おばさんの捕縛魔法、遠くからでもガッチリ! ~53歳手芸教室の先生、異世界で縛りプレイ無双!?~

@nekorovin2501

第1話:トラックじゃなくて、毛糸玉に巻き込まれて異世界へ

高橋陽子、53歳。独身、バツイチ。娘はもう嫁いで孫までいるけど、毎日手芸教室で生徒たちに編み物や裁縫を教えるのが生きがいだ。朝は腰痛に悩まされながらコーヒーを淹れ、夜はテレビのドラマを見ながら毛糸を編む。地味だけど、幸せな日常。

「ああ、今日も生徒のあの子、糸を絡めて大パニックだったわね。まぁ、若い子はこれだから。ゆっくり解きほぐせばいいのよ」

陽子はそうつぶやきながら、手芸店から帰る道を歩いていた。買い物の袋には、新しい毛糸の玉がいっぱい。赤、青、緑……どれも可愛い。家に帰ったら、孫へのマフラーを編もうかな、なんて考えていると――。

突然、視界がぐるぐる回った。足元がふわっと浮き、まるで巨大な毛糸玉に巻き込まれたような感覚。陽子は目を丸くした。

「え、なにこれ? 老眼のせい? いや、待って、毛糸が……光ってる!?」

次の瞬間、陽子は柔らかい草の上にドサッと落ちていた。周りは森。木々がそびえ立ち、遠くに城みたいな建物が見える。空は青く、鳥……いや、なんか翼が生えた変な生き物が飛んでる。

「ここ、どこ? 夢? いや、腰が痛いから現実よね……。あれ、袋は? 毛糸は無事?」

陽子は慌てて立ち上がり、袋をチェック。毛糸は無事だったけど、スマホは圏外。というか、電波すら入らない。パニックになりかけたその時、ガサガサと音がして、3人の若者が現れた。

一人は剣を腰に差した金髪のイケメン少年、18歳くらい。もう一人は弓を持ったエルフっぽい美女、見た目20歳だけどなんか老成した雰囲気。最後の子は小柄な魔法使いの少女、15歳くらい。

「おい、見ろよ。変な服のババアが落ちてるぜ」

少年が指さして笑う。陽子はムッとしたけど、笑顔で応じた。

「ババアじゃないわよ。おばさんで結構。あなたたち、誰? ここはどこ?」

少年は鼻で笑った。「俺はリク、冒険者だ。この森はルナリア大陸の辺境。魔王軍の脅威が迫ってる危険地帯だぜ。お前、転移者か? 最近増えてるよな、異世界から来る奴」

エルフの美女が冷静に言った。「私はシルファ。年齢? 人間基準で200歳だけど、気にしないで。転移者なら、ステータスを確認しなさい。心の中で『ステータスオープン』って唱えてみて」

陽子は半信半疑で試した。すると、頭の中に文字が浮かぶ。

【名前:高橋陽子

年齢:53

職業:手芸教室の先生(異世界適応中)

スキル:捕縛魔法(Lv1)

特殊能力:遠距離捕縛(最大10km)、手芸の達人(魔法糸生成)

弱点:攻撃魔法不可、直接戦闘力ゼロ】

「捕縛魔法? 何よこれ、縛るだけ? 倒せないの? しかも遠くから……。まぁ、看護師の友達が言ってた治癒魔法の変な使い方みたいね。間違った使い方でなんとかなるかも」

陽子はつぶやいた。昔、友達の看護師が「包帯で敵を縛ったらどう?」なんて冗談を言ってたのを思い出す。魔法使いの少女、ミアが目を輝かせた。

「おばさん、転移者特典のスキルだよ! 私たちパーティーに入らない? 今、魔王軍の斥候が近くにいて、ピンチなんだ」

リクが鼻を鳴らす。「ババアに何ができるよ。攻撃できないスキルなんて役立たずだろ」

陽子はニッコリ。「まぁ、若い子はそう言うわよね。でも、試してみない? 私、昔から生徒のトラブルを『縛り』で解決してきたのよ。糸で絡まったのを解くのも、縛るのもお手の物」

そんなやり取りをしていると、突然空が暗くなった。巨大な影――ドラゴンだ! 魔王軍の斥候ドラゴンが森を焼き払おうと火を噴く。

「うわあああ! 逃げろ!」

リクたちが慌てて逃げようとするが、ドラゴンの火炎が迫る。陽子は冷静に、遠くのドラゴンを見つめた。老眼を気にしつつ、心の中で唱える。

「捕縛魔法、発動! 魔法の糸で翼を縫い合わせちゃえ!」

陽子の手から、光る糸が飛び出した。まるで手芸の針のように、ドラゴンの翼を遠くからチクチク縫い合わせる。ドラゴンは「ギャアアア!」と叫び、翼がくっついて墜落! 地面にドサッと落ち、動けなくなった。

「え、えええ!? ババア、何したんだよ!」

リクが目を丸くする。シルファが感心した。「遠距離から捕縛……しかも翼を縫うなんて、規格外の使い方ね。フリーレンの師匠みたいに、経験の深みが活きてるわ」

ミアが飛びついた。「おばさん、すごい! これでドラゴン倒せないけど、縛ったから私たちがトドメ刺せるよ!」

陽子は腰をさすりながら笑った。「まぁ、倒すのは若い子に任せなさい。私、サポート専門よ。でも、腰が痛いわ……。次はもっと楽に縛れる方法を考えないと」

ドラゴンを倒したパーティーは、陽子を正式に迎え入れた。リクは渋々認めた。「おばさん、悪くなかったぜ……いや、陽子さんだな」

こうして、陽子の異世界ライフが始まった。捕縛魔法で敵を遠くからガッチリ縛り、仲間を支える「おばちゃん無双」。でも、陽子は思う。

「孫のマフラー、編み終わるまでには帰りたいわね。でも、まぁ、なんとかなるでしょ」

――つづく。

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