第1話 誕生
「 目を覚まして下さいッ … グレイ様ッ! ! 」
朦朧とした意識の中で皆の、、、仲間達の必死に私を呼びかける声が微かに聞こえる。
…上手く息が出来ない。戦闘によってつけられた傷跡から魔力が流れる出る感覚がする。
私に"死"という終わりがあったのならば、、、この感覚がそうなのだろうか。そんな事を思いながら重たい瞼をゆっくりと閉じれば、最後の気力を振り絞って口を開け、
「 またいずれ会おう 」
その言葉だけを仲間達に言い残して、深く長い眠りについた。
エルダー×××××年
エーテルヴェールで起きた魔力災害により、1名が意識不明の重体。この災害による死者は確認できず、軽傷者は数千人に及ぶ。
この災害は過激派によるものとされており、魔力に耐えきれなかった者たちは皆姿形を残す事はなかった。
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約数万百年も昔の事。
エルダーという星の第3層、エーテルヴェールにある宮殿で誕生を祝う宴が催された。
我、レイヴン・ヴェール=グレイ・ニックスの誕生である。
我には両親がいない。
否、両親の様な存在はいる。
我は先代のハイエルフ達の高度な精霊術によって生み出された云わば"ツクリモノ"で、彼らの魔力によって創り出されたこの身体に性はない。
ハイエルフの特徴である長い耳にプラチナブランドの様な白に近い金髪、色素の薄い絹の様な肌にターコイズブルーに近い瞳。成功とされたそのモノを彼らは宮殿へと閉じ込め、次世代を担う者となる様教育を施した。
衣食住は全て提供され、何かやりたい事があれば目元を隠した従者が部屋へと持ってくる。身体を動かしたり、術の訓練をするのも全てエーテルヴェールの宮中で行われる。
そんな生きの詰まるような生活を約数千年もの間、我は何の疑問も抱くこと無く過ごしていた。
…だが、いつからだろうか。
( …嗚呼、そうだ )
シルバーリーフの里長のお子が誕生したと宮中で祝いの宴を催され、あの子を見た時からだ。
"この子について行き、まだ知らぬ世界を見てみたい "
そう思い始めたのは _____
︎
「 御目覚めの時間でございます、レイヴン様。 」
そう聞き慣れたギルロスの声が聞こえてくる。
…まだ寝ていたい。そう思いながらもゆっくりと目を開けば、イルファが寝室の窓を開け、ヴィクセンが水を注いでいるのが見える。
我の部屋には常に3人の世話係が控えており、名をエルフのギルロス、孤族のヴィクセン、狼族のイルファという。
ギルロスに身を任せながら、まだ朝のダルさが残る身体を起こす。そしてヴィクセンが用意した水で顔を洗い、着替えを済ませては3人と共に寝室を後にする。
いつもは静けさが漂う廊下だが、今日は一段と慌ただしく、皆が何かの準備に追われている。いつもと違う様子に疑問を抱きながらもその様子を横目に見ながらその場を離れては食堂へと向かう。
食堂には食事の時間帯に合わせ果実が数多く置かれている。いつもと代わり映えの無い食事に、我に使える3人の従者以外誰もいない食堂、、、なんともつまらない。
「 …それで?何故あんなにも騒々しく動いているのだ。 」
椅子に座り果実を一つ手に取っては、それを眺めながらギルロスに問いかける。
旅路 グレイ・ニックス @gray07
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