第7話:王女からの追い風

 寝るとしますか…

 …てか、エルシアの魔法の音がうるさい。というかまだいい感じで仕留めれてないのか…

 頑張って寝る。

 頑張って寝るなんてことなんて今までなかったけど…どういうことだ?

 とりあえず、目をつぶっておけば寝れるかもしれn…


 ―――翌朝


 いい朝じゃないですね。エルシア、許さない。最終的には寝れたが、寝付きが悪かったのか全然清々しい朝を迎えられなかった。結局うまく仕留めれたのか?

 馬車の中を見るとエルシアがいるのが確認できた。納得行ったのか?

 まあ、エルシアのことだ。考え無しで運任せに魔法をぶっ放していただけだろうし、成功はしなかっただろうな。

 バァカだな。


 朝食の準備でもするとしますかね。

 パンと干し肉と、コップ。水はエリスかエルシアに頼む。


「るーく?おはよう」


「おはようございます、エリス。朝食の準備は済んでいるので早速食べましょう。」


 エルシアとは言うと、まだ寝たままだ。

 エルシア抜きでも朝食は美味しいはず。それにエルシアが朝食をなしでも問題ないだろうな。

 文句は言われるかもしれないけれど


 朝食を食べ終え、それぞれ出発の準備をした

 私は馬の体調確認、馬車の状態確認、剣の状態確認。

 エリスは食料の保存状態、対魔用の結界を解除をする。

 対魔用の結界はエルシアには全くと言っていいほど効果がない。魔力濃度が高すぎるからだ。


 出発の準備が済んだので、寝たままのエルシアを馬車に乗せたまま出発した。


 エルシアが起きたのは、昼の少し前。

 朝ごはんを求められたが、昼食も近いので拒否した。


 昼食を食べれそうな場所についた。


「それでお昼ごはんはまだなの?ゆ…ルーク?」


「…あの木の下のところで食べましょう。」


 木の下で昼食を食べることが決まった。

 エルシアさっきユアンって言いかけてたな…気をつけてもらいたい。エリスが近くにいるんだから

 いつも通りに、パン、焼いた肉、スープ、果物


 これ以降王国に辿り着くまで何事もなく突き進んだ。

 移動して、ご飯食べて寝て、また移動する。

 何事もなかったおかげで1日早く着くことができた。


 ―――王国―――


 ここがアヴェロン王国か…実際に来たのは生まれて初めてだな。


「ようやく着きましたわね、ルーク?」


「ええ、そうですね。しかしエリスとの旅は長く感じませんでしたけどね。エルシアが加わってからのほうが長かったような気がしなくもないですけれどね。」


「もう!ルーク、エルシアさんが可哀想でしょ?エルシアさんがいなかったら、僕の勉強がここまで進まなかったんだから!」


 あのエルシアとはいえ、エリスを支えてもらっているところを考えるとありがたい。


「そうですかね?エリス?エルシアさんと一緒にいると旅の中でろくなことしかなかったでしょう?」


「ルーク…?一体何のことを言っているのでしょうかね…?エリスちゃんも気にしないの!」


 そんな他愛のない話を話すつもりが、なんだか怒りを買ったような気がする。いぃや、確信。

 王国内で過ごす計画を大まかに伝えましょう。

 王国を出発するのは1週間と4日後。

 その間は各自自由行動だ。

 私としては、ローブの調達がしたい。もしこの王国に存在するのなら義手が欲しい。


 宿泊する宿はすでに目星をつけている。少し高いが、ベル村と似たような宿に泊まる。

 朝食、昼食、夕飯付きの大浴場付き。

 完璧だ。快適な王国生活ができそうだ。


「それでは、各自自由行動としましょう。ある程度のお金は渡しておきます。しかし、使用はできる限り控えてくださいね。今後の旅に支障が出るかもしれないので」


「うーん…私は今のところ使う予定はないので貰わなくて大丈夫ですわ。最悪、自分で稼げばいいですし」


「僕は少しだけもらっておこうかな、このあと図書館に寄ってほしい本があるかもしれないし」


 とか言いつつも、支障が出ることなんてないんですけどね。ダークエルフから十分な資金はもらったから全然大丈夫。

 ということで、私はお気に入りのローブを探しに行こうか!


