マイ・ベスト・サキュバスフレンド?~面白半分で召喚魔法を使ったら、召喚されたのは美少女悪魔に変貌した男の親友だった!?~

仙道狐来

序章「神童」

第1話 自分の才能に目覚める「神童」

俺は、小さい頃に読んだ本の中の、英雄に憧れた。


剣も使えて、魔法も使えるその完璧な存在は、まだ世の中を知らないはなたれ小僧の俺「ファルコア=ブリムストーン」にとっての将来の夢になってしまった。


俺が産まれたこの世界、アルケニスは魔法文明が栄えていて、剣と魔法の技術を同時に高めていくのが一般化していた。


アルケニスは大まかに人族と魔族の勢力に分かれていて、人族は主に剣術に長けていて、魔族は魔法に長けていたが、明確に戦闘能力の差はなく、互いにただ見た目と価値観が違うだけの存在だった。


最初は互いに不干渉の状態が続いていたが、交流する機会が増えていく内にちょっとしたことで起こったくだらない小さな小競り合いが起こるようになって、それがどんどん大きな戦争になっていって長期的な戦争まで発展していった。


そんな戦争くだらない喧嘩を止める為に、王族が人族の中でも傑出した才能を持った4人の最強の魔剣士達を勇者として任命して、戦場へと向かわせた。


その勇者達が戦場へと向かう前のパレードみたいな祭典が俺の住んでいた街にもあった日、その時まだガキだった俺は勇者たちに声援を送る人々の間を必死にくぐっていった。きっとどんな人なのかを確かめたかったんだろうな。そして勇者たちの姿を見た瞬間、ひどく感動したんだよ、本の中でしか見たことがなかった「英雄」そのものが目の前を歩いている、空想の憧れだった存在が現実に現れたんじゃ、目を奪われるのも無理もないだろ?


俺は勇者達の実力に近づきたい一心で、がむしゃらに努力を重ね続けたさ。毎日剣を振って、休憩中は魔力を練り続けていた。まぁ最初の頃は知識とかもなかったから不格好な状態が続いていたが、何度も鍛錬を続けていく内に、剣ならどうやって振ったら腕に負担がかからないかとか、重心のバランスとか色々感覚でコツを理解するようになってから上達も早くなった。


魔力のほうも、最初はただ練り続けて貯めて放出するだけの繰り返しだったが、それだけで魔法が使えるわけでもなかった。自分なりの実験を何度もやり続けて、次第に魔力の扱い方を感覚で理解するようになっていった。ただ、魔力をコントロールするだけだと明確な属性を纏うこと無くただのエネルギーの塊として現れるだけだった。何かアプローチが悪いのか……?と、だいぶ悩み続けていた。


そんなある日のこと、解決策を考えながら河川敷を歩いていたら、近くで水が弾けるような大きな音が何度も聞こえてきた。


(川が近くにあるとはいえ、何だこの大きな音は?)


俺はこの時、この水の音が魔法によってできたやつじゃないかって考えがよぎった瞬間に足が勝手に動いて走り出していた。


音の発生源の場所についたとき、俺はその場で硬直した。そこには、宝石のようにキラキラと輝いている赤い瞳に、透き通るような白い肌、清流のような青色の長い髪を風になびかせる絵に描いたような可憐な少女が、水の魔法を空中に浮かばせていた。俺はその時、この天使のような少女に完全に一目惚れをしてしまった。


(めちゃくちゃかわいい……見た感じ……俺と同い年ぐらいかな……?)


俺は数分の間少女の姿に見とれていたが、水の弾ける音で意識を取り戻してすぐに彼女の使っている水の魔法に目がいった。


(アレは……初級魔法のウォーターボールだよな……?なんて澄んだ魔力で作らてた水なんだろう……。ん……?なんか……水の中がゆっくりだけどぐるぐるって回っている……?)


