『オニパン!〜ぼくのパンツと人間のぼんのう〜』

@fujisan0051

第1話 オニの子・オニスケ

ここは――オニの世界。

山は黒く、ゴツゴツの岩がゴロゴロ。空はいつも夕やけみたいに赤く、

時々「ゴロゴロ」とカミナリが鳴りひびいています。

そこに、あるオニの家族がくらしていました。


オニスケは、その家のひとり息子。まだ子どものオニです。


ある日、オニスケはママオニに聞きました。


「ねえママ。オニって、何のためにいるの?」


ママオニはやさしい目をして、答えました。


「わたしたちは人間を見はるためにいるのよ。人間は『ぼんのう』っていう

『よくぼう』を、とってもたくさんもっているの。」


「よくぼう?」

オニスケは、ふしぎそうに首をかしげます。


「周りの人のことを考えずに、自分のことばっかり考えて、

『ああしたい、こうしたい!』って思ってしまうことよ。」


「ふ〜ん。人間って自分勝手なんだね。」


「そうよ。だからね、そんな時はパパやママみたいな大人のオニが、

人間の世界に金棒をかついでいって、ぼんのうがなくなるようにこらしめるのよ。」


「じゃあ、ぼくはいつ人間をこらしめに行けるの?」


「うふふ。オニスケはまだまだ。もっと大人になってからよ。」


ママにそう言われて、オニスケは「はやく大人になりたいなぁ」と思うのでした。


その夜――

オニスケは、パパオニとママオニといっしょに、川の字になって

ふとんで寝ていました。


すると、ねぞうがわるい、パパオニが急に大声で寝言を言いました。


「う~ん、ゆるして社長~!!」


そういうと、パパオニは勢いよく 寝たままでおじぎをしました。


そのときです。


パパオニの、するどいツノがオニスケのパンツにひっかかりました。


ビリビリビリッ!!


オニスケのお気に入りの――

そう、笑顔のウシさんがプリントされている、とってお気に入りのパンツが、

見事にやぶれてしまったのです。


朝になりました。


オニスケは、穴のあいたパンツを見て、ポロポロと涙をこぼしました。


「お気に入りのウシさんパンツだったのに〜っ!」


オニスケがわんわん泣くので、ママオニはこまった顔をしました。


「しかたないわねぇ。……そうだ!」


ママオニは、ひらめいたように手をたたきました。


「オニスケ。大人になったら、オニスケもいつか人間をこらしめに行かなくちゃ

いけないでしょ? これはいい機会だから、一度人間の世界に行ってごらん。

そして、自分でウシさんのパンツを買ってくるのよ。」


「えっ!? 自分で?」


オニスケはびっくり。けれども、胸のどこかがドキドキ ワクワクしてきました。


「うん! ぼく、人間の世界で、一番かっこいいウシさんのパンツを

見つけてくる!」


ママオニはにっこりして、オニスケに小さなふくろを手わたしました。


「はい、お金。これでウシさんのパンツを買ってらっしゃい。」


オニスケはふくろを ギュッとにぎりしめました。


こうして、オニスケの「ウシさんのパンツ探し大冒険」が、始まるのでした。

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