第一村人
「うまく行ったわ」
お師匠様からの薫陶を受けた次の日。
僕はお師匠様の助言通りに真昼間から堂々と村から森林に入り、そのまま村の領域より抜け出すことに成功していた。
「ふんふんふーん」
村周りの森林を抜けてそのまま山に入った僕は鼻歌交じりに進んでいく。
山登りなど僕の力はでは不可能だが、ゴーレムがあればそれも別だ。僕を乗せて力強く進むゴーレムが僕の体を勝手に山越えさせてくれる。
「植物が変わったかな?」
山を越え、また別の森林。
ゴーレムより採取させた薬草を眺めながら僕は突き進んでいく。
お師匠様がいうにはここから人の住む街までかなり遠いらしい。山を越え、半日くらい森林を突き進まなきゃいけないんだと。
ただまぁ、お師匠様は人の身で歩いてその時間。
僕は車くらいの速度が出ているゴーレムに乗っているので、もっと早くは着くだろうが……それでもそこそこの時間はかかるだろう。
「お師匠様が心配するのも当然ですなぁ」
自分で育った果物をゴーレムの上で貪りながら僕は頷く。
お師匠様には僕のゴーレムがトンデモナイ速度で動くことは見せていない。
外に出る際の最悪の手段として、僕はこの馬鹿みたいに早いゴーレムですべてを置き去りにして逃げるというのを考えていたからだ。
この速さで動くゴーレムを知らないお師匠様が心配していたのも納得だ。
確かに僕が休憩なしでまる一日かかるような移動をするなんて自殺行為と思われても仕方ない。
「およ?」
なんてことを考えながら僕が進んでいると、一つの人影を見つける。
「第一村人発見」
僕はゴーレムの速度を落とし、その人影へと近づいていく。
「……人間か?」
その人影はすぐに近づいてきている僕へと気づき、視線を向けてくる。
「僕と赤い瞳だ」
こちらへと向けてくるその人影はイリスと同じ背丈くらいの女性だった。
赤眼族と同じ赤い瞳だが、髪の毛は黒で僕たちの種族とは少し違っていた。
「私は今、腹の虫どころが悪い。悪いが、死んでもらおう」
「おっと」
ここから友好的な会話を……なんてことを考えていた僕に向け、その人はいきなり地面を蹴ってこちらとの距離を詰めてくると共に僕の首を狙った手刀を向けてきた。
「むっ?」
ただし、その一撃は僕の乗っている雲のゴーレムによって防がれた。
「あっぶな。いきなり攻撃?文明も知らない野蛮人?会話しようよー」
「私はただ人を殺す為だけにいるのでな」
「何それ?」
第一村人がびっくりするくらいの野蛮人なんだけど、怖すぎ。
とはいえ、僕も負けるつもりないが。お師匠様から実力に関してのお墨付きはもらっている。ここは堂々と、強きに行こうじゃないか。
「何だ?」
僕の手にある指輪より銀色の液体が溢れだし、襲い掛かってきた女性へと向かっていく。
「流体のゴーレム。近距離戦を弱点に抱えている僕を支えるベストな道具さ」
一定の形をもたず、流体であるこのゴーレムは自由自在に動き回り、僕を守る盾となり、剣となる。
「よっと」
その流体のゴーレムに続き、僕は小さな球状のゴーレムを五つほど取り出す。
「……ッ!?」
水のように動く鉄のゴーレムを前に困惑し、どう戦えばいいかもわからずただ回避行動に移っていた女性をその球状のゴーレムが取り囲むとすぐに光線を放つ。
「わぁ、凄い」
光線だ。
見て避けれるはずもない。お師匠様やイリスは何も出来ずにただ光線を受けることしかできなかった。
だというのにその女性は光線が放たれる直前に何かを感じ取ったのか回避行動に移り、五体のゴーレムのうち、何と三体のゴーレムの光線を回避してみせた。
「……うわ。何それ?」
それだけでも驚きだというのに一応二発の光線を食らい、体に小さな穴を開けていた女性の体が一瞬で再生し、元の姿へと戻る。
魔法の気配は感じなかった。
訳がわからない。再生する種族がいるってのか?
「こんなところでかのような強者と出会うとはな」
「なんじゃそれっ!?」
僕がその再生術に驚いている間にいきなりその女性の体から多数の触手が突き出てきて、そのまま周りの流体のゴーレムを力づくで振り払う。
「うそっ!?」
「本気で殺しに行こう。それが私の生まれた理由故」
「訳がわかんないって!?」
触手をぶんぶん振りながら僕の方へと突っ込んでくる女性にドン引きしながら僕は更に多くのゴーレムを取り出す。
球状のゴーレムを五体から十五体に増やし、僕の前に立って戦闘できるゴーレムを二体取り出して女性へと差し向ける。
「これほど……っ!」
一斉に照射される十五の光線。
当然不可避。光線を食らって穴ぼこにされる女性だが、瞬く間に再生してしまう。
「化け物じゃんっ!」
光線を食らって穴を開けられながら、女性は僕が差し向けた二体のゴーレムと組みあい、互角に拳をまじ合わせている。
女性がぶんぶん振っている触手の数々の対処は何とか流体のゴーレムで抑え込めている。
「……光線は流石に無駄か?いやでも、再生だって無限じゃないでしょ」
状況は一旦千日手。
ここからどう相手を攻略していくか……僕が頭を回していた中で女性の振るう触手が地面に落ちていた小石を弾き、弾かれた小石が凄まじい速度で僕の元へと向かってくる。
「がふっ!?」
僕の身を守っている流体のゴーレムも、自分が乗っている雲のゴーレムも、すべて女性の触手を押し度止めるのに必死で、その素早く飛んでくる小石に対処できなかった。
「あぅぅぅ……」
「むっ?」
ただ小石にぶつかるだけで倒れた僕を前に女性が首をかしげ、足を止める。
その隙をついて僕が密かに地面へと忍ばせていた大きめのゴーレムが動き出し、女性の体をその大きな手で掴む。
「……死ぬぅ」
ただ小石を一発腹に食らっただけで死にかけになっている僕はそれでも見事女性を捕まえてくれたゴーレムを通じて封印魔法を発動させ、彼女を封印しようとする。
攻撃しても再生するのなら、一旦封印してしまおう。
「……不味いか」
そんな僕の考えだったが、その封印が完全に成功するよりも前に女性はすさまじい力で僕のゴーレムを振り払って脱出し、そのまま逃げだしていく。
後少しのところだった。
あぁ……クソ。僕がダウンしかけていなかったもっとうまく魔法を運用出来て、成功してはずなの。あの速度なら、追えばギリ追いつけ……いや、追わなくていいか。別に僕はあの女性と戦う必要なんてないし。
「……いや、つんよ」
逃げ出した女性が見えていなくなったところで、僕はいきなり発生した第一村人との戦闘に対する素直な感想を漏らすのだった。
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