 ―――服屋にて


「あらま、お兄ちゃん?どうしたの?」


「ローブを探しに来ました。ローブをまとっていないと気がすまない人なのでね」


「とか言いつつ、ちゃっかり剣を持っているじゃないか!?剣士なら今のところその格好のままでもいいんじゃないのかい?でも、まあ、ローブが欲しいなら紹介するよ」


 赤と黄色のローブ、緑一色、表は茶色、裏地は赤のフード付き、灰色の物、灰色と黒が織り混ざった物。

 他にも種類があったが、特に目をつけたのがこのあたり。

 今のところ、お気に入りは灰色と黒が織り混ざった物。

 フードがあれば完璧


「お目当てのものは無いようか?」


「灰色と黒が入り混じったものでフード付きのものはないですか?」


「となると、付け加えることはできるが、少しお金がかかるよ?」


「構いません」


「わかった、縫合するから時間かかるよ?予約も埋まっているし、完成するのは2日後になるけど…」


「はい、2日後また来店しますね」


 もう日が暮れそうなので、宿に戻る。

 当然というほど、エリスが勉強中。

 ローブを購入するとなると、旅の分の費用が1月分消え去るのでまたお金稼ぎが必要。


 夕飯の時間が近い。エルシアがまだ来ていないが、あのエルフのことだし何も問題ないだろう。

 ひどい扱いをしていると思われているが、生前はひどいことしかされなかったものだね。


 ◆◆◆生前◆◆◆

 エルシアと初対面―――

「ほぉ?お主が魔道士ユアンか…この年にてここまでの境地に至るとはな。」


「お褒めに預かり光栄です。エルシア様の功績も幾度となく耳にしています。」


「と、かしこまって固まった挨拶はもう終わりにしましょう。それで?ユアンはどうしてここに来たのかしら?」


『エルシア様、あなた様が招待しました』


「あらごめんなさいね。私が招待したことになっているみたいでね?なにか御用があったみたいだけれど、忘れてしまったわね。変に呼んでしまってごめんなさいね」


 ね。がうざったらしい。それに加え、招待を私に送っておきながら用を忘れ、帰そうとするとはね……

 衛兵からこっそり伝えられなかったら、そのまま気づくこともなかっただろうに…

 魔王とはいえ失礼でしょ……


「あ!思い出したわ。次元門について教えてもらいたいと思って招待したのよ。」


 ―――次元門について教える。調査したこと、起こった出来事などを話した。


「そうだったのね。心中お察ししますわ。」


 幸いにも、人の悲しみを共感する気持ちはあるみたい。

 逆にされないとなにかおかしいと思ってしまう。


「次元門を直接目視できませんでしたが、魔王カイザーと出会ったことから次元門の存在は確かでしょうね。

 そうですね。いくつかの文献には大陸が存在すると書かれていましたが、見えなかったですね。

 私も大陸が移動する方向からして大陸が存在していてもおかしくないと思っています。」


「興味深いわね。今日はここまでにしておきましょう。ユアン、あなたは後で私の元に来てくださいね」


 ーーーここまでは良かった。少し威厳が強くて、わがままな魔王なんだなって思ってた。


 エルシアの個室にてーーー


「はぁ〜疲れたわね。ところでユアン!魔王カイザーはどんな姿をしていたのかしら?!」


「エルシア様、魔王カイザーは悪魔族です。姿は見えませんし、魔力を探知して大まかな形を捉えることが限界です。

 魔力に定まった形はありませんし、色もありません。言えることは魔力密度が異常に高かったことですかね」


「んも〜答えになってないじゃない!

 まぁ、いいわ。それでお願いが一つあるの」


「な、なんでしょうか…?」


「お金を貸して欲しいの!」


「!?お、お金ですか…」


 ーーーお気づきでしょうが、この辺りから私の魔王エルシアは壊れました。

 この後お金を貸したけれど、貸した分のお金が返ってくることはなかった。

 今世の旅の途中に「貸したお金はいつ返してくれる?」と聞いたら、「あなたはルーク、ユアンに返さないと…それにユアンはもういないから返す相手がいませんわ!」ってさ。

 返せよ!

