第2話 初恋相手の悩みと葛藤
そんな評価をもらったとしても、毎日の鍛錬を怠ることもなく、そしてメルラナと会うことも欠かさなかった。というか今までの成果も、メルラナのおかげでもあるから、そのことも伝えたかったんだ。今日も河川敷の方へ行くと、メルラナは少し笑って手を振って待ってくれていた。
「メルラナメルラナ!聞いてくれよ!」
「随分嬉しそうだね、ファルコアくん、ふふっ♪」
「そうなんだよ!学校の実技と座学のどっちのテストもまた満点でさ!剣技のほうもいろんな型を使えるようになって!魔法のほうも基本属性はもう上級まで扱えるようになったし!座学も色々な仕組みを知ると勉強が止まらなくてさ!みんなからは、神童って呼ばれるようになったんだよ!」
「あ、アハハハハ……そう……なんだね……」
「それもこれも、魔法が下手っぴだった俺に色々教えてくれたメルラナのおかげだよ!ほんっとうにありがとう!」
「そう……そうだよね……」
「ん?どうしたの?メルラナ?」
「んーん!なんでもないよ、また魔法の練習しよ?」
「……?うん!」
恋は盲目になるのかねえ……?このときのメルラナが悩んでいることにいち早く気づいていたら、また何か変わっていたのかもしれない。
その次の週の休みの日に、いつもの通り河川敷へ向かうと、その日は何故かメルラナと出会うことができなかった。その時はかなりショックを受けたけど、次の週はきっと会えるだろうって思って鍛錬を続けていた。
そのまた次の週の休みの日は、今度こそ会えるだろうと思って意気揚々と河川敷へ向かうと、確かにメルラナは居たんだけど、草わらの上で縮こまって座っていた。何か様子がおかしいと思って、ゆっくりと近づくと、メルラナは肩を震わせて泣いていた。
「メルラナ?どうしたの?」
「……っ!?ファル……コア……くん……?う……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
メルラナは俺の顔を見た瞬間に、突然声を上げて泣き出してしまった。俺は最初は慌てるだけだったが、メルラナが落ち着くまで背中を擦り続けていた。しばらくしてメルラナは少し泣き止んだけど、すごく落ち込んだ状態だった。
「メルラナ、一体何があったんだ……?」
「……その……実は僕も……元々魔剣士志望だったんだ……。でもね、僕には魔法の才能はあっても、剣術の才能がなかったんだ……だから剣術を女の子の友達に教えてもらっていたら……その女の子と幼馴染の男の子にそのことがバレちゃってね、怒った男の子にこう言われたんだ」
~~
「お前って、あの魔法しか使えない出来損ないだろ?なんでアニスがお前なんかに剣術を教えてんだよ」
「ヴェルガ……!アンタ……!」
「そ、それは……僕があーちゃんに勝手に頼んだだけで……」
「あーちゃん……?ハッ!くっだらねえ……おいアニス!こんな剣術の才能の欠片もないやつにいくら教えたって無駄なことぐらい分かるだろ!こいつに付き合っていたら、お前の名声にも傷が付くだろうが!そもそも俺等は王都の魔剣士学園に編入を控えているだろうがよ……いい加減落ちこぼれなんて切り捨てろ」
(……っ!?……落ちこぼれ……そうだよね……これ以上あーちゃんを巻き込んじゃ……いけないよね……)
「あいつ……言わせておけば!」
僕はこの時、あーちゃんの手を咄嗟に掴んで止めていた。
「あーちゃん……ごめん……僕が間違ってただけだから……あーちゃんを利用して……自分の夢を捨てきれなかった僕が悪いだけだから……だから……あーちゃんは僕のことなんて忘れて……いいから……!」
「メルちゃん!そんなこと!あっ……」
ポタ……ポタ……。
(そんな……笑顔を無理やり作っているのに……そんな悲しそうに……つらそうに涙を流して……!)
