第6話:時の輪廻<トキ・ノ・リンネ>
ヴァージン・ロードには、明確なコアが存在しない。カイトとリナは、その事実に絶望しかけていた。しかし、カイトの脳裏に閃いたのは、クロノスに隠されたもう一つの能力だった。それは、これまで使ってきた「クロノ・ドライブ」とは全く異なる、システムの真の力。
「リナ、ヴァージン・ロードにはコアがないんじゃない。ありすぎるんだ!」
カイトは通信でリナに叫んだ。彼女は驚きながらも、その言葉の意味を理解しようとする。
「どういうことよ、カイト?」
「あいつは、無数のヴァージンのコアを融合させてできている。つまり、奴の身体、そのものがコアなんだ!」
カイトの仮説に、リナは息をのんだ。そして、カイトはクロノスのメインシステムに、あるコマンドを入力した。それは、教官からも、そして開発者からも、絶対に使うなと警告されていた禁断のコマンドだった。
「クロノス、システム・オーバーロード! 全エネルギーを、クロノ・リバースに回せ!」
クロノ・リバース。それは、時を加速させるのではなく、逆行させるシステム。カイトの機体から、それまでとは違う、深い青色の光が放たれた。リナの機体も、その光に包まれていく。
「カイト! これは……時間が戻ってる?」
リナが驚愕の声を上げる。クロノ・リバースは、短時間ながら、周囲の時間を巻き戻すことができたのだ。ヴァージン・ロードの傷ついた装甲が元に戻っていく。だが、カイトの目的はそこではない。
「ヴァージン・ロードは、何度も時間軸を遡って、自らを強化しているんだ。俺たちは、奴がヴァージン・ロードになる前、つまり、まだヴァージンたちが融合する前の状態に戻してやる!」
カイトは、リナと二人で、クロノ・リバースを最大まで発動させた。二人の機体のエネルギーは、瞬く間に吸い取られていく。機体の装甲が軋み、内部から警報が鳴り響く。だが、二人は止まらない。
空間が歪み、ヴァージン・ロードの巨大な姿が、まるで砂のように崩れ始めた。そして、その巨大な身体を構成していた無数のヴァージンたちが、元の姿に戻っていく。
「今だ! リナ!」
カイトが叫ぶ。二人は、目の前に現れた無数のヴァージンのコアを、一斉に攻撃した。カイトのクロノスは光の剣を、リナの機体は白銀のナイフを振るい、次々とコアを破壊していく。
そして、すべてのコアが破壊されたとき、ヴァージン・ロードは完全に消滅した。
戦いが終わり、朝日が昇る。ボロボロになったクロノスとリナの機体が、静かに大地に降り立った。
「……やったな、カイト」
リナは、安堵からか、涙を流しながら微笑んだ。カイトもまた、感無量の表情で空を見上げる。彼の復讐は、終わった。いや、復讐心は、仲間と未来を守るという、もっと大きな使命へと変わっていた。
その時、二人の目の前に、黒いコートを纏った一人の男が姿を現した。彼の背後には、クロノスのマークが刻まれていた。
「見事だ、カイト・アスカ。そして、リナ・イヅキ。私は、君たちの未来を試すために来た」
謎の男は、そう告げた。彼の言葉は、この戦いが、始まりに過ぎないことを示唆していた。クロノスとヴァージンに隠された真実。そして、人類の未来をかけた、新たな戦いが今、幕を開けようとしていた。
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