幸せな日常

冬雫

しあわせって?

「幸せとは、お金があることではありません。大袈裟なことでもありません。些細なことでいいのです」

どこかで響く、誰かの声。何かの公演だろうか。

(聞き覚えがあるような·····)

信号待ちをしていたゆかりは、キョロキョロと当たりを見回した。

横断歩道の向こう側に、演説をしている男性を見つける。

先程から演説しているのは、彼のようだった。

選挙活動だろうか。

信号が青に変わり、歩き出したゆかりの耳にひときわ大きな声が届いた。

「幸せとは、些細なことが積み重なってなるものです」

男性の前を通り抜けた時、その言葉はやけにはっきりとゆかりの耳に残っていた。

(··········まさか、それを実感することになるなんてね)

ふっと目を閉じて、隣にいる彼の肩に頭を乗せた。

あの頃は、こんな風になるなんて思わなかったのだ。

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