逃避行

　逃避行だなんて、そんなどこか美しい青春の一ページみたいなもんじゃない。側から見りゃ、こんなのはただのホームレスみたいなもんだ。髭なんて伸び放題で、整えられてない髪が惨めったらしくボサボサで。

　だけども、それでも、これは「逃避行」。俺にとっては青春そのものだ。

　三十にもなって、逃避行。ただの現実逃避、冷ややかに嘲笑されるだろう。

　だけども、俺は後悔なんてしていない。

　すべてすべて投げ出して、身のまま、赴くまま、行く当てのない旅を続ける。

　のらりくらり、現実に腰掛けて、ゆったりゆったり死にゆこう。