十一年ぶりの赤い星
青木晶
第1話
自習室をでたのは6時半。校門から出れば夏とは言え、空は紫と橙のグラデーションになっていた。そのきれいさに目を奪われた直後じっとりした風が吹いた。ビューと耳元で風が鳴る。どうやら自習室に籠もっていた分、聴覚が過敏になっているようだ。バス停に向かって歩く。レンガ造りの道は干からびたミミズが原形を留めないほど小さくなって落ちていた。それに顔を顰めて踏まないように歩く。時折生ぬるい風が吹き、一層ミミズの生々しさを際立てた。早く通り過ぎたいと思ったとき、一際大きな風が吹いた。ビューと耳元で風が声を上げる。舞い上がった砂を口にしないよう、咄嗟に口を閉じた。鳴り終わらない風に苛立っていると、大きくなる風に隠されたように何かが落ちた音がした。カラン、間の抜けた音だ。あんなに苦しかった苛立ちが凪いだ。風の音がやんだあと、ソっと目を開く。音がした方をみると、サッカーボールくらいの赤い球体が落ちていた。缶のようなものが落ちていると思ったが見るからに缶ではない。どちらかというと 精巧な プラモデルに近い 。好奇心のままに それに近づいて見てみる。 つるりとした表面はメッキでも貼ってあるのか、 ピカピカで見る限りでは 傷一つついていない。 落ちたのはこれじゃなかったのかもしれないと周囲を見回した時その赤い球体がゴロンと動いた。一見 重力に従って 赤いボールは転がっていくだけだ。 しかし私が見た時には ピタリと制止していたのだ。 しかも 見るからに 用途がわからない。こんな不思議なものを初めて見たと胸が踊って 、誰かのものかもしれないという考えもわいてこず 世紀の大発見をしたような気持ちで その物体を持ち上げた。アルミでできていると思っていた分 、金属 だから重いと気合を入れて持ち上げてみる 。「うわ!」 あまりの軽さに驚いて尻餅をつきそうになった。確認するために上下に動かしてみるがどうやっても缶と同じくらい 軽い 。信じられない気持ちで上下させて興奮している と誰かの声が聞こえた動物の唸り声と違うが人間の言葉とは違う 怒りを含んだ声だ。これは 誰かのものかもしれないとやっと思い立って謝罪しようと 持ち主を探す。しかし周りには人っこ一人いなかった。興奮も冷め 薄気味悪さに体を硬くしていると手の中でびくりと何かが震えた 。小さく 悲鳴をあげて落としそうになる 。落とさなかったのは 人のものかもしれないという道徳心と さっきの興奮の燃えカスのおかげだった 。怖い ……。そう思ってもそれを道に 置こうとは思わず、じっとその球体の何かをじっと見つめた 。よく聞けば この球体から小さく言葉が聞こえる。聞いたこともない 言語に怖さとともに 星のきれいさに見せられた時のようなトキメキを抱く。 びっくり箱が開く光景が浮かんだ時 目の前の球体に野球ボールのような模様が浮かび上がる。 声も出せずに固まる 私を気にかけることもなく 模様が浮かび上がった部分が消えた 。脳のキャパシティを超え、呆然としているとその穴から紫の何かが顔を出した。
「いやー!」私はあまりの衝撃にその球体を放り出した。心臓がうさぎのように飛び跳ねている。ハァハァと荒く息を吸う 。何あれ? 紫の生物 なんて日本にいるの ? というか今まで見てきた生物 ――――魚や 鶏や 植物にも全く似ていなかった。 びっくり箱 だったものが今や パンドラボックスのように変わってしまいどうしようと 冷や汗を流しているとふと気づいた 。さすがにあんな小さな生物を放り出すのはダメなんじゃないか? あの小ささ じゃ 9階建てから人を落としてるようなもの なんじゃないか。
そこまで考えてみたことない生物の恐怖 より それを殺してしまったかもしれない 恐怖が上回った。
「ど、ど、どうしよう……」
