神は見ていた
鈴木ジロー
第1話
俺は見たんだ。
昨日の昼頃、俺は変哲のないその道を歩いていた。
ふと空を見上げるとそれは見ていた。違う、見ていたというより、覗き込んでいた。
少し匂う汚れた浮浪者らしき男が言う。
彼は昨日の夕暮れ頃、近隣住民からの通報で拘束されたのだ。
それが何を言うか、聞いてもないことを語り出したのである。
空といったら空色に雲の白だろ?だけどな、それが目に入ってきた時にはもう、少し茶色がかった黒とそれを囲む白だけ、それだけだったんだ。
「それがあなたの言う神の目でしたっけ?」
調書を取る右手のペンを回しながら、返答がわかる問いを聞く。
浮浪者は興奮したまま、話を止める気配はない。
彼の話にうんざりしながら、今日も取調べは進展がない。
彼が拘束されている理由は昨日現場に向かった警官から聞いているのだが、男は昨日現場で全裸で奇声を出していたとのことだ。
おおよそ見て大麻だか違法薬物だろう。と話を片付けたいのだが、一向に話をやめない。
「あの目は俺に気づくなりギョロっとこっち向いてきてよ、訳もわからず俺は驚くより前にとてつもない開放感と幸福感に包まれて、気づけば捕まってたんだよ。」
こんな奴の話なんか聞く気にならない。
俺としてはこいつの話を聞かなくて済むならば釈放でも禁固刑でも構わないし、とっととこの大きすぎる声と最低昨日から風呂に入っていない男の匂いをもう嗅ぎたくないのだ。
麻薬検査や飲酒検査には引っかかってないのにこの興奮、こいつ頭イカれてるんじゃないのか?
取調べの時間制限が来る、胸を撫で下ろすも男はまだ黙っていない。いい加減どうにかして欲しい。
今日は自分にご褒美の代わりとして好きなヒレカツを買って帰ろう。そう決意した。
神は見ていた 鈴木ジロー @Ham_fighters
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