第4話 大学

「お待たせ!ゆう♪」


「おはよう!にいちゃ!」


「おはようゆうちゃん♪」


「おはよう萌絵といっくんとモカ姉」


朝、俺は喫茶店の前で萌絵を待っていた。

今日は大学に顔を出さなければならない日なので約束をしていた萌絵と一緒に大学へ通学することになっていた。


「それじゃ、三人共行ってらっしゃい♪」


「「「いってきます」」」


商店街を真っ直ぐ歩くと駅に着くのだが、途中黒瀬兄妹と倉田兄妹に出会い、小学生組は小学校へ。大学生組は駅に向かった。


俺達が通う大学は3駅離れた隣町にあり、国立な為か他の地域からも通っている生徒が多い。


俺達はすぐに来た電車に乗り込んだ。

電車内は満車ではないが座れそうにはない位は人が乗っていた。


「きゃ〜やだー♪♡」


「今日も綺麗だよ♪」


電車内では男性に囲われている女性や逆に女性から囲われている男性が目に入った。


この世界は大雑把に言うと男女比が1:7位の割合で先程から目に入っている女性を侍らしている男性やお金持ちなのか、装飾品の様に男性を侍らしている女性がいたりする。

女性を侍らしている男性は複数の女性と付き合い、また女性側も男性と付き合えるのでお互いに割りきっている関係なのであろう。


男性を侍らしている女性も男性側がお小遣いを貰って一緒にいると聞いたことがあるので、これまたお互いに利のある関係なのであろう。


「・・・ゆうも女の人と沢山関係持ちたい?」


「ん〜俺は別にかな。ただ俺の事を好きでいてくれる人がいれば俺も真剣に付き合いたい位かな。」


「!!!ゆうはやっぱりゆうよね♡」


「おっ!番犬が喜んでる。」


「機嫌が良いね。」


「うっさい!」


電車内で4人話をする。


「でも、ゆうを狙っている奴多いからな。基本優しいからなゆうは。」


「だね。僕も聞いたことあるよ」


「は?聞いたことないけど???」


「俺もなんだけど!?」


初耳だ。


「だって俺は基本大学内でも少数の女性としか話さないし、後は商店街の人達だけしか関わりはないんだけど?」


「あれだよ、ゆうは教授とかに頼まれて荷物を運んだり何か大変そうな女子にさりげなくフォローしてるだろ?それだよ。」


「くっ!ゆうの性格が仇となっていたのか!」


確かによく名前の知らない人でも手伝ったりはしていたけど、それで惚れるなどチョロすぎないか?


