親友と元カノを同時に失った俺は、高校では正直に生きてみることにした

@3kirin123

第1話 親友の彼女は俺の元カノだった

「わりぃ、彼女できたから今日は一緒に帰れないわ」


そう言って無邪気に笑った親友の隣には――俺の元カノがいた。


声が出なかった。体も動かなかった。


並んで歩きだすふたりの背中をただ、冷たい廊下から見送ることしかできなかった。


これが夢であることはわかっている。何度も繰り返し見た、あの日の光景。


***


中学時代、俺には付き合っていた相手がいた。


名前は涼香。一年の夏、委員会で話すようになって、やがて付き合うようになった。


その関係は誰にも言わなかった。


周りに知られて冷やかされたくない、別れたときに気まずくなると考えたから。


学校ではあえてそっけなく振る舞った。ふたりだけの秘密になった。


二年の夏が終わる頃、涼香は塾に通い始めた。


お互いに部活や塾で忙しくなり、顔を合わせる時間は次第に少なくなっていった。


気がつくと、涼香の話題は塾の友達のことばかりになっていた。


知らない名前。俺の知らない場所での出来事。


――そのたびに、胸の奥がちくりと痛んだ。


毎晩していた寝る前の電話を徐々に自分からしなくなった。


メッセージも、俺の素っ気ない返事が続くうちに減っていき、やがて途絶えた。


春休み、久しぶりに送ったメッセージは――ブロックされていた。


***


春休みが明けた、始業式の日。


一緒に帰ろうと親友は話しかけると


隣にいたのは少し前まで俺の彼女だったはずの涼香。


「わりぃ、彼女できたから今日は一緒に帰れないわ」

「恋愛相談に乗ってたら仲良くなってさ」

「彼氏と別れたって聞いて、俺から告白したんだ」


親友は俺が涼香が付き合っていたことを知らない。


きっと、涼香も話していないはずだ。


彼氏が俺だと知っていれば、親友は俺と涼香の仲を取り持ってくれていただろう。


…でも、今さら言っても手遅れだ。


それに親友の笑顔を、幸せを壊すようなことを言う勇気は俺には無かった。


俺はふたりの後ろ姿を、ただ見送ることしかできなかった。


中学最後の一年間は親友と涼香と同じクラスになった。


涼香との気まずさ、親友への後ろめたさは消えない。


お似合いのふたりとしてクラスに存在感を放つ彼らの輪に入るとこはできない。


話し相手がいなくなり、俺はクラスで口を開けなくなった。


中二の夏、胸の痛みを彼女に打ち明けていたら、


「彼女がいる」と親友に伝えていたら、


何か変わっていただろうか。


彼女と、親友との関係が続く未来はあったのだろうか。


誰にも言えず、何もできず、ただ黙っていたせいで――


大切なものを、ふたつ、一度に失った。


……あのとき、もっと向き合えていたら。


……ちゃんと、自分の気持ちを伝えていたら。


そう思っても、もう戻ることはできない。


*


春が来て、高校生になった。


クラスに馴染めず、部活動も終えた俺は一年を勉強に費やした。


その結果、県内でも上位10校に入る進学校に合格した。


あの頃の俺とは、少しだけ違う。


もう、誰かに過剰な期待をしたり、自分の気持ちを押し殺したりはしない。


高校生活は正直に、まっすぐに、生きていこうと思う。


あのときの後悔は、きっと一生消えない。


だから今度こそ、誰にも依存せず、自分に嘘をつかずいこう。


そして、高校生活では彼女は作らない。


恋をすることが怖くなったわけじゃない。


ただ、あのときのように人間関係を壊したくない。


確かな決意を胸に、


あの日から止まっていた青春の針が今動きだす。

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