4話 決意

焼き肉屋に着いた私と千尋さんは早速席に着いた。

「食べ放題だからな、好きなだけ食え食え」

「いただきまーす!」

私が最初に頼んだもの、それは牛タンだ。

「牛タン4人前って……2人前ずつ食べるの?」

「いいや、千尋さん1人前の私3人前」

「それって不公平じゃあないのか?」

私は食べ放題と聞いてから無限のように食欲がわいてくる。

「うひょ~!」

(生のままでもおいしそうだなぁ……食べたい)

「こら、生のままで食べようとしないの」

「はぁい」

(そういえばバグもおいしそうって思っちゃってたな……もしかして見る物すべて美味しそうに見えるのかな)

牛タンを焼き、食べた後に頼んだもの、それはてっちゃんと上ハラミだった。

「ひょ~」

「せっちゃん、聞いておきたいことがあるんだ」

千尋さんが私に向けて質問を投げかけてきた。

「あなたってどうしてこの仕事についてるの?」

「……考えた事無かったなぁ」

「そうなの?」

「ただ生きるために、それか金を稼ぐために仕事をやっているだけなのかもしれないね」

「寂しい人生だね」

千尋さんはそう言って肉を焼いて行った。

「金を稼ぐ人生って、なんだか虚しくない?」

「そうですか?」

「なんだか金のために動かされているような気がするんだよね。それで生きると言う事は何というかと考えなくなる。そこまで行くと人間として終わりだと思ってるんだ」

「まぁ……仕事ばかりの人生は楽しくなさそうですけど……」

「その点を踏まえて、どうしてこの仕事についてるの?」

その事について深く考え始めた。

(あの時、私が早く死んだ人に気が付いていれば……今も生きていたのかな……)

「人を守るために仕事をしているのかな……電脳世界が原因で被害にある人がいなくなればなって」

「そうか……私と同じだ」

そう言って千尋さんはハラミを食べた。

「私も最初人がこんな簡単に死ぬなんて思わなかったよ。だけど仕事をしていくにつれて慣れて来ちゃってね……まったく、私てもう人間じゃあないよね」

「いや、人間ですよ、千尋さんっていう人格があるんですから」

「そうか……せっちゃんがそう言ってくれるなら助かる」

(ハラミ美味いなぁ)

私は大事なことを考えながらハラミを食べていた。次々に運ばれてくる肉を食べていくとラストオーダーの時間になった。

「どうする?デザートを頼むか?」

「頼もうか……私はバニラで」

「私はストロベリーチョコだね」

私と千尋さんはデザートを頼み、その間は大事な話をしていた。

「もし私が死んでしまって、せっちゃん一人になってもこの仕事は続けられる?」

「それは……わからない」

「まっ、そうだよね。身近な人の死は大抵受け入れられないからさ……まだ生きてると錯覚するんだよな」

すると千尋さんはスマホを見始めた。

「……今頃元気にしてるのかなぁ」

「何見てるんですか?」

「私の戦友たちだよ。今は何をしてるのか分からないけどね」

「そうなんですか……」

「一人は寺の管理、一人は霊媒師なんだ」

「とても個性が強いですね……」

「冷静そうに見えて過去に関してはデリケートなんだよ……」

そんな話をしている間にデザートが運ばれてきた。

「ん~あんまぁぁい!!!」

「大声を出さないでよ、目立ちたくないんだ」

私はデザートの甘さに思わず叫んでしまった。とてもミルキーでコクがとてもあった。

「確かに甘いね。チョコの甘さをストロベリーの酸味でより引き立てられてる」

夢中でデザートを食べているといつの間にかバニラが無くなっていた。

「どうして食べると無くなっちゃうんだろう」

「そりゃ食べたからでしょ」

千尋さんから的確なツッコミを入れられた後、私たちは会計に進んだ。

「9640円です~」

「はい~」

千尋さんが奢ってくれた後、会社に戻るために駅に戻っていった。

「ガッテム……!!」

「ごちそうさまでしたー!」

千尋さんは今更言ったことを撤回できないと思い、ため息をついていた。そして駅に着き、ここまで乗ってきた電車で会社に戻っていった。だけどまだ腹の虫は収まっていなかった。

「えきべーん」

「せっちゃんって本当に満腹しらずだね……羨ましいな」

そして電車は動き出し、私は駅弁を食べ始めた。焼き肉を食べた後で駅弁を食べるなんて普通なら入らないが私はバクバクと食べ始め、見事に完食した。

「ごち!」

「うわぁ……」

その食欲に千尋さんは少しだけ引いていた。どうやら変人と思われていそうだが……別にいいか。

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