吸血鬼
「吸血鬼。それは今より数百年も前よりこの国に巣食らっている人外の一種にございます」
三度戦った吸血鬼。
一度は苦戦したが、二戦三戦目は決着がどれも一瞬。いずれも封印魔法で瞬殺した。その封印した二人の吸血鬼は今もなお僕のゴーレムの中……この吸血鬼をどうすればいいのか。
その処遇を決める為、僕は改めて王女様と再び顔を突き合わせていた。
「彼らは人を襲い、その血を啜り生きています。その残忍性は高く、数多くの者たちが吸血鬼の手によって殺されてきました……その最大の特徴は不死性にあります。彼らはどんな傷を受けても再生し、必ず立ち上がるのです」
「そうですね。現に、僕も殺すことは出来なかったです」
不死と言えるほどの再生魔法なんてどうすれば作れるのか。
今の僕の引き出しに答えとなるものはなかった。
こんな興味深い吸血鬼の存在をお師匠さんは話していなかったな……いや、でもお師匠様はそんな長くイースクラ王国にいたわけじゃなかったし、エンカウントしなかったのかな?
「殺す方法は何もないんですか?」
「いえ、しかとございます。この特殊な鉱石でもって作られた剣でもって相手の心臓を突き刺すのです」
王女様が僕の前に取り出してくれたのは一振りの剣。
刃身が青く光る実に美しい剣であった。
「へぇ……いいですね、これ」
それを受け取った僕はその刃身を眺める。
ずいぶんと特殊な魔力の流れを持っている……これは、何だろう?魔力の流れを散らしているのかな?
「弾かれた」
軽く僕の血を垂らし、
うん。凄い鉱石だ。魔力の流れを断ち、ありとあらゆる魔法を無効化するような性質を持っている……いや、何この鉱石!?すっごいんだけどっ!
「魔法陣の破壊……これで吸血鬼の不死性を担保している魔法陣を破壊し、死に至らしめるのか」
「はい。その通りです……が、よく見ただけでわかりますね?」
「これでも僕は魔法を研究しているものでして……旅に出ている理由のほとんども自分の知らない魔法を見る為なんですよ。あぁ、素晴らしいですね。こうして実際に物珍しいものを見れたのですから」
「ご満足いただけたのなら……」
「うぅむ……」
というかこれ、普通に僕的にも最悪な鉱石だな。
僕のゴーレム的にも弱点だ。
……やっぱりちゃんと隠していかなきゃ駄目かも。ゴーレムを動かす魔法陣の核となるところをこの鉱石で刺されるだけで
まぁ、普通は核を捉えられることなんてそうそうないと思うけど。それでも、ちゃんと隠すようにはしよう。
「あいつら吸血鬼の魔法陣の核は心臓にあったな。心臓をこの剣で貫き、殺すというわけですか」
「はい。そのような形になりますね」
「……なるほど」
それが殺し方か。
殺し方を知れた僕はゴーレムより封印していた吸血鬼をこの場に放出する。
「……ッ!?」
「うぁ、こ、こは……」
封印を解除され、
「えい」
だが、完全に覚醒するよりも前に僕の召喚したゴーレムが吸血鬼の心臓を件の剣で突き刺して貫いて見せる。
「うがぁっ!?……ぐぁ」
「おー、凄い」
反応は劇的だった。
心臓を貫かれた吸血鬼は膝をつき、その体をそのまま灰へと変えていく。
「こんな感じになるのか。凄いね」
想像以上だ。
想像以上の反応。想像以上の景色。こんなにも劇的に変わるものなのか。
「元々死んでいるのかな?」
再生の魔法がなくなっただけでこんな反応を見せるなんてこと、普通はありえないはずだ。
「うーん……どうなっているのだろう?」
どのような構成要素になっているのか……うーん。興味が尽きない。
捕らえている個体はもう一体いる。再生するということは無限に実験できるということ。相手が幾人もの人間を殺してきた悪人というのもちょうどいい。
僕の中にある善性と、自分の中のあくなき探求心とにうまく折り合いをつけられる。
「うへへへ」
始めて見る魔法。
それをこれから知ろうという時間。間違いなくその時間が最も幸せだよね。
魔法について考え、悪辣な笑みを浮かべているアレンの前で王女であるマリアが震えた声を漏らす。
「……上位の、吸血鬼の心臓をこうも簡単に?」
吸血鬼の不死性を突破する剣ならある。
だが、それだけ。ただそれだけで、まるで吸血鬼に勝ててこなかったのがイースクラ王国の歴史だ。
大前提、吸血鬼も己の弱点を知って心臓を守ろうとしている上、そもそも純粋に上位の吸血鬼は心臓そのものが大量の魔力に覆われ、硬いのだ。
並みの人間では貫けない。
「逃せる、わけもないですね」
それを容易く行って見せた目の前の少年を前にぼそりと、マリアは小さな声を呟くのだった。
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旅の書 1:1───幻の種族に生まれし子、魔法を極め世界に無双せり~世界を旅しながらゆるく魔法の道を極めたいのに、王女様が中々国から出してくれないんだけど~ リヒト @ninnjyasuraimu
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