キョロキョロ と周りを見ますと私から逃げるようにその赤い球体が ボーリング玉のように地面を滑っている 。あの様子なら死んでいないはず ……それはそうと 逃げられるのは何と言うか。落としちゃった私が悪いんだけど も……。ずっとその転がる様を見ていると その球体がビシリと固まった 。何かと 首を伸ばしてみると目の前にミミズの死骸があった 。しかも 半分だけは 干からび もう半分は苦しみでの立ち回っている。生理的嫌悪感と同情心で目をそらしたくなった 。しかし球は一切動かない。 早く動いてくれないかと思うも球が立ち止まるせいで視界にはミミズが蠢いている。空は橙から紺色に変わり視界は悪い 。薄暗い赤 がコロリと1回転がってまた固まる 。見る分には何も変わっていない。しかし、 私にはこっちを見て何かを訴えかけてるように見えた。視界が暗いせいで地面もよく見えない。 もし ミミズの死骸を踏んでも気づけないだろう。 ボーリング球に ぽっかりと穴が開く。 暗闇から出てきたのは先ほどと同じ生物だった。かろうじて 紫とわかるそれは宇宙服のような姿をしていた。 丸い 紫の頭が直接 寸胴な体に乗っている2本ある腕の6本 ついている指の1本がミミズを指さした。 もうミミズは真っ黒く、動いていない。それを知ってか知らずが それは6本の指で何かを掴む 素振りを見せて 頭の上まで腕を持ち上げると上下逆さまにして見せた。「……何かかけろってこと?」 それほ小さく頷く。 鞄の中には 飲みかけのお茶が入っている。 もう帰る時点で喉は乾いていないならいいかと鞄からお茶のペットボトルを取り出した。 できないだろうなと思いつつ ミミズにそれが水をかけるかと聞けば 残念そうに首を横に振った。 軽くそう、と言って ペットボトルを開けて ミミズの死んでるか死んでいないかの体にかける。紫の それには飛ばないように小さく、ミミズが痛くないようにできるだけ 低く 傾けるのはゆっくりと。 黒い塊がピクンと一瞬 大きく動いた 。肩を跳ねさせる私とは対照的に 紫の それはおおっ! と いうように 興奮気味に体を揺らす。 ちょろちょろ と残りのお茶を全てかけたがミミズ―― 黒い塊は二度と動かなかった 。沈黙が流れる。空は紺色になって球の輪郭は 曖昧でミミズは 黒ずんだ ガムのように見える。紫の彼からしても私の輪郭をおぼろげ だろう。帰っていいかな ? だけどさすがにこのよくわからない彼を置いていくこは良くないかな?
暗い中彼の動向を探ってみても 動く気配はない。 動いてよ!! それは一切動かない。空では 星が慰めるように輝いている。
「……家くる?」 動かないだろうと高をくくって、免罪符として聞いてみる 。もちろん 連れ帰る気もないし 動かないだろう。
そうやって気まずさから視界の端に紫の彼を添えて頷かれない未来を思い描いて、もう今日のことを忘れよう そうやって遠い目をしていると紫の彼が動く気配がした 。
ゆっくりと私の方に目を向けコクリ と頷く 。「……え? くるの?」こくりと 彼は 頷くとお前が言ったんだろうというように腕を組み肩を怒らせた。
「うち、狭いよ?」 彼は何も言わない。ただ空気が重苦しい。
「本当に来るの?」
彼は大きく まるで赤べこのように首を振った。 さっき の発言を後悔しても言ったことに変わりはない 。私は しゃがんで彼を 赤い球体ごと持ち上げた。 体を揺らしてから危ないことを理解したようで、穴に上半身も突っ込み 野球ボール大の穴も閉じる 。ほっとしてその球体を 肩掛けカバーの空いてるスペースに突っ込んだ。プリントがクシャッと音を立てて それが進路表ではないことを願った。校門から出ると目の前の横断歩道を渡ってバス停を目指す。 田舎だけあって空が広い 。
いつものように星を眺めていると その 星のうちの1つがキラリと輝いた 私は信じられない気持ちに目をこす るとその星は消えていた。
「勉強のし過ぎかなぁ……」口に出してみると 我ながら 的外れで恥ずかしい。ごまかすように 肩掛けカバンに向かって「ねえ、どう思う?」言ってみても 案の定 返答はなかった。 いつもと変わりばえなくバスに乗り込むと乗客は私1人しかいなかった。 一番後ろの席で窓が見えるようにとはしっこをキュッと詰めて座る。 彼もプリントも苦しいだろうと思って球体を鞄から出して膝の上に乗せた。バスが1分ほど その場で停車したかと思うと何百回も聞いた 声で「扉が閉まります」 と言うと、プシュッと扉が閉じた。エンジンがかかっ……と腹に響く音を立てて走る準備をする。窓を見ていると体に衝撃が走り車掌から覗く景色は 移り変わり始めた。くらいせいで 外を見ていても楽しくない。田んぼのシルエットが永遠と続き たまに街灯が蛾を暖かく照らしている。変わり映えしないな……とため息をつきかけて膝の上の存在を思い出した 。「ねえねえ、君はなんなの?」小さく 問いかけても返事はない 。未知の存在があっても日常は変化しない 。私は喉元のため息を押し出して再度 車窓から外を眺めた。