「あっ……。……っ!!!」
僕は我慢しようとしていた涙をこらえるために、あーちゃんを心配させたくなかったから無理やり笑顔を作っていたのに……抑えきれない涙が勝手に流れていたことに気づいて、僕はその場から走り去ってしまった。
「メルちゃん!待って!私はあなたに何も…………っっっ!!!あの野郎……ボッコボコにしてやる……!!」
~~
「そのまま家にしばらく閉じこもっていたんだけど……僕はどうしても……ファルコアくん……あなたにどうしても会いたくて仕方がなくなっていたんだ……あなたは……僕の魔法の才能を本気で褒めてくれた……だからあなたと出会い……あなたと過ごしてきた日々が本当に楽しかった……!でも……あなたは僕と違って、才能に恵まれた存在だ……だから僕が近くに居続けると……きっとあなたに迷惑がかかる……だから僕は……あなたにお別れを……!」
「っっっ!!!」
俺はもう、メルラナの悲痛な言葉を聞いて、彼女の思いの淵を知ってぐちゃぐちゃになった感情が抑えられないまま、気づいたら彼女を抱きしめていた。
「……え……え……?」
「そんな……そんな悲しいこと……言わないでよ……。俺は君が涙を流している姿は、見たくないんだ……。俺もね、ある目標があって魔剣士を目指している。でも、最初は剣も魔法もよく分からなくて、自己流で色々試していたけど、魔法ってものが本当によくわからなかった。答えが見つからない状態で途方に暮れて、この河川敷を歩いていたら、君に出会うことができたんだ。君のとても綺麗な魔力で作られた水魔法が、本当に美しくて見とれていた。だから俺も見様見真似で水魔法を使えるようになったんだ!俺は嬉しくなって、両親に訓練の成果を伝えたらトントン拍子で魔剣士学校に入学することができてさ、その時もがむしゃらに頑張っていたけど、やっぱりまた魔法のことで躓いて、ふと、また河川敷を歩いて考えようと思って向かったら、まさかまた君に再会できると思ってなくてさ、俺は本当に嬉しかった」
「そう……なんだ……でも、僕に再会して嬉しかったって、君はただ魔法が上手くなりたかっただけだからなんだよね?」
「……ハハッ……そんなの、ただの建前さ……。」
「……へ?それって……どういう……?」
俺はメルラナの両肩を掴みながらゆっくりと身体を離して、彼女の目を見つめた。メルラナは少し困惑してたけど、明らかに頬が紅く染まって呼吸が荒くなっていた。
「俺は!メルラナと仲良くなりたくて会いに来たんだ!」
「!!!!!!///」
「初めて君を見た時、その天使のような可愛い姿に見惚れていた!魔法のことなんて正直どうでもよかった!だからもう一度再会したとき、変わらずに可愛い君を見て、本当に心が踊った!そして友達になってくれて、初めて君の名前と声を聞いて、そこも可愛いのかよって心のなかで叫んだ!そして君と何回も会う内に服とかもどんどん可愛くなっていくし!途中途中の仕草や君の優しい内面にも惹かれて、もうどうしようもなく暴れる心臓を押さえつけ続けていた!」
「ちょ、ちょっとっ……!」
「俺は!君の可愛くて優しい笑顔をずっと見ていたいんだ!」
「!!!!!!!///」
俺のどストレートな気持ちを伝えまくると、メルラナの顔はもう全体が紅くなっていたが、もう止まることなんてできなかった。
「だからさ、才能がないから諦めるなんて言わないでよ。きっとどこかに突破口があるはずだだから、俺と一緒に探していこうよ!何度失敗しても、成功するまで続ければ、それは才能って言えるんじゃないかな?」
「…………!!」
メルラナは顔が赤くなりながらも、綺麗な赤い瞳をより一層輝かせながらとてもうれしそうにしていた。
「まぁ、それでも君がダメだと諦めて一人になっちゃったりしたら、俺で良ければ一生傍に居るからさ!」
「え……それって……?」
(ん!?あ、ああ、あ、あ、ああ、ああ、あれ?なんか今までの伝えた言葉もそうだし、今のセリフって、思いっきり……プロポーズなんじゃ……!?)
メルラナは俺の肩に頭を押し付けて、身体を預けて固まっている。
「あ、あぁあ、あの……メルラナ……さん……?」
すると、メルラナはゆっくりと顔を近づけてきて、俺はキスをされるのではないかと思って咄嗟に目をぐっと閉じた、すると耳元にメルラナの温かい吐息まじりの可愛い声でこう囁かれた。
「……僕も、大好きだよ……」
気付いた頃には、メルラナは走り去っていて、俺はその場で状況が飲み込めないでいたけど、脳内にはあの言葉が響き続けていた。そして、カクカクと小刻みに身体を寮の方へと向かせて、ぎこちなく歩き始めた。
タッ……タッ……タッタッタッタッダダダダダダドドドドドドドドド
\ウオオォォォォォォォァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!/
もはや感情が爆発しすぎて、気づいたらすんごい大声を出しながら寮まで爆走していた。多分街に居た人たちも、寮に居た同級生たちも俺の狂乱状態を見て何事だ!?みたいな顔をしていただろう。俺はそのまま自分の部屋にすぐ入って、ベッドにすぐ潜り込んで枕に顔を押し付けてずっと叫びまくっていた。当然一睡もできずに朝を迎えて、寝不足のまま授業を受けていたら実技の授業中にぶっ倒れて保健室に運ばれてぐっすりと眠った。
一方、メルラナの様子は……。
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