第2話 アルミ缶でケースを作る

僕は、何でも「入れ物」にしてみたくなる癖がある。ある日ふと、飲み干したアルミ缶を手にして、「これ、底を削り出して二つ組み合わせたらケースになるんじゃないか?」と考えてしまった。もちろん、百均に行けば立派なスクリュー式ケースが山ほど売っているのは知っている。だが僕の性分は、思いついた時点で実行に移してしまう。


まずはカッターと金ヤスリを持ち出し、アルミ缶の底を切り離す。薄い金属は思った以上に手強く、刃を入れるたびにギシギシと不穏な音が響く。おまけに切り口は鋭利で、指先をスパッとやられそうだ。汗をかきながら、慎重に慎重を重ねて二つの底を作り出す。


試しに合わせてみると、意外なほどすんなりとはまった。「おっ」と思う。しかし、喜んだのも束の間、ほんの少しの歪みで口が閉じきらない。強引に押せばはまるが、そのたびに金属片がポロリと落ちる。強度も心許なく、とても持ち運べる代物ではない。


結局のところ、僕が手にしたのは「妙に鋭利で不安定な、危険物めいたケース」だった。実用性ゼロ。僕は苦笑いして、机の上に置いたそれを眺めた。


そうして百均へ行き、無難なスクリュー式ケースを手に取る。数百円で買えるそれは、安全で、丈夫で、しかも見た目も悪くない。最初からこうしておけばよかったのだ。


だが、不思議なことに後悔はなかった。自分で作ってみなければ、この「市販品のありがたさ」も、アルミ缶の予想外の強情さも、知ることはなかっただろう。失敗は、実験の副産物である。


僕はそう自分に言い聞かせながら、ダッシュボードの上のアルミ缶ケースもどきを手に取り、自販機のアルミ回収箱にそっと落とした。カラン、と軽い音がした。


ーーー

あとがき


アルミ缶を削って得たのは、実用性ゼロの危なっかしいケースだった。だが、この「無駄な努力」こそ僕の実験記の本質かもしれない。市販品のありがたみは、作ってみて初めてわかる。――それは炭酸パウチの教訓と同じだった。

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