 それで当時は返済のことを聞くと、忘れたフリをするからムカついた。ーーー


「あら、ルーク酷い顔をしているわね。どうしたのかしら?w」


「いえいえ、昔のいやなことを思い出していただけです。ちょっとした金銭トラブルですけど…」


「そうだったのね、お気の毒に。それでエリスちゃん!私お腹すいちゃってて早く晩御飯食べたいの!だから、食堂に行きましょう?」


「後少しだけ待って欲しいです!後ここだけなんですよ…」


「どれどれ…」


 エルシアはエリスに対してはほんと扱いが良い。ルークについては前世がユアンってこともあり、二人きりになると態度が豹変する。

 酷いことだ。


「あ!なるほど!ありがとうエルシアおねえさん!」


「良いってことよ!それより早く晩御飯食べたいの!早く食堂に行きましょ?」


 朝の食堂はとても静かだ。対して晩御飯はと言うと、冒険者が酒を飲んで騒いでいるので、とても騒がしい。でも私はそのくらいの方が雰囲気として好き。

 朝食の内容はパン、ベーコン、目玉焼き、スープ。

 少し量が多いが、逆にこのくらい食べれば夜はぐっすり眠れそうだってこと。


「それと、エルシアさんは今日のお昼の頃は何をしていたんですか?」


「そのねぇ、街中を見て回ろうとしてたら急にこの王国の衛兵に捕まってしまったのよ!何もしていないのによ?」


 ーーーエルシア視点


 ここも私の領土とは言え、来たことはないのよね…

 魔王歴600年だけれど、一回も来たことがないのは魔王としてどうかしらね!


「ちょっとそこ待ってくれないか?少しお話を聞かせてもらいたい」


 あら、何か貰えるのかしら?それとも私が魔王だって気づいたのかしら?やっぱりオーラは隠しても気づかれてしまうものよね。


 ここは…お城かしら?

 監禁って可能性もあるかもしれないけれど、その時は自力で脱獄してやろうじゃないの!


「連れてきました、お嬢様」


「ありがとうございます、申し訳ないのだけれど貴方達は下がってもらえるかしら?

 ……そしてようこそいらっしゃいましたエルシア様」


「よく気づいたわね。オーラはかなり抑えてたつもりなのに」


 アヴェロン王国第3王女、イグノランス・アヴェロン


「実は私生まれつき目が見えないのよ。その代わりに魔力をおかしいほど察知できるの。一度感じた魔力は永遠に覚え続けられる。操ろうと思えば操れるかもしれないわね」


「目が見えない代償として、異常なまでに発達した魔力探知能力、興味深いわね。それにしてもよく殺されなかったわね、異端児扱い(悪魔の使い)されていてもおかしくないのにね」


「目に見えてはっきりしている部分だったなら捨てられていたかもしれないけれど、生まれた直後なら目が見えないなんて気づかれないもの。

 ある程度育って私の存在が知れ渡ってきた頃に目が見えないことがバレたのよ。

 もうこの頃になると、私が殺されても家の名誉にも関わるし、誰も私に手を出せないわけよ。

 運が良かっただけね。」


 生まれて間も無くなら、死産ってことで処理できるけれど、ある程度育って貴族の子供の名前が知られている状態で、子供が殺害や死んだなんて知られたら「そこの貴族は何をしてやがる!」なんて言われて名誉を失いかねないから


「そうだったのね、それで今日は何のご用なのかしら?」


「…エルシア様がいらしたのですから、王国に何かあったのかと思いまして、ここまでお呼びいたしました」


 …今この王国は至って平和、ユアンが何か困っているわけでもなさそうですし…


「暇なので気ままに領土内を旅していましたのよ」


「そうなのですね!旅の途中でしょう?何かお困りのことはありますでしょうか?」


「この王国には1週間と少しほど滞在する予定ですわよ。正体は隠しておきたいからそちらからの干渉は控えてちょうだいね。本当に困ったことがあればこちらから向かわせてもらいますわね」


「わかりました。ゆっくりお楽しみください」


 ーーー


「ってことがあったのよ」


「そうだったのですねとはなりませんが、エルシアさんって魔王だったのですね(皮肉)」


「エルシアお姉さんって魔王なんだね!気づかなかった」


 エリスの一言が強すぎる…本人は気づいてないかもしれないけれど、エルシアにはキツすぎる一言だ。


「ま、まぁ王女さんを利用するても良いかもしれないわね。宿に戻ったら話し合いしましょうね」

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