バス停
中山り
バス停留所
家のあたたかい水を貯めて入る湯船という物に風呂場という四角形が囲っており、その横に象の蛇口とホースで繋がれた先には鉄のような色をした銀色、もしくは鉄以外の色柄で構成された穴が開きまくったものからは水が各々の穴からピョッと出てきた。そんな光景を表す私は馬鹿であるため一番重要な、全裸で湯船で倒れている私を書きそびれていた。この文は優れた文では無いため、関係のないその場で脳内のバグパイプが奏でた音楽を書いてしまうので文の繋がりである文脈の電線は絶対に途切れる。シャワーヘッドからでた水達は湯船にぶつかって跳ねる。もしその水達が湯船にぶつからず貫いたのなら、私は、笑う。そんな事を思いつつ、今私は風呂場で溺死している。風呂場。床にはタイルが一面に突っ伏していて、申し訳なくなる。そのタイルが膨らんで、看板の様なものの頭が見え隠れする。私はビックリしてどこかに隠れようとしたが、死んでいた。その看板は真上に平行移動してタイルがぼっこりと盛り上がった。その看板が意味していたものは、「バスのりば」であった。ばすのりば?これはバスに乗れる場、と捉えるのかバスマットに乗り換える際に移動する場合のことなのか。どうせバスに乗れる場なんだろう。私は死体なのでこの場から動けない。火葬を待っている状態だが、下手したら誰も私に気づか無いかもしれない。時の流れが酷く残酷であるという事実はもうわかっていた。ここはすっかりバス停になった。といっても私が倒れている湯船の横にバス停と書かれた看板がぶっ刺さっている状況である。大層な道ができた。車通りはとても少ない印象だった。女性がここのバス停にやって来た。必死に股間を隠そうとしたが、案の定私は死んでいた。公然わいせつ罪で死体が捕まる。そんな考え事をしているうちに私のすぐ横のバス停の看板の隣に立ちだした。気づいていないものなのかと思ったが私の全裸の存在感は傍から見たら異常であることなどいくら死体だとしても容易に想像できる。女性はやがて私のバスタブの縁に座った。ここまできたら私に気づいて欲しい。
40分くらいは時が過ぎたが、バスは一向に来る気配がない。この女性は1つ前のバスの到着時間に間に合わなかったのだろうと思った。女性はタバコを1本、くわえた。タバコの匂いは嫌いだったがもう死体歴40分の私からしてみれば、私が死体であるという事実にはとっくに慣れていた。銘柄については私は詳しく無かったので覚えていない。火を灯して吸い込んで吐いていた。タバコは映画ではかっこよく映るが、現実は悲惨なもので、タバコの匂いが生理的に受け付けない。私の指がふやけている。しずくが1滴バスタブに当たる音がした様な気がした。正解だった。次々としずくが地を目掛けてぶつかった。それは雨を意味した。女性は傘を持ってきて居なかった。天気予報を見ていなかったのだろうか。私は絶対に出かける日には天気予報を見る。女性は雨水を受け止め、吸収していくかのように雨を受け入れた。持っていたタバコはしずくを受け止め切れずに、灰の部分が折れた。やがて女性からすすり泣く声が聞こえてきた。私が死んでいる事に今更気づいたのかと感じたが、何かを思い詰めて泣いているといった泣き方だった。女性に何があったのか気になったが、聞く術がない。それと死体の私が知ったところでどうにもならなかった。バスが来た。そのバスは生きている内にみたバスの速さよりもより速く感じた。すすり泣く女性はバスに入っていった。バスのドアが閉まった。女性はバスに乗って何を思うのか。窓から眺める景色は綺麗だろうか。行き先はどこだろうか。何も分からない。私の指がふやけている。
バス停 中山り @otsukareyama
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