惚れっぽΩの転生先はファンタジーアラブのハレムでした！？

@stripe_dot

――ああ、全てはこの瞬間のためにあったんだ。

　抜けるように青い空に灼かれた眼と、硬い砂利面に打ちつけられた背中と、それらの何より鋭い一撃を食らった胸から流れる血が、この灼熱の砂漠の国にいても体温をじわりじわりと奪っていく。

「おい、医者だ！　近隣の町村まで探しに行け！」

　アシュラフ、相変わらず声がいいな、なんて考える。

「あまり動かさず……私たちは素人なのですから」

　そうそう、そうやって適正な知恵を授けるところ、サラームぽくて俺は好きだぜ。

「…………」

　不意にぐっと脇を締め上げられた。どうやらズィッルが、あの国民どもが羨望する織物を裂いて包帯にしたらしい。血税が泣くっつーの。

「アスカぁ……死んじゃやだ……」

　ビーラのこんなに切羽詰まった声を聴けるなんて、俺もなかなか出世したもんだ。この世界に転生した記憶が戻ったときは右往左往してたのに。

　悪くなかった。いや、むしろここで死んでもいい人生だった。ただ、最後に一目あいつに会えたら――そんな風に少し欲が出た瞬間だ。

「アスカ！」

　その声に、体中に血が巡るのがわかる。生きるということが、愛というものが、ヒトの形を持って触れ合いたがっている。思わず伸ばした手指は、ハルキのそれによって力強く握られた。

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