とうとう街灯もなくなって太陽が存在を消したらしい、外は真っ暗だ。 誰がいるか どこに向かっているのか まるで自分の将来を見ているようで急いで目をそらした。家に着いて ただいま と声に出す もちろん返事はない 。一人暮らし だから当たり前ではあるり 今の時間 多分7時半はぁ、と ため息をつこうとした時 腕の中の物体がブルブルと震え 私も合わせて 震えた。「 何 ? どうしたの」 慌てて腕の中に抱えた物体を見れば 紫の彼が顔を出している。 驚いて物体を投げかけて腕を突き出したところで失態に気づいて抱え直す。 紫の彼は「危ない、危ない」と こぼす 私にアウトだったろう というように手を大きく振って憤慨する 。そして私を真似するように両手を突き出してもう一度憤慨を示した。軽く 「ごめん、ごめん」と頭を下げれば反省していないだろうというように6本中2本の指でビシッと刺される。「 裏山 行きたい?亅 私が聞けば彼はその勢いが嘘のように 手を擦り合わせた。
憤慨する彼が腕を組んで顔を背ける。 家で誰かと会話することに少しのくすぐったさに変な生き物を拾った 後悔は薄まっていて、 私は少し笑ってしまった 。
洗面台の電気をつけて 手のひらを濡らしてノズルを押し手に乗っける 。そうすると洗面台の鏡で紫の彼が物珍しそうにこっちを見ていることに気づいた。「君もやるー?」 彼は固まった後 恐る恐る というように小さく頷く。 私は急いで手のひらの泡を伸ばして手首 指の間 ……と洗って 手を拭いた。紫の彼においでと 手を伸ばすが来る気配はない。違ったのかと思ったが 彼は小さく うなずいて 私の手のひらの上に飛び乗った。上半身が宇宙服のようだと言ったが 前言撤回。 下も宇宙服のように ずんぐりしている。こんな小さくて多分 地球の生き物じゃないな と再確認した 。洗面台に戻って彼に手を伸ばしてという とピーンと 元気よく伸ばされる。できるところまで 蛇口を絞って水の量を減らして彼の 豆粒の先っちょくらいの手のひらを濡らしポンプをちょんと 軽く押して泡をのせ。る彼は自身の手のひらに顔を寄せると空気を 吸うような音を出して驚いたように体を揺らした。 「いい匂いでしょ?」コクンと頷いて彼は手のひらにまるでハンドクリームのようになじませていく。 多分 用途、勘違いしているなと笑ってしまいそうになった。彼に少し待っててとお願いして 洗面所から出た 。手探りで壁のスイッチを押して電気をつける。 眩しさに目の前がチカチカしながらお目当ての品を手に取る。スカートを 脱いで シャツのボタンを外して、気の抜けた声を上げる。 使い古したスウェット を頭から被れば 柔軟剤と家の香りが鼻腔を掠める。 私は幸せのため息をついた。「 お待たせー」 閉めていた 洗面所の扉を開けば 赤い球体がいない。 慌てて 見回せば 床に 無操作に転がっている「 大丈夫!?」 汗から解放されたがそれを打ち消すように 全身から冷や汗が噴き出す。 ゾワッとした感覚につき動かされて、その球体を持ち上げる。 返事はない。 上下に降って何度も 問いかける。嫌がらせるようにどれだけ振っても返事はない。さっきの ミミズが目に浮かび嫌な予感 に視界が暗くなった…… 一部だけ。よく見れば赤い たまには穴が開いていた。私からは見えていなかっただけで元から開いていたのだ 。冷静な気持ちで見回せば 洗濯物の中に1つだけ 絵の具の原液のように濃い紫 があった 。頭が刺さって動けないのだろう。 刺さっている 足がパタパタ 動いている。私は暑くなった目が凍ったことを自覚しながら その2本の足をまとめてもち、大根のようにスポンと 引き抜いた。「私待っててって言ったよね 」自室に彼を大根よろしく農家に見立てて 連れ帰って球体を机に置くと鍵を閉めると同時に顔を近づける。 彼の米粒のように小さい目がキョロキョロ と泳いだ。女子校生として小さい彼にかわいそうなんて思うが私の方がかわいそうだ 。彼が勝手に動いたせいで寿命が 何年 縮んだか……。
なんとか目を逸らそうとして、上下逆さまでは下を向いたところで私の頭頂部を見つめることに気づいて ハッとしたりしながら最後まで目線を合わせなかった 。
それまでに 頭が冷えて「何かあったの?」 思い立ったことを聞けば彼は小さく こくりとうなずく。 やっとあった目は怒られないかと少し恐れの色をしていた 。
