白鳥の湖

八萩

第1話

 オレはオデット。

 悪魔ロットバルトから呪いをかけられている。

 昼は白鳥、夜だけ人間に戻れるけど、奴から逃げられないんだ。



 オレはこの国の元王子。

 呪いをかけられた時、たまたま王室の舎弟も連れていたので、彼らも同じ呪いにかかっている。



 ロットバルトは男。

 ハッキリ言ってゲイだ。

 オレを独り占めしたくてこうなったらしい。

 まあ、オレの見た目は評判がいいけどな。

 色んな愛の形があっていいと思うけど、オレは男はごめんこうむるんだ。




 オレは毎晩襲ってくる奴を、足で蹴倒して暮らしている。

 そのせいで奴は生キズが絶えないんだ。やめればいいのにね。



 ある夕暮れのこと、オレはいつものように舎弟を連れて、湖でダラダラ毛づくろいをしていた。

 無職だからな。

 それしかすることないんだよ。

 すると突然、矢が飛んできた。

 野蛮な男が子分を連れて狩りをしていた。



 オレはキレたね。

 ちょうど日が落ちて宵の刻を迎えた。

 オレは人間に戻って湖からあがった。

 舎弟を代表して文句言ってやったよ。

 「あにすんだよ!」



 野蛮な男はオレを見て、一言叫んだ。

 「惚れた!」

 男は国賓として狩りを楽しんでいた隣国の王子だった。

 ジークフリートって言う。

 こいつもゲイだった。

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