第2話:占術ギルドの試練とチートの片鱗
「え、ちょっと待って! なんで俺がこんな大舞台に!?」
星見悠斗は、目の前に広がる巨大な円形劇場のような建物を見上げて、思わず叫んだ。石造りの荘厳な建物には、星や月を模した装飾が施され、まるでファンタジーRPGの重要施設そのもの。看板にはでっかく『フォルトゥーナ占術ギルド本部』と刻まれている。
「悠斗、落ち着いて! ここに来るって決めたのはあなた自身よ!」
隣で銀髪を揺らすリリア・フォーチュナが、ちょっと呆れた顔で言う。彼女の青い瞳には、どこか期待の光が宿っている。昨日、市場通りで盗賊団からリリアを救った悠斗は、彼女の提案でこのギルドにやってきたのだ。なんでも、リリアの家に伝わる「星詠みの血」の謎を解くには、占術ギルドの力を借りる必要があるらしい。
「いや、確かに俺、運命を変えるとかカッコつけて言っちゃったけどさ! こんなガチな場所、俺のメンタル持たねえよ! 俺、ただの占い師アシスタントだぞ!?」
悠斗は頭を抱えつつ、ポケットのタロットデッキを握りしめた。このボロボロのカードこそ、彼のチート能力『絶対予見アブソリュート・フォアサイト』の鍵。昨日、盗賊を出し抜いたあの感覚――未来を読み、運命を書き換える力――は、確かに本物だった。
「悠斗の占い、すごかったじゃない! あんな正確な予見、ギルドの星詠みでも滅多にできないわ。絶対、認められるよ!」
リリアの応援に、悠斗は「う、うっす……」と気弱に頷いた。内心、(なろう主人公なら、ここで無双の第一歩を踏み出すはずだよな! よし、気合入れていくぞ!)と自分を奮い立たせる。
占術ギルドの試練
二人がギルドの受付に足を踏み入れると、豪華なロビーが広がっていた。天井には星座のモザイク画、壁には水晶玉やタロットカードのレリーフ。ローブ姿の星詠みたちが忙しそうに書類や魔道具を持ち歩いている。
受付の女性――キリッとした眼鏡っ娘で、星型の髪飾りがチャームポイント――が二人を見やる。
「ようこそ、フォルトゥーナ占術ギルドへ。新規登録の方? それとも依頼?」
「えっと、俺、星見悠斗。リリアの紹介で……その、星詠みとして登録したいっていうか……」
悠斗がモジモジしていると、リリアが前に出て堂々と告げる。
「彼はすごい星詠みなの! 昨日、市場で盗賊団を一瞬で無力化したんだから!」
「ほほう、それは興味深いね」
低い声が響き、受付の奥からローブを翻した壮年の男が現れた。白髪交じりの髪に、鋭い目つき。手に持った杖には星のオーブが輝いている。男は悠斗を値踏みするように見つめた。
「私はギルド長のゼノ・ステラリス。君がその『すごい星詠み』かね?」
「う、うわっ! いきなりボスキャラ登場!? 俺、星見悠斗です、よろしく!」
悠斗のオタク口調に、ゼノは一瞬眉をひそめたが、すぐにニヤリと笑った。
「面白い若者だ。だが、フォルトゥーナの星詠みは、運命を背負う者たちだ。口先だけでは認められん。試練を受けてもらうぞ」
「試練!? え、ちょっと、聞いてないんですけど!?」
リリアが慌ててフォローに入る。
「ゼノ様、悠斗は本物です! 彼の予見は、まるで運命を直接見ているみたいで……」
「ふむ、リリア・フォーチュナ。君の家は星詠みの名門だったな。だが、没落した今、君の言葉だけでは信用できん。試練で証明してみせなさい」
ゼノの言葉に、リリアは唇を噛んだ。悠斗は彼女の悔しそうな表情を見て、(くそっ、なろう主人公ならここで一発かますはずだろ!)と決意を固める。
「よし、試練、受けてやる! どんな内容だ!?」
ゼノは満足げに頷き、杖を一振り。すると、ロビーの中央に光の円陣が現れ、巨大な水晶玉が浮かび上がった。
「試練は簡単だ。市場通りの次の事件を予見し、その解決策を示せ。失敗すれば、ギルドへの登録は認めん。だが、成功すれば……星詠みとしての第一歩を保証しよう」
絶対予見、発動!
悠斗は水晶玉の前に立ち、タロットデッキを取り出した。ギルド長や周囲の星詠みたちが、好奇心と疑いの入り混じった目で彼を見つめる。リリアだけは、祈るように手を握りしめていた。
(よし、落ち着け、俺。『絶対予見』なら、どんな未来も見えるはず!)
