最強の鎖眼は静かに幻境を裁く〜紅蓮崩壊を超えた歴代3位、神城雪哉の8番隊日誌〜

さまたな

プロローグ 

第1話 全ての始まり

人類は幻境という謎の空間と共に育ってきた  



         だが


        三年前

   

    それは突如として起こった


 街は赤く、焦げた匂いが漂う中、静かに呻いていた。

 建物は倒れ、道路はひび割れ、瓦礫が散乱する。


 遠くで鳴り響く警報の音。

 そして、誰もが息を潜め、ただ立ち尽くすしかない夜だった。

「遥真……」

 隣に立つ幼馴染の楓が、小さく震えながら声をかける。

「……楓、ごめん……俺、何もできなくて……」

 声は震え、言葉が涙に押しつぶされそうになる。


「泣かないで……遥真。二人で生きてる……それだけで、いいの」


 楓の手は震えているが、俺の手をしっかり握り返した。

 俺たちは、公園の片隅に立っていた。

 遊具はひしゃげ、池は濁り、ベンチはひっくり返っている。


 目の前の街は、まるで地獄のようだった。

 燃え盛る炎、倒れた建物、散乱する瓦礫。

 その破壊の原因は――語りだけで伝わる恐怖だった。


 ――六堂悪鬼と名乗った人型の幻が、

  幾千万もの幻と謎の鬼を引き連れ

  街を赤い炎と瓦礫の中に沈めた。


 その存在は恐ろしいほどに圧倒的で、人の

 想像を超える力で、多くの命を奪った。


「……どうして、こんなことに……」

 楓の声は小さく、震えていた。

「わからない……でも、俺たちは生きてる」


 震える手で楓の手を握り返す。

「生きてる……でも、何もできない……」

 涙で視界が歪む。

 楓は小さく首を振った。

「泣かないで……私が、いるから」

 街全体が地獄と化す中、二人だけが、静かに立っていた。


 公園の片隅で、瓦礫に囲まれ、炎と煙の

 匂いの中で。

 誰も助けに来ない。誰も、まだ来られない。

 でも、俺たちは互いに寄り添い、恐怖と絶望を抱えながらも、必死に立っていた。


 ――あの夜、俺たちはただ、生き延びることを考えていた。

 遠くで聞こえる叫び声、燃え上がる建物、崩れ落ちる道路。

 語るだけで、恐ろしい力の存在を知らされながらも、俺たちは手を取り合い、泣きながらも生き延びた。


 数十分――

 ただそれだけ

 短い時間だったが、多くの被害を生んだ。

 それは、人々は後に


      「紅蓮崩壊」と呼んでいた


 人類は何もできなかったわけではない。

 街のあちこちで、防衛隊員が異能力で

 応戦している。

 そんな大人の姿を、かすかに視界の端で感じた。


 そして、紅蓮崩壊開始から数十分後、

 急に六童悪鬼

 

そして現着した歴代最強と謳われる

      神城雪哉と

      黒瀬遥斗――

 二人の力により、大量の幻が討伐されていった


 街はまだ燃えている。瓦礫と煙、赤く

 染まった空。

 でも、公園で立つ二人には、わずかに静かな

終わりが訪れていた。


       紅蓮崩壊


 多くを失い、多くを背負った夜。それでも、

俺たちは生き残った。

 公園の片隅で、楓の手を握り返し、

 涙を拭った

 紅蓮崩壊は終了した

 そして、この日を境に、俺たちの人生は変わり

始める―ー


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 プロローグは二話です

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