───

部活の練習が終わって、エレベーターを待っていた時。

周りに人の気配は無くて、二人でゆるゆると喋っていたら壁際に追い詰められた。

急なことで反応する間もなく梅乃の手が迫ってくる。

ギターの練習による指タコで少しゴツゴツした指が、緩く首元を締める。 生温い体温が直に伝わる。



「私以外、見ないでよ」


少し怒ったように眉を曲げながらも、口元には笑みが浮かんでいる。 だから、冗談交じりの言葉のはずなのに、どこか湿度を感じられる。


それはこの状況だから?

……それとも、彼女の本心だから?

そもそも私にはなんの事を指してるのかわかんないよ。

今の私にその疑問の答えを出せるわけない。 だからただ頷くしかなかった。

私が頷いたのを見て安心したような表情をする。

ゆっくりと指は首を辿っていった。

次は頬をぐにっと掴まれる。


「んっ、」


「あはは、面白い顔」


ちょっと怖かったけど、梅乃が、笑ってくれるなら、いいや。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る