第2話 腐女子から同人誌を貰う

 昨夜、今オレを後ろから抱え込んで抱きしめてご機嫌の恋人様、高田蓮に抱きつぶされて、お泊りを余儀なくされオレはグロッキーだった。気怠い、腰痛い、なんか疼く。


 い、いや!!

 またしたいとかではないからな!!


「愛ちゃん、俺にも食べさせて♡」


 いや、ホントご機嫌だな、お前!!

 「食べさせて♡」じゃないんだよな!!


「介助には別途料金かかりますので」


「料金……、俺のちんこでいい?」


「ごめん、オレが悪かった。食べさせてやるからこれからするとか言わないでくれ」


 ったく、ちゃんと二人分の量作ってあるんだから自分で食えよな!!

 まあ、フレンチトースト焼いてコーヒー淹れたの蓮さんなんだけど!!


 蓮はオレが食べさせると、蕩けるような愛らしい表情をする。

 いや、可愛いとか、好きとか思ってないかんな!!


「んふふふふ~♡」


「いや、うふふじゃなくて。早く食べなよ。今日も学校なんだから」


「は~い!」


 蓮は流石に食べにくかったのか、オレの隣に移動して、もくもくと朝食を食べ始めた。

 別にさ、親公認だし、同棲してもいいんだけど———こういう蓮を見るのは好きだ———、毎日一緒にいたら、飽きられそうだなとか考えっちゃって言えないんだよな。

 オレから言うのも癪だし。

 まあ、ほぼ毎日蓮の一人暮らしの部屋に泊ってるけど。

 最初から、お互いの一人暮らしの部屋にお互いの用品置いとくようにしたし。

 言い出したの蓮さんだけど、泊まる気泊まらせる気満々じゃねぇか。


 ったく、オレも大概チョロい。


 というか、離れてくれてよかった。

 もう正直、耳元で話す声とか、温もりとか、また疼いてくるから結構キツイ。


「愛ちゃん」


「うん?」


「あ~ん♡」


「むぐ、さんきゅ」


 蓮は、オレにあーんして食べさしてくれて、にこぉっと笑った。

 めっちゃ赤ちゃんじゃん……。


 だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 何だお前、赤ちゃん返りしてんのか?!

 可愛いな、おい!!


 好きぃ……!!

 とかじゃないからな!!


それから、手分けして片づけて、顔を洗ったりしてた時に事件は起きた。




「愛ちゃん、」


「うん?……こ、こら、やめろ、って」


 顔をタオルで拭いていると、蓮が後ろから抱きしめてきて、すすす、と手をオレの股間の方に這わせてきた。


「愛ちゃん、ちょっと此処おっきくなってるね」


「ン、ば、馬鹿……あ!」


 ああ、もうだめだ。

 蓮さんに咥えられた。

 オレは蓮に口で扱かれながら、今日、金曜日の一限の授業について考えていた———……。




「……死んでた」


「愛ちゃん、おはよぉ♡」


「おはよぉ♡じゃねぇわ!お前のせいで授業死んでただろうが!!」


「アハハ、ごめん♡」


 こいつ……。


 とりあえず、事が終わってから電車に乗って登校したはいいけど、遅刻。ついでに事後で気怠くて授業中寝る、という事件が起きた。


 三クラス合同のオリエンテーション———専門家(声優さんや脚本家さんなど)を招いた授業———じゃなかったら、死亡フラグだった。色んな意味で。


 課題は蓮に見せてもらおう。


「愛ちゃん、蓮君、おっすおっす!」


「あ、小早川さん、おっす」


「こんにちは、小早川さん」


 食堂で死んでたオレと、上機嫌な蓮の元にやってきたのは、同じクラスの小早川さん。

 ちなみに、昨日鼻息が荒かったクラスメイトの一人だ。


 いつの間にかクラスで『愛ちゃん』呼びが浸透してて嫌なんだが。


「どうしたの?」


「いやぁ、お主らのラブラブっぷりには筆が進ませて頂きまして……」


「「??」」


 小早川さんは、「はいこれ、サンプル」と一冊の薄い冊子を渡してくる。

 こ、これは……。


「『美形×平凡サンプル』?……って!!」


「あれ?これ俺たちに似てない?」


「そう!!あんたらをモデルに描いてみた!!」


 それは所謂、同人誌、というやつだった……。

 つーか、失礼だな、言われなくてもわかってるよ。オレが平凡ってことくらい。


 オレが、少し落ち込んで俯いたとき、ふと、何かが影になった。

 視線を移すと、そのすぐそこに蓮の顔があって、ちゅ、と唇が重なった。


「~~~~~~~~~!!!!」


「愛ちゃんは平凡じゃないよ。俺の可愛いお姫様だから」


 じゃあね、と蓮さんはオレを連れて食堂を出た。

 食堂が、絶叫に包まれた。

 その絶叫を聞きながら、午後の授業がないオレは同じクラスの蓮と蓮の自宅に帰宅したのだった。


—第二話 了—

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る