蝉の視点と少年の成長、そして祖母との思い出を重ね合わせることで、「時の流れ」と「変化の受け入れ」を鮮やかに描き出した物語だと感じました。
前半の「夏休みの日記」的な描写はとても生き生きとしていて、祖母との日々の温かさが伝わり、作品的に効果的でした。
一方、後半では祖母の老いと記憶の喪失が描かれ、かつての明るい夏との対比が見事に明暗となっていました。
また、少年の「戻りたい」気持ちと、蝉視点による蝉の「進む」という本能的な生が交差することで、過去と未来のはざまで揺れる心が鮮やかに浮かび上がっているように思います。
成長とは痛みを伴いながらも希望を見つけることだと静かに語りかけてくれる作品、だと思いました。