『紅の轡』

無名人

序章『紅の轡』


 閉ざされた耳から奇妙な歌が聞こえる。

『おいでおいでマダム・クリスタルのテントに

あなたの未来を占ってあげる

一度ためせばもう後戻りは出来ない

禁断の占いを試してみない?』

 塞がれた目から何かが見える。それは、ぼんやりとしていたが、女性の姿をしていた。

「あなたにもこの歌を歌ってもらうわよ」

口に何かを嵌められた。くつわだ。これから歌うというのに、何故口を閉じなければならないのだろう。

 このままでは歌えない、けれど、私は歌わないといけない。私はどうにかして、閉じられた口を開いて、歌った。


 

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