転校生『まなみ』

 いつものようにイツメンのライブ好きのまなみと美術部のまなみ、陸上部投擲女子のまなみと話しているとライブ好きのまなみが口を開いた。


「今日さあ転校生来るんだって」

「マジ? どんな子かな。高身長高学歴高収入なイケメンだといいな」

「いや、学生なんだから高収入はないでしょ」

「わたし、可愛い子だったらいいなー」


やいのやいのしているうちに今日は32秒遅れでまなみ先生が入ってきた。


「えーと今日はみんなに紹介したい新しい友達がいる。入ってきてくれ」

「失礼しマス」


入ってきたのはまさかの外国人。いや少しアジアンぽさがある。もしかしてハーフ?


「自己紹介できるか?」

「ハイ。えーと私の名前、ファミリーネームはスミスで、マイネームは愛の海って書いて……」


この時みんな思った。

『どうせまなみやろな』と。


「『愛海ラブマリン』デース! 皆さんよろしくお願いしマス」


「いや、ラブマリンかい!」


お笑い芸人を目指しているまなみ(男)が思わずツッコんだ。


「なんだ、3番のまなみ。失礼だろう」


いやでも先生だって思ってたでしょ。だって目ガン開きして2度見してましたよね?


「というわけでスミスさんは外国に住んでいてお父様の転勤で日本に来たそうだ。日本語は喋れなくはないがまだ慣れないので特に英語得意な生徒含めみんなで支えてやって欲しい」

「「「はーい」」」


 休み時間になるとすぐさまラブマリンちゃんを取り囲んだ。


「ラブマリンちゃん髪の毛金髪サラサラなの羨ましい! あ私身長160のまなみね、よろしく!」

「私は薙刀部のまなみ。目が緑っぽくて綺麗ね」

「僕、数学学年1位のまなみっていいます。ラブマリンさん外国って言ってたけどどこの出身?」

「俺バスケ部のまなみだけど。ラブマリンちゃんって部活やってた? 俺は名前からわかる通りバスケ部ね」


質問攻めの中でラブマリンちゃんが言った。


「ワタシ、ラブマリンって呼ばれるの嫌デス。皆と同じなんとかのまなみって呼ばれたいデース」


 皆静かになった。


 移動教室の帰り道。話題はもちろん二つ名についてだ。


「───でだよ、どうする? あだ名」

「んー無難に転校生のまなみじゃだめ?」

「せっかく日本に来てそれはちょっと。それに別の子がまた転校してきたら考え直さなきゃだし」

「あ、じゃあチアやってたらしいからチア部のまなみ?」

「あーだめだめ7組にいるよ」

「じゃあ身長170のまなみは?」

「男子でいるくね?」

「なら女の子で身長170のまなみ」

「長い気がする。これ以上長い名前増やすのは……」


1人が提案しても別の人が反対する。堂々巡りで決まらなかったが、


「じゃあもう金髪のまなみがいいか、イギリス人のまなみがいいか自分で選んでもらおう」

「それでいいと思う」


 その時前を歩いていたラブマリンちゃんが何か落としたのに気づいた私は咄嗟に


「まなみちゃんこれ落としたよ!!」


 フロア中のまなみが振り返った。


「ひっ! ち、違くてあの転校生のそこのまなみちゃんです……」


あーあなんだ自分じゃないとわかると皆元の作業に戻っていった。改めてラブマリンちゃんを呼ぶ。


「拾ってくれてありがとうございマース」

「どういたしましてー」

「アノ、もしかしてさっき呼んだ名前は私のことデスカ?」

「へ?」

「とっても気に入りマシタ! ワタシ今日から転校生のまなみデース!」


 こうしてラブマリンもとい転校生のまなみに決まったのであった。



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