と一緒に本屋に行く榎本さんには申し訳ないなと思ってね。」


すると、榎本さんは、頬をプクッと膨らませ、少し怒った口調で、


「あたしは先輩に対して嫌だと思ってはいません。大体、あたしから本屋に誘ったんですからそんな事思っている訳が無いじゃないでしか!」


僕は榎本さんの言葉を態度から本心だなと受け取り、素直に謝る。


「そうだね。ごめん。」


すると榎本さんはすぐに機嫌を直し、


「わかったら、良いのです。罰として今日は先輩に布教活動をするので、黙ってあたしについてきて下さい。」


榎本さんは僕の袖を引っ張り、

BLと明示された棚に連れて行こうとする。


「えっ!榎本さん!」


僕が慌てて、榎本さんを止めようとすると、榎本さんはクスクスと笑い。


「冗談ですよ。あまりに先輩がうわの空だったから、ちょっとからかっただけです。」


そう言われて、僕は安心したけど、この後、三十分間、榎本さんの布教活動(推理小説と恋愛小説に関する布教)はしっかりと受けさせられた。


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