第35話 教団騎士との戦い
「ダークロードに、宝を渡すなァァァァ!!」
「潰せええええええ――――っ!!」
黒づくめ装備をまとった俺の登場に、騒然とするホール。
すると教団騎士の一体が、歩み出てきた。
そのままザラリと剣を抜き払いながら、俺たちのもとにやってくる。
「貴様らの快進撃も、ここまでだ」
「ダークロード様、ここは私が」
すると俺の後方に控えていたサクラが、前に出た。
そして同じように、太刀を手に取る。
互いに構えを取ると、二人の間に走り出す強烈な緊張感。
先に動いたのは、教団騎士だった。
「っ!」
敵は刀身に魔力の刃をまとわせる、両刃剣の使い手だ。
本来剣が持つ間合いよりも攻撃範囲が長くなるため、思ったよりもだいぶ早い位置での判断が必要になる。
いきなりの斬り払いを、サクラは片足を曲げ、頭を下げることで回避した。
「終わりだ」
早すぎる勝利宣言。
教団騎士は斬り払いの流れを利用して剣を返し、そのまま強烈な振り降ろしを放った。
風切り音を鳴らして迫る、返しの刃。
サクラはこの苛烈な一撃に、太刀を斜めに掲げて対応する。
真正面から受け止めるのではなく、太刀を傾けることで受け流し、敵の剣の軌道を変更。
振り降ろしは地を激しく打ち、教団騎士がわずかに体勢を崩した。
この瞬間を、サクラは見逃さない。
「【一式・雷刃】!」
すぐさま、得意の斬り抜けを放つ。
どうやらナイトメアガーデン時は、戦技の名称も変えているようだ。
「くっ!」
これを教団騎士は、どうにかガントレットで防御。
大きく体勢を崩されながらも、持ちこたえてみせた。
『ガーデンモード』のサクラと、正面から勝負ができる。
なるほど確かに、教団騎士はギルド勢より実力が上のようだ。
振り返り、再び向かい合う両者。
リーチで優位を取る教団騎士は、振り降ろしから払いへとつなぐ形で攻撃。
サクラは初撃を横への移動でかわし、払いの一撃を前方への跳躍で越えると、得意の空中回転斬りへとつなぐ。
「くっ!?」
予想外にアクロバティックな攻撃に驚きながらも、これを剣で受けた教団騎士は大きく下がる。
さらにサクラは詰め、右肩から左腰への斬り下ろし、左肩から右腰への斬り下ろしと連続で攻撃。
教団騎士は、これを受けつつ下がっていく。
「はあっ!」
サクラは後を追うように大きく一歩踏み出して、強い斬り払いを放った。
「チィッ!」
騎士団騎士は大きく弾かれたが、距離が開いたことを利用して一転攻勢に出る。
大きな踏み込みから放つ振り降ろしを、サクラが太刀で弾く。
するとすぐさま同じ軌道の一撃を、今度は地面に叩きつけるような勢いで放つ。
これも同じような形でサクラが受けたところで、今度は身体の回転も乗せた豪快なフルスイング。
鳴り響く、金属同士の衝突音。
豪快な力技の連発に、サクラが大きく後退する。
すると教団騎士は、サクラの正面に猛烈な勢いで駆け込んで来た。
魔力の刃を輝かせながら、力強く掲げた剣。
「はああああああああ――――ッ!!」
強い踏み込みから、強烈な振り降ろしを仕掛けてくる。
サクラは太刀を、魔力の刃を受けるつもりで持ち上げた。
「っ!?」
しかし教団騎士は、ここで魔力をカット。
あえて光の刃を消し、攻撃範囲の短くなった剣がサクラの目前を通り過ぎる。
予想外のフェイント。
魔力の刃を太刀で受け止めるつもりでいたサクラは、意表を突かれた。
「はあっ!」
教団騎士は、大きな踏み込みから斬り上げを放つ。
体勢を崩していたサクラが、これを真後ろへの大きな跳躍でかわす。
ここで教団騎士が、始めての動きを見せた。
「かかったな」
そう言い放って、剣を引く。
「消えろォォォォォォ――――ッ!!」
「っ!?」
これまでに使っていた魔力の刃は、『最長』の状態ではなかった。
一瞬の閃きの直後、突如として放たれた刺突は、長さ十メートルに至る光線の放出を生み出す。
そしてこれまで一度も使わなかった、突きによる攻撃。
二つの『初見』を織り交ぜたまさかの一撃は、サクラの虚を突くのに十分だ。
「……明らかに剣が届かない位置からの、唐突な突き」
猛烈な速度で迫り来る、魔力の光刃。
「『予備動作』を見た時点で、伸びる攻撃は予想していました」
しかしサクラはこれを、身体の傾け一つで回避した。
「なん……だとっ!?」
「突きは確かに強力ですが、あくまで『点』の攻撃。来ると分かっていれば回避は難しくありません」
雷光のように駆け抜けていった魔力の輝きは、霧散して消失する。
まさかの回避に、驚愕する教団騎士。
「いきます」
「っ!?」
サクラは高速の踏み込みで、その懐に一瞬で入り込んだ。
柄を両手で握り、重い荷物を引きずるような形で持った太刀を豪快に、縦の一回転。
「【三式・真月】!」
「ぐ、ああああ――っ!」
満月を描くような刀の軌道は、教団騎士の厚い鎧に深い傷を刻み込み、ガントレットを弾き飛ばした。
「【二式・風輪】!」
続く回転斬りは、烈風を巻き起こしながら騎士の二の腕にめり込み、鎧を大きく歪める。
「ぐああああああ――――っ!!」
その威力を前に地面を跳ね転がった騎士は、転倒を奪われた。
勝負は完全に、サクラが優位を取った形だ。
そんな中。
「う……ぐ……」
聞こえてきたのは、倒れ伏すギルド勢のうめき声。
いよいよ彼らを壊滅させた残りの教団騎士たちが、俺たちの方に向かって歩き出した。そして。
「……俺?」
三人全員が同時に、その狙いをダークロードである俺に定めた。
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