(仮名)魔法少女 アウトサイダーズ

星の薫製

第1話 現在書いているものを終わらしてから本腰入れる予定です

2010年

 日本で突如発生した人が怪物になる現象。

後に魔人現象と呼ばれる脅威が発現した。

 力尽きるまで異形と化して暴れる存在に人々は恐怖した。

 しかしそれと同時に希望が現れた。

「マジカルアクア!」

「マジカルフラワー!」

「マジカルブライト!」

「マジカルアース!」

「マジカルサンシャイン!」

「「「「「五人で一つの希望、マジカルスターズ!!!!!」」」」」

 始まりの魔法少女マジカルスターズ。

 彼女達の活躍により魔人の被害は減少、後にマジカルスターズのリーダーであるマジカルサンシャインである日野ひの凛音りんねが総帥として魔法少女連盟が設立、日本全国で魔法少女達が活躍できるよう手厚い育成やサポートを行っている。

 そして2046年、魔人との戦いは魔法少女が活躍する一つのエンターテイメントとして確立していた。


「新入生、起立!」

 マイク越しの女性の声がかき消されるほどの音の正体は立ち上がるほぼ16歳の若人達。

 私立法王学園しりつほうおうがくえん、環境が整った美しい学舎ではあるのだが、その中でも魔法少女連盟の本部に最も近い学校。

 誰が言ったかもう一つの魔法少女の総本山。

 この学園に通う魔法少女は多いだけでなく、レベルも高い。

 中にはアイドル魔法少女と呼ばれる人気と実力を兼ね備えた者も多数在籍している。

「でゅふふふふ……拙者1年A組。即ちプリティデルタのお三方とクラスメイトという概念に到達したでござる」

「さすが伊藤氏、我には及ばぬ次元へと到達しせり」

 なのでこういう輩も珍しくはない。

だが教育機関としては他の学科と大差ない、普通に学び、普通に友を作り、普通に遊ぶのだ。

桃園ももぞのさん…!よかったらお友達になってくれますか!?」

「ええ!?そんな畏まらなくてもいいよ!」

 桃園ももぞのあい、ピンクの可愛らしい髪とそれに合った愛くるしい姿が特徴の女の子。

 そしてトップ魔法少女アイドルチームプリティデルタのプリティラブその人である。

氷川ひかわさん!ぜひよければ今年のクイズ甲子園の本校代表になっていただけませんか!?」

「嬉しい誘いだけどごめんなさい。学業と魔法少女の二つだけで精一杯なのでお断りさせていただきます」

「というわけで私も部活とかは無理だからごめんねー⭐︎」

 凛々しく佇む青みがかった黒髪のクールビューティーな女の子、氷川ひかわ撫子なでこ

 そして黄色い髪の明るく元気な女の子、黄瀬きせきらり。

 それぞれプリティデルタのプリティクリスタルとプリティシャインである。

 今を煌く若きスターにクラスどころか学年レベルで賑わう早目の放課後。

 そんな彼女達を横目に帰ろうとする少女がいた。

 灰色の髪に威圧的な雰囲気の鋭い目つきの女の子、灰崎はいざき礼羅れいら

 彼女も魔法少女だが、その名はない。

 魔法少女にも練習生や預かり所属のような段階が存在する。

 世間一般的に知られている魔法少女はいわば売れっ子。

 すべての魔法少女が平等に才能や活躍が持てるわけではないのだ。

 礼羅もそんな恵まれなかった一人。

 輝かしい同年代の彼女達への嫉妬はないというわけではないが、軽蔑もある。

 そして魔法少女という存在が身近な彼女にとってはプリティデルタは珍しくもなんともない。

 入学初日で早く学校が終わったのならとっとと帰ろうとしたその時、

「ねぇ」

 礼羅を引き止める声があった。

 振り返るとそこには真っ黒な髪の冷たくどこか神秘的な雰囲気の少女がいた。

 どんな者でも初めての美しいものには言葉を失う。

「ごめんなさい。私も帰るとこだからクラスメイトだしよかったら一緒にどうかって?」

「あ、ああいいけど…」

 彼女の存在に呆気に取られながらも礼羅は答える。

 そんな輝く教室の影に二人は向かっていった。

「ああ、そういえば名前言ってなかったね。私は赤山あかやま輝夜かぐや、あなたは?」

「私は…灰崎礼羅。呼び方は…なんでもいいよ」

「じゃあ崎羅ザキラで」

「ごめん礼羅にしてお願い」

 輝夜の予想外の答えに礼羅はキツくツッコむ。

「それじゃあ私のことは輝夜って呼んで」

「OK。そういえば輝夜って家どこなの?」

「二駅先の窓香まどか駅から十分くらいのマンション」

「そっか、私はこの近くのマンションだから明日から自転車生活」

「自転車毎日は飽きそう」

「飽きるってか鬱になる」

「そうなったら礼羅はいつか魔人になるかもね」

「魔人…」

 輝夜の冗談に礼羅の口が止まる。

 魔人現象の原因は過剰なストレス。

 それは魔法少女だけでなく今では一般知識だ。

 だが魔人に対抗できるのは魔法少女のみ。

 その魔法少女の今の在り方に礼羅は少し思うところがあるのだ。

「……輝夜、今日この後時間ある?」

「あるけど相談ごと?」

「まあ…相談っていうか愚痴になるかな…」

「それならちょうどいい場所があるけど」

 そう言って輝夜が指差したの先にはファストフード店があった。

「私、一応は魔法少女なんだ」

 大体魔法少女バレというのは熱い展開なのだが

「へぇ〜礼羅もそうなんだ」

 魔法少女に憧れ、連盟の試験を受ける女の子が多数いるこの時代にとってはそれほど珍しいことでもない。

「私は、悪い魔人を倒して人を救うのが魔法少女だと思ってた。でも実際は色目使ったり媚売ったりが重要で戦う力なんて大して必要ないのが現実だった……戦う力だけで上がろうにもそんな機会は滅多にないし、もう魔法少女を辞めた方が楽なような気がして…」

