第2話 しつこいぐらいがちょうど良い

俺は空を見上げてから歩いて教室に戻る。

それからイチャイチャとか友人同士で笑い合う陽キャを見つつ「くだらない」と呟きながら俺は椅子に腰掛けた。

そして溜息を吐きながら過去をふと思い出す。

それは陽キャ時代だった中学時代。


茉莉とよく喧嘩していた時代を。


そんな事を思い出しながら俺は肩をすくめた。

それから顔を前に戻すとそこに女子が4人。

茉莉を囲んで会話していた。

笑顔が3人グループと絶えない。

俺は苦笑しながらその姿を見てうつ伏せになる。

チャイムが鳴った。



今日も特には面白い事は無いまま時間は過ぎ去り。

そのまま放課後になる。

ようやっと帰る事が出来るな。

そう考えながら俺はスマホを見ながら教室を出る。

すると。


「やっほー」

「なにをしに来たんだ。萩原」

「見て分からぬかな?一緒に帰ろう」

「馬鹿なのか。陰キャにそんな...」

「君さ。陰キャ陰キャ言ってるけど私忘れてないよ?君が私を中学時代に救ったの」

「...そんなもの覚えているのか」

「うん。女の子はそういう事はよく記憶するから」

「くだらないだろ」


そう俺は言いながら萩原を見る。

萩原は「まあまあ。だから一緒に帰ろ」と言う。

だからってなんだよ...。

意味不明だわ。

俺は顔を引き攣らせながら盛大に溜息を吐く。

それから聞いた。


「お前友人は出来たのか」

「出来たよ?」

「ならその友人と帰れよ」

「これとそれは別だよ」

「いやいや。意味が分からない」

「まあまあ」


まあまあってあのな。

考えながら俺は歩いた。

横に並びながら歩く萩原は俺を見ながら柔和な顔をする。

俺はそんな顔に「やれやれ」と溜息をまた吐いた。


「萩原」

「ん?なにかな?」

「お前は良い奴だ。だからこそ俺は...」

「んー?」

「俺と関わらない方が良い」

「...私は止めないよ」


その言葉に俺は顔を上げた。

それから萩原を見る。

萩原は俺をニヤッとして見つつ「だって同じ中学校の生徒だった人は君しか居ないし」と話した。

俺は「...だからといって一緒に帰るのは意味が分からない」と言いながら萩原を見る。

萩原は「私が好きでやってるから」とニコッとする。


「...分かったよ」


それから俺は萩原から視線を外した。

そして下駄履から靴を取り出す。

萩原も靴を出して履き替えた様だ。

俺の下にやって来た。


「帰るか」

「だね。あ、私の家の場所知ってる?」

「は?いや知らない」

「2丁目のマンション」

「軽々しく住所教えるなよ...」

「え?良いじゃん別に。困る事は無いし」

「いやいや」


そういう問題ではない。

一人暮らしだろ。

そう考えながら俺は萩原を見る。

萩原は「マンション来る?」と話した。

俺は「アホかお前は」と言いながら歩いた。


「ねぇねぇ。君、赤くなってるよ?」

「からかうな」

「えへへ。あ、君の家は何処なの?」

「俺の家か?2丁目のアパート」

「ああじゃあ近いじゃん。何か持って行こうか?」

「あのな。通い妻じゃないんだぞ」


そう言うと彼女は「へ?」と動揺した。

は?

俺は彼女を見る。

彼女は少しだけ赤面してから「なんばそんな事言うんや」と呟いてから直ぐに元の顔に戻る。

その姿に俺は「?」となりながら顔をジッと見る。

なんだ今のは。


「も、もう。行こう」


彼女はそんな感じで切り出し。

そのまま歩いて行く。

なんだったんだ今のは?

そう考えながら俺は彼女の背を疑問符を浮かべて見ながら歩き出した。



「じゃあこっちだから」


歩いているといきなり萩原がそう切り出した。

別の方角を指差す。

俺は「ああ」と言いながら萩原を見る。

萩原は「じゃあね」となんだか不機嫌そうに歩き出す。

その姿に俺は「萩原」と声をかける。


「なに?」

「いや。お前...なにを怒っているんだ?」

「怒ってないよ?」

「じゃあなんであからさまに不機嫌そうなんだ?」

「い、いや...ごめんなさい」

「?」


意味がまるで分からない。

俺は考えながら「萩原」と肩を掴んだ。

すると萩原は「!!!」という感じで後退りする。

俺は「え」と声を発する。

萩原は「ご、ごめん」となりながら「今日は帰るね」と話しながら「貴方が悪い訳じゃないから」と途切れ途切れに言ってから去って行った。

なんだったんだ。



俺は意味も分からないままアパートに帰宅する。

それから伸びをしてから思い出す。

それは茉莉の事を。

茉莉は...完全に俺の事は忘れているだろう。

しかし。


「不安が取れないんだよな」


そんな事を呟きながら俺は天井を見上げる。

するとインターフォンが鳴り響いた。

俺は「は?」となりながら「新聞か...あれだけ断ったのに」と呟きながら「はい」と少しだけ苛立ちながら玄関から顔を出す。

そして固まった。

何故ならそこに居た人物は。


「やっはろー」

「お前なにをしてんだマジに」

「見て分かる通りだよ。料理のおすそ分け。はい。博多鳥の煮付け」

「だから俺に関わると...」

「君に関わると、なに?」

「いや。だからさ。俺に関わると摩耗するぞ」

「私が好きにやってる」


そう言葉を発しながら萩原は俺を見る。

言葉に俺は「萩原。分かってくれ。俺は」と言うと萩原は「私が関わったら駄目な理由を教えてくれる?私、分からんけ」と言った。

俺は「...」と沈黙する。


「無かろうもん?だったら良かよね?」

「...萩原。俺は...」

「素直に受け取り。私はそれを望むばい」


それから萩原はニコッと笑顔を浮かべた。

気付いているかどうか分からないが。

なんか博多弁?らしきものになっている。

まあ...この方がコイツらしいが。

俺は考えながらフッと笑みを浮かべた。

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