水の記憶

東郷未知夫

水の記憶

 私は海に横たわっています。

夜の冷たい水がとても心地よく馴染んできます。

  

 波に揺られながら、私の頬を照らす月影は,太陽とは違い私を受け入れてくれる。そう感じました。

 

 遥か魚類だった頃の記憶が、私の頭に駆け巡ります。指先の境界線がだんだん無くなって私は,液体に溶け込んでいくのを感じます。

 

 心地よい……。心地よい幸せな気分に満たされているのを感じます。


 私の意識は,水の中に溶けて月の光を食べてしまいました。


 月は、焼き菓子の様なほんのりした甘さです。

 

 私の意識は海に溶け込んで月と交じり、やがて生まれたままの姿で昇っていきます。

 

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水の記憶 東郷未知夫 @fox262626

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