　証言者：伊藤健

　証言日：2024年11月8日

　あの夜のことは今でも夢に見ます。

　11月3日の午前二時ごろです。十一階で清掃していた時、エレベーターホールに人影が見えました。山田さんでした。

　でも、普通じゃなかった。身体が薄くて透けてるんです。お腹のあたりから赤い光が漏れてて……。

　周りを小さな赤い蝶がひらひら飛んでいました。現実じゃないみたいでした。

　私に気が付くと、山田さんは微笑んで言いました。

　「ありがとう。みんなが呼んでる」って。そして、蝶と一緒に静かに消えていきました。

　夢だったのかもしれません。でも、あの蝶たちの羽音は、今でも聞こえる気がします。

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