悠斗は深呼吸し、タロットをシャッフル。1枚引き、『運命の輪』のカードが現れた。瞬間、頭の中に光のホログラムが展開する。
【絶対予見:発動】
対象:市場通り
予見内容:今夜、市場通りで魔獣の群れが暴走。原因は、闇星会の魔術師が仕掛けた呪術トラップ。
介入可能:トラップを解除するか? 魔獣を鎮めるか?(Yes / No)
「うおっ、マジか! 魔獣!? 闇星会!? 昨日から名前出てくるな、そいつら!」
悠斗の呟きに、ゼノが目を細めた。
「何か見えたか? 言ってみなさい」
「えっと、今夜、市場通りに魔獣が襲ってくる。原因は闇星会の呪術トラップで……」
ロビーがざわついた。星詠みの一人が叫ぶ。
「闇星会だと!? あの禁断の占術を使う連中が!?」
「ふむ、具体的だな。だが、予見だけでは星詠みとは言えん。どう解決する?」
悠斗は『トラップを解除する』を選択。すると、頭に詳細なビジョンが流れ込む――市場の地下に隠された呪術陣の位置、その解除方法、さらには魔獣の動きを予測した最適なルートまで。
「よし、こうする! 市場の地下にある呪術陣を壊せば、魔獣は暴走しない! 場所は……中央広場の井戸の下、3メートル掘ったとこ!」
ゼノの目が一瞬驚きに揺れた。
「ほう、そんなピンポイントな予見……。よかろう、ギルドの者を派遣して確認させよう。だが、君自身も行くんだ。星詠みは自らの予見に責任を持つ」
「え、俺も!? 戦闘力ゼロなのに!?」
リリアがすかさず手を挙げた。
「私も行く! 悠斗を一人にはさせない!」
「リリア、惚れるぜ……って、じゃなくて、頼む!」
市場での初バトル
夜の市場通り。昼間の賑わいはなく、静まり返った空気が不気味だ。悠斗とリリア、そしてギルドから派遣された屈強な戦士・ガルド・アイアンソードが、井戸の前に立っていた。
ガルドは大剣を肩に担ぎ、ニヤリと笑う。
「お前、ほんとに占いで魔獣を止められるのか? 俺の運、最近クソ悪いんだよな」
「うっ、プレッシャーやめて! でも、俺の占いは100%当たるから、任せとけ!」
悠斗はタロットを握り、再度『絶対予見』を起動。呪術陣の正確な位置と、解除に必要な魔術の詠唱が頭に流れ込む。
「リリア、魔術使える? この詠唱、やってみて!」
リリアはペンダントを握り、頷いた。
「う、うん、やってみる! 星の加護よ、力を貸して……!」
彼女が詠唱を始めると、井戸の下から赤い光が漏れ出した。呪術陣だ。だが、その瞬間、地面が揺れ、ドスン!と重い足音が響く。魔獣――巨大な狼のような怪物が、闇から姿を現した!
「うわっ、来ちゃった!? 予見、ちょっと遅れた!?」
ガルドが大剣を構え、叫ぶ。
「占い坊主、なんとかしろ! 俺の運、頼んだぞ!」
悠斗は慌ててタロットを引く。『力』のカード。予見が更新される。
【絶対予見:緊急】
対象:魔獣
予見内容:魔獣は呪術陣の影響で暴走中。弱点は左後ろ脚。10秒後に隙を見せる。
介入可能:ガルドに攻撃を指示するか?(Yes / No)
「ガルド! 左後ろ脚を狙え! 10秒後、絶対隙ができる!」
「マジかよ! 信じるぞ、占い坊主!」
ガルドが魔獣に突っ込む。悠斗のカウントダウンに合わせ、10秒後、魔獣がちょうど体勢を崩した瞬間、ガルドの大剣が左後ろ脚に直撃! 魔獣は咆哮を上げ、動きが止まる。
その隙に、リリアが呪術陣の詠唱を完成。赤い光が消え、陣が解除された。魔獣は力を失い、逃げ出していく。
「や、やった……!」
悠斗は膝をつき、息を切らした。ガルドが大笑いしながら肩を叩く。
「お前、すげえな! ほんとに当たった! 俺の運、上がった気がするぜ!」
リリアも目を輝かせ、悠斗の手を握った。
「悠斗、すごい! あなた、ほんとに運命を変えたんだ!」
「へへ、そ、そうかな? まあ、なろう主人公っぽくやれたかな!」
ギルドの承認と新たな影
ギルド本部に戻ると、ゼノが悠斗たちを迎えた。
「見事だった、星見悠斗。市場の危機を未然に防いだ。君を正式に星詠みとして認めよう」
悠斗はガッツポーズ。リリアも笑顔で拍手する。だが、ゼノの表情が一瞬曇った。
「ただし、闇星会の動きが気になる。あの呪術陣は、彼らの仕業だ。リリア、君の『星詠みの血』も関係しているかもしれない」
リリアがペンダントを握りしめ、頷く。
「はい……。だからこそ、悠斗と一緒に、闇星会を止めたいんです」
悠斗はタロットを手に、ニヤリと笑った。
「よし、なら俺の『絶対予見』で、闇星会の野郎どもを全部出し抜いてやる!」
その時、タロットが再び熱を帯び、『死神』のカードが光った。悠斗の頭に新たな予見が流れ込む。
【絶対予見:警告】
対象:不明
予見内容:闇星会の刺客が、悠斗を狙い接近中。試練はまだ終わらない。
介入可能:刺客を迎え撃つか? 身を隠すか?(Yes / No)
「うおっ、またデカいトラブル!? なろう主人公、休む暇ねえ!」
悠斗の叫びに、リリアとガルドがキョトンとした顔で振り返る。星の輝く夜空の下、運命の歯車がさらに動き始めていた。
To be continued
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