「理想と現実の乖離。死んだ母さんもそういう話をしてたけど、そういう時には一番やりたいことを思い出すのが大事って言ってた」

「一番やりたいこと…」

「礼羅は何をしたいの?」

「私は…………悪いやつから人を」

 礼羅の言葉に割り込んで大きな地響きが発生する。

「きゃあああ!」

「お客様方!落ち着いて座席の下に隠れてください!」

「これは…」

「近くに魔人が現れた」

 彼女達の予想通り、近隣では魔人と化した者が暴れていた。

 ドス黒い混沌とした刺々しい巨体はまさに怪物と呼ぶに相応しい存在だ。

 そんな怪物に立ち向かう三人の少女がいた。

 その名もプリティデルタ。

 今が旬のアイドル魔法少女チームだ。

「ラブショット!」

 可愛らしいピンクのツインテールの少女プリティラブのステッキから光の弾が発射され、魔人に直撃する。

「いいぞープリティラブ!」

「初の生プリティデルタなんだ!頑張れよ!」

 安心感か慢心か、彼女達の戦う周囲に野次馬が何人もいる。

「皆さま!早く避難してください!」

「いっつも言ってるけど無駄でしょ。だって私達有名人なんだし!」

 避難を促す凛とした青髪の少女プリティクリスタルに呆れながらも魔人に蹴りを放つ鮮やかな黄色髪のポニーテールの少女プリティシャイン。

 そんな彼女達の活躍の場は、有名アーティストのライブに等しい熱気に満ちていた。

「相変わらず無駄に派手にやってるな」

「それはそう。とっとと急所を狙って倒せばいいのに」

 輝夜と礼羅は遠方からその光景を食べ残したファストフードを食べながら見ていた。

「輝夜、魔人にした攻撃は元に戻った後にも後遺症が出ることもあるからな。魔人の心臓を刺して倒した結果、元に戻っても心肺停止したなんてこともあるらしいし」

「へーそうなんだ。でも、魔人に人が襲われたらそれどころじゃないでしょ」

 輝夜が冷たく言い張る中、プリティデルタは苦戦していた。

「この魔人やけに硬い!」

「効いてないというより効き目が薄い感覚がします…」

「どっちでもいいでしょそんなの!」

「ゴボォォォ!!!」

 魔人が雄叫びを上げると、全身の刺々しい体から棘を飛ばしてきた。

「うわぁ!」

 プリティデルタ達はそれを避け防いでダメージはなかった。だが…

「ぃだああああ!!!」

 野次馬の一人に棘が突き刺さった。

「え、うそん」

「これマジじゃね!?」

「ヤバいって!」

 痛々しい同類の姿を見た野次馬達は一斉に逃げていく。

「ちょちょちょちょ!なんか一斉に来た!」

「礼羅こっち!」

 人の雪崩が押し寄せる最中、輝夜は礼羅の手を引き路地裏へと駆け込む。

「ありがとう輝夜…それにしてもいきなりなんで…」

「助けてぇぇ!!!痛いよぉぉ!!!」

「遠くでよくわからないけど、多分民間人に被害が出た」

「マジか…」

「で、礼羅はどうするの?」

「どうするって?」

「魔法少女なら加勢に行くべきだけど」