「いやいや、そんなことで惚れたりしないでしょ!そんな単純じゃないでしょ人って。だよね萌絵?」


「ソウダタンジュンジャナイ。ユウハカンチガイシテハイケナイ」モワ〜


「だよね。危なかった。勘違いして調子に乗るところだったよありがとね萌絵♪」


「うん♡ゆうの役に立って嬉しい♡」


「・・・出た。鮎川式洗脳術。」


「モカさんもだけど、外敵を近付けないためとしてもゆうが可愛そうだよね。」


なんやかんやで大学のある駅に着いたので電車から降りて大学に向かった。

大学は駅と繋がっており、駅と似た改札に学生証をかざすとゲートが開く仕組みになっている。


大学内へ入ると何故か甘い感じの香りが漂っていた。


「何この甘ったるい臭いは。」


「ホントだ。何かキツいな。」


「鼻が痛い」


「チッ...男子が来るからって色気付きやがって...メス共がっ!」ボソッ


「何か言った?萌絵。」


「うんうん♪何でもないよ♪...マスクあげるからつけた方がいいよ!」


「おっ!ありがとね」


萌絵からマスクを貰い、マスクをしながら俺達は中へと進んだ。


大学の中は先程見た電車内の男女と同じく1人の男に数人の女性がくっついていたりしていた。


「モテる奴はいいなぁおい!」


智輝がその光景を見ながら悪態をつく。


すると女子達が俺達の存在に気が付いたのか一斉に寄ってきた。


「おはよう!黒瀬君♡」


「黒瀬君!会いたかった♡」


「倉田君♡」


「おはよう!倉田君♡」


「片桐く〜ん♡」 「ガルルルルッ(殺意)」


智輝とヒロに女子達が挨拶をしに集まって来た。

俺の所にも来てくれているが何故か萌絵が俺の前に立っているのだが、あまり女性が近付いて来てくれない。

やはり智輝とヒロの方がモテるのであろう、俺には社交辞令程度なんだろう。


「やっぱり俺には萌絵が近くにいればいいかな。」


「キャイン///♡♡♡♡」


萌絵が犬みたいな声を出していた。


「.....番犬が邪魔なのよ」ボソッ

「...チッ発情期の犬め」ボソッ

「.....片桐君の匂いを私にも嗅がせろよ」ボソッ


・・・・・・。


俺達は一通り挨拶を済まして、課題を提出する為に男子担当の教授の元に向かった。


「やっぱり、智輝とヒロはモテるよね!」


「いや、大半はゆう目当てだろうよ。それに俺は俺だけに優しい女の子が欲しい!」


「僕もだよ。わけわからない人達より僕を愛してくれる優しい人がいいよ。じいちゃん見て思うよ。」


ヤスさんはまぁ。


課題を提出し終えたので食堂で時間を潰そうと移動しようとしたら声をかけられた。


「やあ!片桐君。君は相変わらずショボい見た目だね♪」


「あっ、タケだ。おはよう。」


声をかけてきたのは西園寺武則さいおんじたけのりだった。

武則ことタケはこの大学の反対側ににある駅直結型のショッピングモールのオーナーである西園寺グループの長男で同じ大学に通う友人だ。


「何がショボいだよ!家柄以外ゆうの下位互換の癖に。」


「同感!」


俺は仲良くしたいのだが、智輝とヒロはタケを嫌っている?のだ。


「まったく、片桐君の友人は口が悪いな!・・・鮎川さんじゃないか!...相変わらず美しい...お姉さんと一緒に私の家に来ないかい?」ウィンクビーム


「コンニチハ、キョウミガナイ・・・ウセロ」


「ははっ♪そっけない君も素敵だよ♪片桐君の事を気にしているのかい?僕の方が片桐より全てが上だよ?悩む必要はない!それに君の家の喫茶店を寂れた商店街ではなく、僕の家のショッピングモールに出店できるようにしてあげるよ?」


「コロスコロスコロスコロスコロス」


タケは萌絵が好きな様子なのだが、俺を使って口説くのはやめて欲しい。


「ヤバい!番犬がキレるぞ!ゆう!萌絵を後ろから押さえてくれ!」


智輝が言うので萌絵を後ろから抱きつく形で押さえる。


「萌絵落ち着いて?萌絵が商店街を愛しているのはわかっているから、ね?」ギュッ


「コロ...すんおぉぉぉぉぉ///!!!?!!!!???♡♡♡♡♡」ジュン ジワ〜♡


萌絵はビクビクしながら落ち着いた。


「番犬のあの顔...仕方ないわね」ボソッ


「あれは耐えれない」ボソッ


「私、購買でパンツ買って来てあげてくる」ボソッ


「同じ女として同情するわ、あれは無理よ」ボソッ


まさか萌絵がそこまで商店街を想っていたなんて嬉しいな。俺も商店街が好きだからタケの吐いた言葉は少しイラッとした。


「タケ。俺のことは別に好きに言ってもいいが、商店街の事は悪く言わないでくれ!・・・お前だって嫌だろ?ショッピングモールを悪く言われるのは」


「えっ?あ、ごめんよ。悪く言うつもりはなかったんだすまないね。それより鮎川さんが大変だから離してあげてはど、どうかな?」


俺は萌絵を抱き締めたままだったことに気付き離してあげた。


「良かったね萌絵♪タケが商店街のことを謝ってくれたよ?」


「...も・・もぅ///ゆるしゅの〜〜♡♡♡♡」ガクッ


萌絵は呂律の回らない口調で倒れてしまった。


「萌絵!大丈夫!?」


「・・・寝不足なんだよ。医務室連れていってやろうぜ。」


「さすがに可愛そうになってきたから休ませてあげよう。」


「・・・片桐君・・その、すまなかったね。...その...鮎川さんをもう少し優しく扱ってあげてくれ。」


寝不足だった萌絵を医務室に運ぼうとしたが、先程まで見ていた女子が急に萌絵に駆け寄り医務室まで連れていってしまった。


「萌絵大丈夫かな?」


「大丈夫っしょ!いつものことだし」


「食堂行こう!」


智輝とヒロが大丈夫と言うので少し心配なのだがそのまま食堂に行くことにした。









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