第2話 狩人からの転職
「キャラメイクなんて何年ぶりだろうな」
ワールドハンターを魂の実家に据えてからは、新しいゲームを殆ど買ってなかったから、久々のキャラメイクは結構楽しみだったりする。
「アバターの外見だけでも項目多いな。まあ流石に昔のゲームと比べたら失礼か」
項目は、基本的なものからマニアックなものまで多数ある。特に首や耳たぶのサイズまで変更できるのは誉め言葉だが頭おかしいだろ開発陣。まあ細かい所含めて、大体の項目はリアルと同じで良いだろ。
「髪型はいつも通り長髪で、目と合わせて白っぽくして——」
数値設定して思うが、こだわる人なら外見を決めるだけで30分以上は遊べるな。
「——まあこれで良いかな。一部の項目はキャラメイク後でも変更出来るみたいだし、問題はここから先だな」
中性的な外見でアバターは落ち着いたが、MMORPG初心者の俺からすればジョブなどの項目が未知の領域過ぎる。
「ええ、ジョブにステータスの振り分け、武器と防具の選択、信仰対象を選べると。取り敢えず信仰対象と装備から決めた方が楽かな」
《信仰対象》
・天 :上空に住まう存在に願う者。LUCに上昇補正。
・人 :人類の積み重ねを信ずる者。DEXに上昇補正。
・地 :自然への感謝を怠らない者。VITに上昇補正。
・聖 :清らかなる理を尊ぶ者。HPに上昇補正。
・魔 :魔性の存在に魅入られた者。MPに上昇補正。
・妖 :異形への存在に心惹かれる者。AGIに上昇補正。
・無 :心の拠り所を持たない者。STRに上昇補正。
信仰対象ごとにステータスとNPCからの初期好感度に補正が入るの形式か。補正度合いが分からないから、フレーバーテキストじゃなくてステータス補正で選べばいいだろ。
「信仰対象は人だな。このゲーム、DEXの値が高い方がアバターをより器用に動かせるらしいし。次は装備だけど、この種類から選ぶの面倒だし普通に片手剣で良いか」
スクロールバーが短いのを見て武器は王道の片手剣に決め、残すはジョブとステータスだ。
「ジョブも初期で選ぶにして数多すぎだろ。これ全部の項目を吟味したら1時間は余裕で過ぎるんじゃないか? もうパッと見だけどハンター的なジョブは初期ジョブには無いっぽいし、旅人で良いな」
ジョブはどうやらスキルや魔法の覚えやすさに補正が入るらしい。魔術師なら魔法系、剣士なら剣術スキルや自身へのバフスキルといった感じで、旅人は補助系のスキルと魔法が覚えやすいと説明欄に書いてある。
残る項目はステータスポイントとやらだが、一度ステータスの種類を確認しておくか。
HP:体力。一部スキルの発動条件や対価となる場合がある。全損すれば勿論アウト。
MP:魔力。数値に比例して魔法の効果/威力も上がる。魔法を使う気は今の所無い。
STR:筋力。持ち歩けるアイテムの総重量と攻撃力の値が増える。上げて損なし。
VIT:耐久力。素の防御力と固定ダメージ減少率が増える。高所から落ちても平気なれるらしい。
DEX:器用さ。アバターの精密動作性が上がる。最大値と最小値の差が少し気になった。
AGI:敏捷。どれだけ速く動けるか。ステータスに名前は無いがスタミナの消費量にも関与するらしい。
LUC:運。ドロップ率や遭遇率、クリティカル率などの判定に関与。素材周回の回数が減りそう。
「この7つのステータスに、20ポイントを自由に割り振れば良いのか。じゃあMPとLUC以外に均等に振るか」
確認ボタンに触り、全身像とステータス画面を確認する。防具は数値が同じだがデザインは色々とあったので、和風剣士の様な見た目のにした結果、旅をしている灰色の侍的な見た目になった。
最後に入力したプレイヤーネームを読み上げることで、俺はこのアバターでファンタジーの世界へと足を踏み入れる。
「
『サミダレ様、ガーデンオブユートピアへようこそ」
視界が暗転したと同時に、歓迎メッセージが聞こえた。
——LOADING——
視界が明るくなるとそこは質素な部屋だった。
「街の入り口とかからスタートじゃないんだな」
初ログインのプレイヤーはリスポーン地点を兼ねて専用の宿屋から始まる。五月雨はそんな宿屋から出て、始まりの街を少し探索する。
「武器屋に防具屋、道具屋、鍛冶屋——あれは訓練所か。それと教会が目立った建物だな」
店内に入っていないのもあるが、そんなに広くなく始まりの街は直ぐに回りきれた。
訓練所と教会はログアウトした後にネットで調べたらどういう施設か分かるし、武器屋とかは後回しでもいい。どうせ初期の所持金じゃ道具屋以外で買い物するのも無理だろう。
「ええと、確かメニュー画面は左手を降ろして開くんだったか?」
左手を上げて下ろすと複数の項目が出現した。取り敢えず自身のステータスを確認する。
《プレイヤー》 五月雨 :LV1
《信仰》 :人
《ステータス》 ジョブ :旅人
サブジョブ:——
所持金 :5,000ユル
HP :14
MP :10
STR :14
VIT :14
AGI :14
DEX :14(+7)
LUC :10
「武器は“譲られた直剣”。まあ普通に初期武器だな。適当に選んだとはいえ、盾無しの片手剣持ちはなんかバランス狂いそうな気もするけどまあ良いか」
ウインドを閉じ、出口を探す。
「兎にも角にもまずは狩りをしない事には文姉ちゃんへのレポートが書けないしな」
出口らしき場所を見つけた俺は、元気よくそこへ駆け出した。
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