「いや、連盟からの要請がないと魔法少女としての活動は基本してはいけないんだ。それに私みたいな魔法少女としての名前がないやつが呼ばれることはない…」

「そうなのね……じゃあ私が戦うしかないか…」

「そうだな。私が戦えないなら…え?」

 輝夜はファストフードのゴミを鞄の中に入れると、そこから小さな黒いステッキを取り出した。

「変身」

 輝夜が冷たく呟くと、彼女の体が漆黒の光に包まれる。

 その中から現れたのは漆黒の髪と衣装を靡かせる少女の姿だった。

「輝夜…お前…」

「なる早で終わらせるから、110番して」

「なんで…警察…?」

「……ごめん普通に間違えた。119番、怪我人がいるから」

「あ、ああ…」

 気まずい空気から逃げるように輝夜は路地裏から飛び出していった。

「助けてぇぇ!!!痛い死ぬ!!!」

「うるさいな!それなら早く逃げなよ!」

「動けない!痛い!死ぬ!!」

「ああもうイライラする!」

 負傷して泣き叫ぶ民間人とまさかの強敵の板挟みにプリティシャインの口が悪くなる。

「きゃあああ!」

 魔人の攻撃でプリティクリスタルは吹き飛ばされ近隣の建物を突き破り入る。

「クリスタル!あっ!きゃあああ!」

 よそ見したプリティラブに魔人の棘攻撃が直撃する。

「このままじゃ…私達も…」

 近づく魔人を前に絶望するプリティラブ。

 その時、魔人の足から大量のドス黒い液体が噴き出る。

 そしてその近くには黒い銃剣を持った輝夜の姿があった。

(関節まで硬くなくてよかった)

 内心そう安堵しながら輝夜は魔人のもう片方の足の膝の裏に銃剣を突き刺すと引き金を引いた。

「だ、だめっ!」

 プリティラブの制止と共に爆発が起き、魔人の片足は膝の皿がなければ真っ二つになっているほどぐちゃぐちゃになっていた。

 当然そんな足で立てるわけもなく倒れる魔人。

「これで終わり」

 輝夜は無防備な魔人の目を貫き、再び引き金を引く。

 爆風が輝夜と魔人を包み、消えた時に残っていたのは魔人から元に戻った人の姿だけだった。

 

「ただいま」

「もう倒したのかよ…」

 ついさっき119番の電話を終えた礼羅は、予想の何倍も早い輝夜の帰還に呆気に取られた。

「じゃあ帰ろっか」

「お、おい!輝夜も魔法少女だったのかよ!?」

「そうだけど…そうじゃないかな?」

「どっちだよ!?ってか変身してたし魔法少女だろ!」

「でも私は魔法少女連盟と関わったことは一切ないよ」

「えっ!?」

 魔法少女になるには本部支部問わず魔法少女連盟に所属しなければならない。

 謎が謎を呼ぶ赤山輝夜との出会いが礼羅のそして世界を変える奇跡であることは誰も知るよしもない。

「私とはこれからも友達でいてほしいけど、さっきのするのことは秘密してほしい。だって私は魔法少女連盟に属さない部外者、アウトサイドな魔法少女だから」

 何者にも縛られない伝説の戦士

 魔法少女 部外者達アウトサイダーズの伝説が始まりの鐘を鳴らした。

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