第7話 パーティーホーム

「ミドルアント10体討伐!新記録よ!」


ヴィーシャは嬉しそうに剣を掲げている。




パムは黙々とミドルアントの魔石を集めているので、ヤヒスもそれを手伝うことにした。


「ありがとう」


パムはお礼を言ってヤヒスに魔石を渡す。




それをリュックにつめていると、ヴィーシャとミードリがやってきた。


「ねぇねぇヤヒス、この剣をわざと折って結合したら無限に強くなるんじゃないの!?」


と聞いてくる。




「それができないんだ、わざと折ったり壊したりしたものはくっつかないんだよ」


「あら、そううまくはいかないってわけね」


ヴィーシャは残念そうにしている。




「今日は帰りましょう、魔力も少ないし」ミードリが言った。


「それもそうね、じゃあ帰って夕飯にしましょう」


ヴィーシャは先頭きって歩き出す。




一行は冒険者ギルドに入り、カウンターに魔石を置く。


「はい、ミドルアントの討伐10体確かに」受付嬢が処理をしてゴールドを手渡して来る。




「よぉよぉヤヒスも冒険者パーティーに入ったのか、遊んで暮らせる御身分なのによ」


冒険者が声をかけてくる。




「なるべく動いていたいんだ、村では毎日農作業だったし、働いている方が落ち着くんだ」


「そう言うことだから私のパーティーで荷物持ちやってもらってるの」


ヴィーシャがギルドの面々に声をかける。




「あなたには悪いけどただの荷物持ちってことにしとくわよ、スキルのことが知れたらどうなるか」


小声で話し掛けてくるヴィーシャに、ヤヒスはこくこくとうなずく。




「そうだ、ヤヒスさんギルド長がお話があると」受付嬢が話し掛けてきて、2階に案内される。


ソファーに腰かけてしばらく待つと、ギルド長が姿を現した。


「ヤヒスさん、これが頼まれていた家の鍵と地図です、それと営業許可証です」




ギルド長からそれらを受け取り、リュックにしまう。


2階から降りてくるとパーティメンバーが待っていた。


「何の用だったの」とヴィーシャが聞いてくる。




「頼んでおいた家の鍵と、営業許可証だよ」


「営業ってあなたまだ結合で商売するつもり」


「そのつもりでもらったんだけど、結合はだめだし、村の特産品でも売るのに使えるかなって」




「家の鍵って、あなた家があるの?」とミードリが聞いてくる。


「うん、と言ってもこれから行くところだけど」そう言ってヤヒスは地図を見せた。




「そうだ、4人住める家を手配したんだ、良ければそこをパーティーホームにしないか?それとも男がいると嫌かな」


「そんなことはない、ぜひ欲しい、宿代もばかにならない」パムが前のめりで話して来る。




「決まりね!その家に行くわよ!」


ヴィーシャはすでに冒険者ギルドから出て行った。




「このあたりだけど」


「ここの辺りはわりと良い家のエリアですよ」ミードリが言う。


「あっ、ここだ、番地も間違いない」




その家は頑健で、飾り気は無いが大きな家である。


「大きい・・・4人以上の規模」パムが見上げて呟く。


取りあえず入ってみると、ダイニングに6人掛けのテーブル、隅にはソファー、その前には暖炉がある。


すべてきれいに掃除されている。




「これ・・・すごい家なんじゃ」ミードリが言葉をこぼす。


「最高ね!パーティーホームの探検よ」ヴィーシャははしゃいでいる。


しばらく家の様子を見ると過不足なく、派手でもない居心地の良さそうな家であった。




「憧れの黄昏パーティーホームが手に入ったわ」とヴィーシャがよろこぶ。


「夢見たいです」ミードリは高揚した顔をしている。


「パムはソファーに寝転がって幸せそうにしている。




「これは全てヤヒスの功績よ、ありがとう」


ヴィーシャが手を握って来る。


ヤヒスは照れくさそうに笑った。


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