たまらなくなって次は私が目をそらした。そうだ 彼にとって私は巨人みたいなものじゃないか、怖かったに決まってるだろう。
恥ずかしさと 罪悪感となぜか わいた 悔しさがぐるぐると腹を回る。 小さく 何か音がする。感情は本当に這い ずってにいるのかと 驚いたが聞いたことのある音だ。パッと見れば勉強机で彼が立って心配そうに私を見つめていた 。その小さな 口が動いて その音が鳴っている――彼の声だったのだ。 心配してくれてるのだろうか 彼がずっと話しかけてくれる。だけど「ごめんわかんないや」呟いた言葉が少し震えた 。辞めればいいのに、今まで押し込めてきた 疑問が口をつく 。
「君は何者なの? その 紫の体は何? どうして私の言ってることがわかるの ――君 宇宙人なの ?亅
忘れようとしたパンドラボックスが開く。 忘れかけていた恐怖に体が震えた。彼をソっと伺うか何も言わない。彼が動いた瞬間 体が大げさにはねる。彼はそのまま 球体の穴に消えていった。体から力が抜け布団に倒れ込む 。暗い 宇宙に吸い込まれるように意識が解けていった。
「起きろ! 起きろ!」 布団で眠っていた私 を起こしたのは男の人の声だった。 とっさに枕を投げて体を起こす。目覚ましを手に取った私 は「グエッ」と潰されてカエルのような声に振り上げた手 下ろした。驚いて 冷めた 頭で考えれば泥棒 がわざわざ私を起こすだろうか? 危害を加えるならもっと近くに聞こえるはずだ 。腕も足も縛ってないし。嫌な予感がして枕が転がった床を見つめると彼の昨日も聞いた唸り声がした。。 枕の下からはクラスメイトの男子がいつも言うような暴言が聞こえてくる 。私は嫌な予感を感じつつそれを聞いて 私はもう一度寝たくなった。 1夜で言葉を喋れるようになったり、なぜか 声も 口調も男子だったり 意味がわからない。私の中で彼は宇宙人なのは確定していた。
「つまり、生きていた星を侵略されて逃げてるところで宇宙船が壊れて落ちてきたと」
「そういうことだ!!」
息を飲んで私は彼をじっと見た。能天気そうな彼とは裏腹言っていることは重大だ。逃げているってことはその宇宙人は近くにくるんじゃないか。匿っていたら……関わっていたらいつか ひどい目に遭うんじゃないかという不安と見捨てるわけにはいかないという情がせめぎ合う。息苦しくなってため息を代わりについた。 枕によじ登った彼は私の目を見ると大きくうなずく 。その様子に彼に冷たくするのは 憚られて 小さく 了承した。
授業を受けながら私は窓から外を見上げた。空は どこまでも住み渡っていて 星も見えない。本当に侵略なんてあったんだろうか。
綺麗な星も近くで見たら地球と同じなんだろうか ? 戦争と飢餓で誰かを 苦しんでるんだろうか?
私は放課後になって 地学室を訪れた。メガネをかけた先生が 私に気づいて「 山田さん亅と声をあげる。「こんにちは先生。 ちょっと聞きたいことがあって 亅先生は特に気にした様子もなく話すように促す。「……もし宇宙人がいてそこは星同士争っているんです。 先生はどう思いますか ?」「どう……とは?」「キレイに見えても 地球と変わんないってして残念に思ったり…
とか」「あんまりないですね」 先生 は きっぱりとした口調で否定した。私はどうして か それに体がカッとなって「どうしてですか?」 と半ば先生を睨みつけていた。先生 は私の態度で困った顔をして 「だって僕はそれに惹かれたから」頭が真っ白になって言葉に詰まった 。否定したところ で私だって 星のキレイさに引かれて 科学を学んでるから。私だって彼には巻き込まれたくないと思った。私だって彼と出会わなければ 先生みたいに思ってた。 気持ち悪くなって 教室を出た。家に帰って自室に行けば 赤い球体が真っ二つになっている 。慌てて駆け寄れば「近づくな!!亅と、 とげとげしい 声がかかる。声の主はよくわからない彼と同じ、小さいペンチやドライバーを持っていた。 「何してるの?亅「修理」私は ため息をついた 。 それ以上何も言わずに言われた方を運転席とモニターがついてる方を ガチャガチャ いじる。 私はただの高校生なので何をしてるのかわからない。……ガチャガチャガチャ 金属 が擦れる。私は鞄から進路表を取り出して、彼が使ってないスペースで消していく 。思ったよりも強く 書いていたらしい 。まだ消えない 。何度も 擦っているとビリッと嫌な音がした。「どうしたんだ?亅彼が聞いてくる。なんて言えばいいんだろう 。言われてみたら 私は何でこんなに怒っているんだろう。 わかんなくて彼を見つめると彼は黒い瞳で見つめ返した 。それに 胸が詰まって そのしこりが 喉元を通って口からするりと出ていた「私さ、星を学びたいの」私はしゃくりあげて、泣き声の代わりにぐちゃぐちゃの言葉が出てくる。
