〜歌姫編〜 第2話 芽生える友情と恋心
私、夏目恵梨香は姫海空のことが好きだ。
きっかけと言えるようなエピソードはないけど、同じクラスになって、席が近くなって、くだらない話しするようになって、気づいたら好きになってた。
高1の6月高校生になって初めての定期テスト明け、クラスで席替えがあった。
私と空はそれまで話したことはなかったけど席が隣同士になりよく話すようになった。
「ねえねえ、テストどうだった?」
全教科のテストが返却された後初めて声をかけられ驚いてしまった。
そんな私の様子を空も察したようだ。
「ごめんね、いきなりで。俺、姫海空って言うだ。」
「ううん、こっちこそごめん...私は夏目恵梨香」
軽く自己紹介を済ませ、テストの話を続ける。
「うわっ!数学百点じゃんすご!」
「まあ...最初だし。ていうか姫海くんも94点って十分でしょ」
「いやいや、99点と100点の間にはそれはそれは高い壁があるんだよ!」
「ふふ、何それ」
この時に分かったことは私も空も理系科目が得意で文系は苦手。特に私は顕著で、理系の点数は全て空に勝っていたけど文系は全部負けていた。
「はあ〜なんか自信なくすな〜。自分のこと理系だと思ってたのに」
「え〜どっちも出来てるんだからいいじゃん。私こそ自信なくすよ...」
「どっちもできると言えばさ、三姫の白雪さん!今回も1位なんじゃないかな」
入学式では新入生代表挨拶をしていた。つまり入試の成績で1位ということだ
「文系理系どころの話じゃないよ。体育も美術も音楽も完璧って話」
「何その最強生物...」
それからしばらくして、私は空が音楽活動をしていることを友達づてに聞いた。
「ねえ姫海くん!歌手なの!」
「誰かから聞いた?実はそうなんだよね」
「何だよ言ってくれれば良いじゃん」
「いや自分から言うのは自慢してるみたいで嫌じゃん」
どんな曲か気になって空の一番のオススメ曲を聴いてみた私から出てきた感想は...
「うーん、なんか微妙...」
「えっ?」
「あっ!ごめん」
空の驚いた表情を見て私は後悔した。どうしていつも思ったこと全部口に出しちゃうんだろうと、相変わらず気の使えない奴。
「ううん、そういう素直な感想はありがたいよ。よかったらどこがダメだったとか教えてくれない?」
「うーん、ダメってわけじゃないけど...何かどっかで聞いたことあるようなって気がしちゃうんだよね」
「そっか...オリジナリティが足りないのか」
ブツブツと何か喋りながらメモを取っている空を見て、努力家なんだってすごく感心した。この時私は絶対売れてほしいって思った。
それからも空と話すことが凄く楽しくて好きになってた。いつからって言われるとよく分からないけど。
9月、空はドラマの主題歌を担当しブレイクした。その後も順調にファンの数を増やし、今では動画配信サイトでの楽曲の再生数は1億を超え、シングルのCDの売り上げランキングでは1位を達成していた。この学校でも四姫なんて呼ばれだして、遠い存在になってしまったとそう思った。
頑張っていた事はよく知っている。だから嬉しい...嬉しいはずなのに何故か寂しくて、席も離れたから話す回数もだんだん減っていった。このままどんどん遠くに行ってしまうことが耐えられなくて...
告白したいって思ったけど、ただの友達としか思われてないって勝手に決めつけて諦めた。私には勇気がなかった。
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