丘の上に立つ白い時計台。
これを建てたのは、主人公のひいおじいちゃんでした。
毎日ネジをまき、油を刺して手入れをしたのだそうです。
ひいおじいちゃんには、息子と娘がおったのですが、娘の方は流行病で亡くなってしまいました。
それでも、時計台は時刻を刻み続けていました。
昼も夕もなく、ひたすら歯車を磨いて、娘の愛したこの音を絶やさぬように。
それからやってきたのは、戦争という現実でした。
それでも、時計台は時刻を刻み続けていました。
不思議なことに、
時計台の屋根には天女のような少女が現れ、
爆弾から、戦火から、おじいちゃんたちを守ってくれたのだそうです。
丘の上の白い時計台を軸に、一つの歴史を紐解く物語にございます。
私はよく旅先で、別に観光地でもないのに、古い木の橋や、誰も住んでない古民家によく目が行きます。
時代に取り残された、いや、そこだけまさに時間が止まったみたいな、
異物、遺物などと言って仕舞えばそれまでなのでしょうが、
その橋にも、その家にもきっと歴史がある。
もしかしたらこの時計台も、皆様はどこかで見かけたことがあるやも……しれませんね。
丁寧に書き込まれた文章は非常に読みやすく、
ノスタルジックな気持ちを呼び起こしてくれます。
おすすめです。是非、ご一読を。
ぼくのひ祖父は村の時計台を作るのに尽力した。それからも鐘が鳴り続けるよう努力したが、可愛がってた娘を亡くし、また、戦争という災いが一家を襲う。その時に見たものは――
とても端正なタッチで描かれる物語です。
最後に村いちばんの高い時計台が、街の建物に隠れてしまっても鐘は鳴り続けている、というところがとても好きです。でもスマホの方が時刻も合ってるから聞く人はほとんどいないのも。
それでも愛情を受けて受け継がれてきた時計台がいまもどこかで鐘を鳴らしてると思うと、その歴史も考えて、切なく愛おしく感じます。
素敵な作品をありがとうございました…!
素直に、とても上手いと思いました…!!