高校生の方の作品が好きで、積極的に読ませていただいております。
この作品、星がついていないんです。それどころか誰も読んでいないんです。
すごいのに。
どうして誰も読まないんだろうって位。
簡単に説明しようと思いましたが、ちょっと長くなるかもです。思いが溢れて。
レビューなので、論理的に作品解説としてご説明させていただきますね。
これは、一言で言うなら、退廃と静寂が同居する独特な世界観が大きな魅力の作品です。
この物語の中の世界は、どこか荒廃していながらも、この作者の筆の力によって、人の営みや優しさが丁寧に描かれていますので、間違いなく読む者を惹きつける、そのような力があります。
印象的な場面はものすごくたくさんあるのですが、個人的にとても印象的に感じたのは、街の描写や建物、空気感の緻密さです。
もちろん、人間の設定や、感情の動きなどもすごく印象的なのですが、とにかくこの空気感が非常に印象的です。
ヌルが佇む空間は無機質でありながら、アインスの登場によって徐々に温度を帯びていく、その変化が風景描写にも繊細に表れています。まるで温度が可視化して見えるようです。
また、「感情を持たない存在が暮らす世界」という設定はSF的でありながら、人間味を感じさせる要素が随所にちりばめられており、非現実的なはずの舞台が不思議とリアルに感じられました。
世界そのものがキャラクターの心情と連動して変化していく構造は非常に巧妙です。
高校生ですよね?
驚かされました。
カクヨム甲子園、このようにびっくりする作品が、潜んでいたりします。
もしかしたらこれは宝探しなのかもしれません。