最終話 終わりと始まり

 夕方。陽が落ちかけた空が、柔らかなオレンジと群青を混ぜ合わせたような色に染まり始めていた。


 いつもの公園には、文化祭を終えたばかりの翔太たち六人が集まっていた。ベンチに座る者、ブランコを揺らす者、芝生に寝転がる者――みなそれぞれの姿で、一日の余韻をかみしめていた。


「ふぅ……文化祭、終わっちまったな。」


 烈が空を見上げながら、ぽつりと呟いた。


「終わったっていうより、やりきったって感じじゃねぇか?」


 猛がいつになくしみじみとした声で返すと、理沙が笑いながら肩をすくめた。


「こんな真面目に何かに向き合ったのなんて、人生で数えるほどしかねえ。マジで楽しかったし、いい経験だったと思う。」


 翔太は、スケッチブックを膝に乗せたまま、みんなの顔を順に見つめた。


「……ありがとう。俺、たぶん一人だったらここまで来られなかった。漫画を描くのも、誰かに見せるのも、正直怖かったんだ。でも――みんなと一緒に作れたからこそ、今すごく誇らしいよ。」


 その言葉に、美雪がふっと笑って言った。


「何言ってんだよ、翔太だけじゃないよ。ウチら全員そうだった。みんなそれぞれ、自分じゃ出せなかったものを引き出してもらえた気がする。たぶん、これが"仲間"ってやつなんだろうね。」


 そのとき、無言だった優がポケットからノートを取り出し、一枚のスケッチを広げた。


 そこには、公園のベンチに座る六人が描かれていた。皆が笑っていて、空はちょうど今と同じ、茜色に染まっている。


「……これ、文化祭よりも完成度高くねぇか?」


 烈が思わず感嘆の声を上げると、優は肩をすくめるだけだった。


 翔太がそっとスケッチを受け取り、にっこりと微笑んだ。


「ありがとう、優。今日という日が、ちゃんと形に残って嬉しい。」


 一瞬の静寂の後、理沙が立ち上がり、少し照れくさそうに言った。


「……あたしさ、このメンバーなら、きっと何をやっても面白いことになると思う。文化祭が終わったって、もうおしまいだなんて思ってないからな。これからも、一緒に色んなこと、やってこうぜ。」


 猛が立ち上がって拳を突き上げた。


「おう、異議なし!」


 烈も続く。


「次は何をやる? 動画? 音楽? それとも新連載か?」


 美雪が笑って応える。


「まあ、まずは今日くらいゆっくり楽しもうよ。ね、翔太?」


 翔太は空を見上げながら、ゆっくりと頷いた。


「……ああ。だけど、これが終わりじゃなくて、始まりだと思ってる。きっと、もっと面白い未来が待ってる。そう思えるのは――君たちがいるからだよ。」


 その言葉に、全員がうなずいた。誰も声を出さずとも、同じ気持ちが共有されていることが、自然と伝わっていた。


 風が木々を優しく揺らし、茜色の空が少しずつ夜に染まり始める。


 友情は、戦いや誤解を越えて、静かに、しかし確かに育まれていた。


 こうして、翔太たち六人の物語は、文化祭を節目として新たな章へと歩みを進めていくのだった。


 ――そして、それはまるで一篇の青春ラブコメのように、色鮮やかで、どこまでも優しい物語だった。

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ヤンヤンスケ暴! 飯田沢うま男 @beaf_takai

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