「だけど地球と同じ 。どこかでは侵略されていて どこで誰かが殺されてる 。それを綺麗って言ってた自分が嫌になった の……」
「仲いい人がそうなった時だけ 傷つく 自分がいやなの……!!」 大声で叫ぶと呼吸があまりに苦しくて喉がひゅうひゅうと言った。
「別に気にしなくていいだろ 」
彼がポツリと言った 。その声はなぜか グラグラした視界 さすように はっきりとしている。
「なんで!?」
嗚咽をこぼしながら聞くと彼はこっちを向いた 。その小さい瞳がゆるく 弧をを描く 。私の言葉をしっかり受け止めた目だった 。
「俺だってさ 地球人と話すことなんて考えたことないから話し方の練習もしてなかった」
「本当は怖いのに俺を匿ってることも真剣に悩んでくれてることもわかってる」
「悩んでくれて俺は嬉しい」彼が言った。
私は返事もできずに 泣いた。自分への嫌悪をが消えてくる 。私は息を吸って、進路表書き直した。彼に見せると優しく笑う。
「私、星が好き」
あれから1週間経った どうやら彼の宇宙船は直ったらしい。しかし まだ地球にいるようだ。 口には出さないけど彼がいる生活も悪くない 。そうやって 窓の外を眺めていた時 青い球体が目に止まった。 つるつるとした質感はそっくりで彼のと色違いだ。 驚いて尻もちをつく。 嫌な予感がした。背中に冷たい 汗が流れた
慌てて 青い球体のことを家に帰って話す 。彼は今まで 米粒ほどだった 目を大きく見開いた 。汗をかく彼に嫌な予感だけが募っていく。「あれは君の仲間 ……?」そう言っても違うだろうなというのはわかった 。彼は沈黙すると言った。「そいつらは俺を狙ってる」 私は頭の中が真っ白になった。私には彼を守る手立てがない 。宇宙船だってないし 、ただの女子高生だ ……ただ星が好きなだけ……眺めるだけの女子高生だ。「逃げよう !」私はとっさにそう言った。しかし彼は何も答えない 。焦れる私は彼を睨みつけた。 しかし彼は私のにらみを受け止めきっぱりとした声で言った 、「それはできない……」「 なんで!?」声を上げる 私に彼は言った 、すごい優しい声で 。「……もう俺は行かなきゃ 」彼はそう言って 私にお願いした 、今学校に連れて行ってくれと。拒否しようと思ったけれど 彼の願いを 、私の夢を肯定してくれた人を拒否することはできなかった。
学校に着くと彼は慌てたように言った。「 早く! これから手を離して逃げろ!!」
そう言われて、彼の宇宙船を持つ手が怒りで震えた。 「ふざけないで!!」怒鳴りつけると彼も どっちが と どなった。息を荒げながら私は否定して欲しくて聞いた。
「これからどうするの……?」 彼は沈黙して目を細めた。「……また逢おう」私はうんと言って 手を離した。
彼は静かに飛び立つものと思っていた。
しかし 赤い球体は突如 ピーと 甲高い音を立てた。 そんな音立てたら……! 私が 焦っでも時は巻き戻らない。 青い宇宙船がたくさん現れた。彼の球体が飛び立っていく、まるで私たちから 青い宇宙船を遠ざけるように。
私は 同僚と話していた。彼らにとって私は少し不思議 らしい。宇宙も星もそこまで惹かれていないし 、どこが違うところを見ているらしい。
その心 当たりに苦笑して私は宇宙服を着て外に出た。たくさんの星々がキラキラしている。そうやって遠い星を見ていた時に近いところにその遠い星があるのに気づいた。
銀色の星だ 、表面がライオンに引っかかれたようにボロボロで所々赤い光が漏れ出ている。
私はそれをじっと見つめた。何処か見たことあるそれを私は見続けた。
赤い球体が脳内でキラリと光った。
その正体に気づいて私は必死に手を伸ばしてそれを掴んだ。 傷だらけでボロボロであの甲高い音はもう聞こえない。
泣きながら抱きしめた。
十一年ぶりの赤い星 青木晶 @sokoniaihaaru
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