俺はグググっと目を凝らして水を観察していると、あることに気がついて。


「それだぁぁぁぁーーーー!!!」


と水魔法に指を指しながら思いっきり叫んでから、少女の名前も聞かずに走り出していた。


「へぇえぇ!?!?な、なに!?」


あの少女のことも知りたかったけど、それ以上に水の魔法の仕組みの一部に気づいて、試したくてウズウズしていた。


俺はそのままいつもの鍛錬しているところで、すぐに魔力を練り始めた。


(あのときのあの子のウォーターボール……あの水の中はゆっくりだけどぐるぐると回り続けていた……でも、多分それだけじゃダメだ!水の流れって、一定の速度のように見えて、実は違う……しかもいろんな方向に流れているから、魔力もその不規則な水の流れをイメージするんだ……!丸い瓶の中に、注がれた水を清流のように循環させるように……!)


目を閉じて、魔力にイメージを伝達して操ると、目の前にはあの少女が使っていたウォーターボールと同じものが出来上がっていた。俺はやっと形にできた魔法の姿を見て、目を輝かせたと同時に自分の両親にそのことをいち早く知らせたくて、全力疾走で家へと向かって、家に入って勢いよくリビングの扉をバンッと開けてこう叫んだ。


「父ちゃん母ちゃん魔法が使えるようになったぁぁぁぁぁーーー!!!」


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」「うわぁぁぁぁぁぁ!!何事だぁぁぁぁ!!」


俺の唐突な行動や発言に対して両親が怒る暇を与えることもなく、マシンガントークのように今まで一人で剣と魔法の鍛錬を行っていたことを伝えていた。


そうしたら親父は嬉しそうに大泣きして、おふくろは感極まって俺を抱きしめていた。そっからはもうトントン拍子で、当時7歳の俺は両親のツテでこの街オウレウールにある魔剣士養成学校ケストレイルに急遽入学することになった。


そこでは剣術や魔法の訓練とそれら関連の座学と一般教養を身につけられる学校だった。入試のほうは年齢のこともあってか、簡単な剣術と魔法の実技試験、少しの面接だけだった。剣術に関してはその歳にしては剣筋も綺麗と言われ、魔法も水属性の初級魔法だけしか使えなかったが、ある程度の種類の魔法は使えていたから、実技試験は結構良い線はいってただろうな。面接は……何喋ったかは覚えてないな……。まぁともかく、俺は無事入学を済ませて、そこから勉強の日々が始まった。


実技のほうはそこまで問題はなかったのだが、座学で少し躓いてしまった。昔から本を読むのは好きだったから文字というものには触れてきたが、座学はいわゆる様々な理論と応用を試される分野だ。授業を聞いても何がなんやらよくわからず、頭の中にはてなマークが常にある状態だった。課題を出されても、問題の意味がよくわからなかった。


(なんだこれ……?剣術の型の種類や歴史……?魔力操作の基本応用……?なんでみんなはこれを普通に覚えることができるんだ……?……悩んでいても、何も解決しない!だったら……アレだ!)


俺は意を決して学校の中にある図書館へとダッシュで向かった。


(ここには俺がまったく知らないいろんな知識がある!みんなが知っていることや、それ以上のことも、この1000冊以上ある本の中に全て書いてあるはずだ!)


俺はそこから多種多様な本を片っ端から集めて一つずつ丁寧に読み続けた。書かれている文章の意味を最初は理解できなくても、理解するまで何度も読み返す!図書館の本を借りることはできないから閉館時間までメモ用紙になぐり書きを繰り返す!そして書きまくった内容を学校の男子寮の部屋で消灯時間の近くまでできるだけ綺麗に内容を整理し続けることを続けていた。


その勉強方法を続けていたら、座学の内容がかなり頭に入るようになってきて、結構良い成績も取れるようになってきたが、ここで魔法の実技に問題が発生した。今まで魔力操作系は慣れていたから大丈夫だったが、入学してから未だに水属性の魔法しか使えなかった。魔法の属性は、基本属性が「火」「水」「土」「風」「光」「闇」の6種類があって、それぞれの基本属性を柔軟に組み合わせることによって、また違った形の魔法を作り上げることができると学んだが、俺は水属性以外の属性のイメージがまったく湧かず、悪戦苦闘を強いられることになった。


学校の休みの日に、外に出てどうこれを攻略するかを考えながら久しぶりに河川敷を歩いていると、魔力に属性を纏わせることを悩んでいたときに突然聞こえてきた水が弾けるような大きな音がまた聞こえてくる。俺はその時、基本属性の攻略云々を忘れて、もしかしてまたあの少女に出会えるんじゃないかと思って、その音の方向に走り出していた。


音の方向にたどり着くと、やっぱりあの少女が居た。あの時から数年経って、少女も少し背が伸びてたけど、あの時出会ったときと変わらず天使のような可愛らしい姿だった。


(やっぱり……めちゃくちゃかわいい……それに相変わらず綺麗な魔力操作だ……。)


今回は見惚れる前に、少女に声をかけた。


「ね、ねえ君……あのときの……君だよね……?」

「ふえ!?……えっと……君……確か僕がここで魔法の練習をしていた時に見ていた男の子だよね……?……あの時君が突然大きな声を出したから……僕、びっくりしちゃったけど……うん、覚えているよ。」


(あのときのことを覚えていてくれてたぁ~!しかもめっちゃ声も可愛いし、ボクっ娘なんだぁ~!)


「あ、あぁ、えっと……あのときは突然大声を出してごめん!あまりにも綺麗な魔力操作だったから、つい見とれていて……。」

「……!ありがとう♪こういうことは初めて直接言われたから、とっても嬉しいよ」


少女は俺にすごく優しい笑顔を向けてくれて、かわいい笑顔すぎて正直ドキドキが止まらなかった。


「えっと、今俺さ……水属性以外の魔力の属性化ができずに悩んでいて……その……よかったら何かコツってのを教えてほしいんだ……!」


俺は少女に頭を下げて、素直に懇願した。


「ふふふっ、うん、いいよ♪」


ちょっと戸惑いながらも、少女は笑って了承してくれた。


俺たちはお互いに名前を教えあって、少女はメルラナと名乗ってくれた、名前までかわいいのずるいとかこの時思っていたな。メルラナの説明は丁寧で分かりやすく、俺の細かい疑問にもしっかり答えてくれた。メルラナが言うには、基本属性それぞれの使う魔力の量が根本的に違うこと、大きさや形に依存されるのは共通だが、それぞれの属性によっていわゆる質量をイメージしないと、うまく発動しないらしい。だがその質量のイメージをカバーできるのは、魔力制御の精度を上げていくと自然と簡単に発動できるようになると言っていた。


俺は説明を聞いて、色々試したい気持ちになって、学校がない日は色々教えてほしいとメルラナに伝えると、彼女も笑顔で了承してくれて、俺はめちゃくちゃ喜んでいた。というか単純にメルラナに何度も会って話がしたいだけでもあった。まぁそんな恋心は置いといて、メルラナの指導の元、俺はものすごい順調にコツを掴めるようになっていった。学校ではしっかり授業を受けながら勉強を続けて、休みの日はメルラナに会って指導してもらう生活を続けて、いつしか基本元素全ての初級魔法を扱えるようになっていた。


そこからの俺の成長は凄まじい勢いだった。剣技は基礎をしっかり学んで、本で見た剣の型を全て試しまくって徐々に動きをモノにできるようになっていって、魔法の方も初級どころか、中級、いつしか上級まで扱えるようになっていって、座学のほうも図書館の本をいつの間にか全て読みつくし、学校の想定を遥かに超える成績を叩き出すようになって、何もかもが完璧にこなせるようになっていった。


学校のクラスメイトも、教師の人たちも、いつしか俺を「神童」と評価するようになっていった。


これが俺をくだらねえ人間に変えた発端にもなったんだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る